「塾ジイの日記」32 ―諦めという名の鎖を身をよじってほどいてゆく―
こんにちは。出口利光(でぐち りこう)と申します。40年間進学塾で教鞭をとり、5年ほど前に定年退職しました。今では自宅のアトリエで趣味の油絵を楽しむ傍ら、近所の小中学生に勉強を教えています。最近親御さんや子ども達から学習や受験に関する相談を受けることが増えました。今日も大山良太くん(中3)が3回目の模試の成績表と答案用紙を持ってやって来ました。
前回のお話→「塾ジイの部屋」9 https://mbp-japan.com/kyoto/kyoshin/column/5122907/
集中アウトプットによる“超”脳トレ
「3回目の模試の結果が出たよ」
「どうじゃった?」
「これ成績表。今回もB判定だったよ…」
「そうか…。しかし偏差値は上がっているじゃないか!11月の成績をピークにすることには成功したな」
「うん、でも合格圏までにはまだかなり開きがあるよ」
「前にも言ったように合格圏に到達していなくても11月にベストレコードをマーク出来れば状況は悪くない」
→「塾ジイの部屋」7 https://mbp-japan.com/kyoto/kyoshin/column/5121048/
「そう考えても不安だよ」
「気持ちはわかる。だが、今こそ、やるべきことをやるべきときにやるんじゃ。模試の見直しは終わったのか?」
「一応やったよ」
「そうか、偉いな!答案はどんな感じじゃった?」
「読み間違いやケアレスミスが多かったよ。でも部分点が付いている問題が増えたかな…」
「それはとても良い傾向じゃ。得点力が身に付いている証拠じゃ」
「でも国語が不安なんだよ。読解問題が…解き方のアプローチはわかるんだけど、なんか集中出来ないんだよ」
「なるほど」
「そうだ!お母さんから聞いたよ。塾ジイが国語の勉強のやり方教えてくれるって」
「そうじゃったな」
「で、どうするの?」
「国語の問題集を枕元に置くんじゃ」
「はっ?睡眠学習?」
「それ昔流行ったな…いや寝ながらやるのではなく、朝起きた瞬間に解くんじゃ」
「朝?頭がぼーっとしてもっと出来ないよ~」
「いや、それが、意外と集中出来るんじゃ」
「ホント?」
「わしも朝に新聞を読む時何故か集中して読めることを応用して、起きたてに苦手科目の問題を解くことを生徒に勧めたら、かなりの割合の生徒の成績が短期間で上がったんじゃ」
「へぇー!なんで?」
「理由はわからん。だが国語に関しては試験が一時間目であることが多く、その観点からも朝練は意味があると思う」
「わかった、早速明日からやってみるよ。あと英語の得点力を更に上げる方法も聞いてくるようにお母さんに言われたんだけど…」
「それも国語のやり方に似ているんじゃが…厳しい条件で問題を解くんじゃ」
「厳しい条件?」
「制限時間を短く設定するんじゃ」
「マイナス10分とか?」
「いや、半分」
「はっはんぶん?ムチャだよ!」
「ムチャじゃ。でもやるんじゃ」
「何のために?」
「脳の“回転力”を上げるためじゃ」
「回転力?」
「知識量が同じでも脳の回転力を上げることによって得点力を伸ばすことが出来る。特に国語や英語の読解問題は脳に負荷をかけることによって処理能力のアップが期待出来る」
「でもそんな短い制限時間でやって点数がボロボロだと見直しが大変じゃないの?」
「見直しは不要じゃ」
「えっ?試験の見直しは超重要って塾ジイ言ってたのに…」
「それは模試での話じゃ。模擬試験を含むいわゆる問題演習はその目的を意識した取り組みが重要なんじゃ。この演習の目的は“脳のトレーニング”じゃ。だから【解く→採点する】だけでOKじゃ」
「そうなんだ…」
「このトレーニングで使用する問題は国語・英語とも過去問等志望校の出題傾向を知るためのものは不適切じゃ。市販の問題集等を活用するのが良かろう」
「わかったよ」
「ところで、三者懇談の日程は決まったのか?」
「塾は来週だよ。学校は再来週かな」
「そうか。それまでにお父さんに【きさらぎ】に来るよう伝えてくれ」
「あ、そうやってまたお酒を飲もうとしている…」
「半分当たっているが、お父さんに三者懇談に関して伝えたいことがある」
「ラジャー!」
*この記事はフィクションです。人物名はすべて架空のものです。
得点力が伸びない原因は①知識不足②脳力不足に大別出来ます。対策を検討する際このどちらかを見極める必要があります。特に陥りがちなのが、点数が低いからと言ってやたらと知識をインプットしようとする試みです。インプットした知識を得点に繋げるためには一定のアウトプットの作業が必要です。それを想定せずに暗記一辺倒の学習に偏ると成果が出にくいことも考えられます。問題なのは知識がある程度身に付いているのに点数が伸びない場合の対策です。これには“脳力”を鍛えることで成果が出る場合があります。少し荒療治的ですが、強制的に脳に負荷をかけ、その環境に適応させるのです。私がかつて指導した生徒も塾ジイが言うようなやり方で、偏差値が10ポイント近く上昇した成功事例があります。直前期の受験勉強は“究極の脳トレ”です。お子さまのヤル気に火をつける意味でも有効な施策なんですね。
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