「塾ジイのBAR」3
挑戦への土壌づくり(後編)
こんにちは。出口利光(でぐち りこう)と申します。40年間進学塾で教鞭をとり、5年ほど前に定年退職しました。最近行きつけの飲み屋さん【きさらぎ】の定休日に店を間借りして、ちょっとだけバーテンダーをしています。私の前職を誰から伝え聞いてか、仕事帰りのお客さんから子どもの学習相談を受けることが増えました。今日も【きさらぎ】の常連、某証券会社の部長である仲嶋さんがやって来ました。仲嶋さんからは以前娘の美由紀さん(中3)の学校の三者懇談について相談を受けました。私のアドバイス通り懇談時に学校の先生に志望校や塾通いを表明し、夏休みから塾で勉強しています。受験校を検討する時期にさしかかり、仲嶋さんも気が気でないようです。と言いながらもお酒がさらに進んでいます。
ここまでのお話
「塾ジイのBAR」1 https://mbp-japan.com/kyoto/kyoshin/column/5114499/
「塾ジイのBAR」2 https://mbp-japan.com/kyoto/kyoshin/column/5114987/
「塾ジイのBAR」3 https://mbp-japan.com/kyoto/kyoshin/column/5120214/
“落差”に着目する
「いやー、この“古酒久米仙”なかなか美味いな!」
「塾ジイ好みだね。泡盛だけどチョコレートと合いそうな…。あ、忘れてた!…『説明会だけではわからない併願校検討のポイント』の話は?」
「そうじゃったな。説明会で本人の意向・相性が確認出来たら、次に重要なのが“育成力”じゃ」
「育成力って入試のレベルのこと?」
「いや、ちがう。【入試のレベルが高い=育成力が高い】ではない。いわゆる偏差値が高い学校は、相対的な学力が高い受験生が集まるからそれなりの大学合格実績を出せる。これは学校の教務力や育成力とは別の話じゃ」
「なるほど…アドバンテージがある子どもが集まるからそれなりの結果になるってことか…」
「そうじゃ」
「それじゃ、どうやって学校の育成力を判断するの?」
「“落差”を見るんじゃ」
「落差?何の?」
「入口と出口の落差じゃ」
「どういう意味?」
「塾から高校のレベル一覧のような資料を貰っていないか?」
「あ、嫁が9月に塾の保護者会で貰って来たって言っていたよ」
「そのデータと学校の大学合格実績を比較するんじゃ」
「入試のレベルが高くなくても合格実績が高い学校は育成力があるってこと?」
「その通りじゃ。わしの教え子でそのような高校に入学し、中3時の成績では考えられないレベルの大学に合格しているケースがいくつもあるんじゃ」
「それって塾や予備校へ行ったからじゃないの?」
「その可能性もあるが、偏差値が高くない学校は学力向上へのノウハウを持っていることが多い。特に私立高校は公立高校のような先生の異動があまり無いからノウハウの構築・伝承が容易なんじゃ」
「そうなのか…高校ごとの大学合格実績はどうすればわかるの?」
「塾の進学資料に入っていることもあるし、各高校のホームページや説明会資料で確認することも出来る。あと“現役合格者数”と“一般入試合格者数”がわかれば最高じゃ。その数字こそが学校の“真の育成力”なんじゃ」
「やっぱりデータは重要だな…」
「データの提供を受けられるのは大手進学塾へ通う大きなメリットのひとつじゃ」
「なるほど…これも塾代の一部ということか」
「データを踏まえた進学指導は学習塾の重要なサービスじゃ」
「わかったよ。家族と話し合って検討するよ」
「それが良かろう。本人が納得する併願校が決まれば学校・塾の先生にその旨を伝えるんじゃ。そうやってコンセンサスを取ったうえで【家族・学校・塾】のチームを結成しバックアップするんじゃ。これから本人は精神的に“傾斜の時期”に突入する。そのしんどさの最大の要因は孤独感じゃ。過度な口出しをせず、静かに見守るだけでも強力なサポートになる」
「わかったよ。色々ありがとう。今夜はこのへんで帰るよ。チェックをお願い」
「実はこの古酒久米仙も“落差”の大きい酒じゃ」
「はっ?」
「これにソーダ水を入れてハイボールにするとな…全く別の酒になるんじゃ」
「知らんがな!」
*この記事はフィクションです。人物名等はすべて架空のものです。
志望校を検討するうえで様々な着眼点(教育理念・先生・学校行事・施設・学費等)がありますが、“育成能力”も重要な視点のひとつです。しかしこれを表面的な大学名・合格者数で判断するのは危険です。結果だけではなくプロセス(どのレベルをどこまで伸ばしたか)を確認することが重要です。それを知るうえで学習塾のデータは非常に有用です。仲嶋さんも言っているように塾の費用は授業以外のサービス料も含まれています。保護者会や保護者懇談、教育講演会等のイベントは「利用しないと損」であると言えるでしょう。
多くの学習塾は塾ジイが言う“高校レベル一覧”“高校別大学合格実績”等のデータは保有しています。データを活用し、“育成力”を推し量り、説明会で得た情報を基にお子様との相性等を総合的に勘案し、“魅力ある併願校”に巡り合うことが出来れば、今後訪れるであろう“傾斜心理”も乗り越えていけるのではないでしょうか。お子様の不安を少しでも和らげ、全力を出し切るための土壌を整えることが勝利への確かな歩みに繋がるのです。
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