「塾ジイの日記」32 ―諦めという名の鎖を身をよじってほどいてゆく―
出口利光(でぐち りこう)と申します。40年間進学塾で教鞭をとり、5年ほど前に定年退職しました。今では自宅のアトリエで趣味の油絵を楽しむ傍ら、近所の小中学生に勉強を教えています。最近親御さんや子ども達から学習や受験に関する相談を受けることが増えました。この度、子どもやその親御さんに伝えてきた学習や受験のノウハウが本当に妥当かどうかを自らで立証すべく行政書士試験を受験することにしました。これまで自身が発信してきた他人に向けたアドバイスや指導に則った行動を取ることにより、当事者としての感じ方や課題をこの日記に綴っていこうと思います。
「予習」の必要性
1月26日(金)
昨夜も寒かった。毎年のことじゃが受験シーズンになると大雪や吹雪の状況になるな。入試の制度を考えても「9月新年度」にすべきじゃ。海外留学を志す学生にとっても好都合じゃ。但し日本の学生は英語力が低いので4月卒業後の半年間で英語(英会話)の学習時間を確保できるというメリットもあるんじゃが…
学習方略の前提【場所・時間】については昨日までに確認できた。いよいよ具体的な方法論なんだが…。もうひとつ押さえておきたいポイントがある。それは「予習VS復習」問題じゃ。現役時に生徒や親御さんから「予習と復習どちらに重点と置けばよいですか?」という質問や相談をよく受けた。その問いには「復習中心にしてください!」と即答できたのじゃが…。そもそも「予習は必要なのか?」という論点がある。これは一概に可否を判断できない。なぜなら学習する内容(科目)に依るからじゃ。
わしが管理職になりたての頃、同じ教場のベテラン講師が「テキストのP××~P××(次回の内容)で大事だと思うところに線を引いてくる」という宿題を出していた。わしはそれを見て「こいつアホか?!生徒が授業受ける前にそんなもんわかるはずないやろ!」と思った。が……後になってその指導は的確であったことに気づいた。なぜならば、その講師は社会科担当だったからだ。しかも上記の宿題は【地理分野】のテキストに関してだった。つまり日本地理は授業を受けなくてもある程度【常識=予備知識】として【知っている】分野だ。生徒にとって【大事なところに線を引く】ことは【知っていること=既知】を抽出する作業。言い換えると【知っていること(既知)と知らないこと(未知)を選別する】作業であると言える。担当者は生徒のテキストの状況(線が引かれた箇所)を見て【生徒の既知】を把握し、【未知】に絞った授業を展開するというシナリオだったのだ。
このように【予習】は“前提知識の有無”によって必要性が大きく変わるということだ。逆に言うと「前提知識がない」科目においては「予習は不要」じゃ。もっと言えば「意味がない(時間の無駄)」と言えるだろう。例えば「英語」の初学者への予習の必要性は生徒の状況(英語学習の経験値)によって予習の可否が分かれる。学習経験が皆無の生徒に未知の内容を予習させてもあまり大きな成果は期待できない。むしろその時間を暗記等の【復習=アウトプット】に充てた方がまっとうじゃ。この判断は【科目】【単元】によって異なる。先の社会科講師も「歴史分野」「政治分野」では上記の宿題を出していなかった(だからわしがその真意に気づけた)。指導者にとって生徒への課題提示は極めて重要だ。「とりあえず出す」というのは論外じゃ。課題の意図をしっかり認識し、生徒にも理解させる必要がある。
そのような経験を踏まえて、行政書士試験講座の学習は、わしにとって【法律の知識=未知、というか皆無】なので予習はせず復習中心におこなうことにしよう。
おう、そうじゃ!今夜は「きさらぎ」出勤日じゃ。良太の父親が来ると言っていたな。わしにとって【お酒の知識=既知、というか大好き】なので、今から【予(行演)習】として一杯やろうかな…(誰か突っ込んでくれ!)
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