生産者と消費者を食でつなぐ京都在住飲食店経営のプロ
中谷安志
Mybestpro Interview
生産者と消費者を食でつなぐ京都在住飲食店経営のプロ
中谷安志
#chapter1
「各店でコンセプトやメニューは異なりますが、どの店舗も、飲食店は生産者とお客さまをつなぐ存在でもあるということを意識して企画しています」
そう話すのは「あんじ」の代表取締役・中谷安志さん。京都市を拠点に4業態5店舗を運営しています。
「メインブランドは、鮮魚や地元のおばんざい、地酒をそろえた海鮮居酒屋『あんじ』です。大人数での宴会や仲間との飲み会でご利用いただいたり、会社帰りのビジネスパーソンが1人で立ち寄ったり、家族連れもいらっしゃいます」
また、旬の魚介や野菜、シカ・イノシシなどのジビエ、氷魚といった琵琶湖の味覚でもてなすダイニングバー「のくる」も展開。ミシュランガイドの一つ「ビブグルマン」に選ばれた鶏料理のシェフが監修する「ミセスリンダのフライドチキン」、錦市場の漬物をはじめ多彩な具材に自慢の出汁をかけて食す「京のお出汁めし かつを」といった専門店も手掛けています。
「生きのいい魚をご提供するため、京都市中央卸売市場に毎朝赴くほか、各地の漁場からの直送ルートを独自で開拓しています。現地に通って感じたのは、漁師さんや漁港の方々の情熱です。皆さん海を愛し、仕事に誇りを持ち、『自慢の魚を多くの人に届けたい』と思っている。我々飲食店がその思いを伝えるお手伝いをしたいと考えるようになりました」
東日本大震災後には、壊滅的な被害を受けながら事業を再開した岩手県の漁師から仕入れました。
「お客さまの写真と『美味しかったです』というお礼のメッセージを送ったところ、『励みになる』とのことで、一皿の料理がもたらす元気を実感しました」と笑顔を見せます。
#chapter2
中谷さんの少年時代の夢は「コックさん」。家族らと年に数回出掛けた外食に、胸を躍らせた体験が原点です。
「別の進路を考えた時期もありましたが、大学受験に挫折したことで、一度の人生、本当にやりたいことをやろうと、飲食業を目指すことにしました」
栄養士の資格が取れる大学に進み、フランス料理店でアルバイトを開始。就職活動では企業回りを重ね、新卒でイタリアンレストランのマネージャーに抜てきされます。
「自分の店を持つための経験を積みたいと3年で退職し、その後は大阪で飲食店の立ち上げ、卸売市場では魚の仕入れなどに携わりました」
しかし1995年に起こった阪神淡路大震災を機に、家族とともに地元・京都へ帰郷。生活のため、建設業や運輸業などに奮闘する日々が何年も続きました。「このままではいけない」と自らを奮い立たせ、本格的に包丁を握ったのは34歳。子どもの頃に志を立ててから26年目のことです。
「新鮮な魚を、もっとリーズナブルに味わえる店を作りたい」という思いを胸に、2002年、京都府庁前に「あんじ」1号店をオープン。以来20年余りの時が流れました。
「紆余曲折を経てやっとやりたいことを少しずつ形にできましたから、足を運んでくださるお客さま、一緒に店づくりをしてくれるスタッフら、当たり前のことに感謝する気持ちを忘れず、皆さんに必要とされる店であり続けると決めています。また、スタッフの個性や、それぞれが望む働き方に対応できる事業を創ることも使命としています」
#chapter3
時短営業を強いられるなど、飲食業界はコロナ禍で大打撃を受けました。中谷さんは周囲に「いつか“コロナのおかげで”と言えるよう今できることを考えよう」と声を掛け、「のくる」、「ミセスリンダのフライドチキン」、「京のお出汁めし かつを」と新店をオープン。
「スタッフの実家がベーカリーショップで、そこのパンでチキンバーガーを作ったり、商業施設の店舗で店長をしていたスタッフの『もっと京都らしいテナントがあればいいのに』という発案から京都タワーに出店したり。新しいことをやる時は“人ありき”。スタッフの活躍の場を創りたいという思いもありました」
新規事業の傍ら、京都の同業者とのネットワーク作りにも注力。飲食店は形態も規模も抱える事情もさまざまで、コロナ支援策は実情に合っていない部分もあると感じたからです。
「飲食業界の窓口をひとつにして行政と意見交換することで、未来の飲食業を目指す人の役に立てるのではと、生活衛生同業組合に相談し、京都府飲食業経営審議会を設立する機会に関わらせていただきました。飲食店と行政の活発な意見交換の機会につながればという思いで、行政との意見交換会などを定期的に開くつもりです」
業界全体を盛り上げるため尽力する中谷さん。「産地の方に託された食材を、おいしい一品に仕上げてお客さまにご堪能いただく。飲食業には素晴らしい出会いも喜びもたくさんあります。働きやすい環境を整え、次の世代にも楽しさを伝えて、働きたいと思ってもらえる業界にしていきたいですね」と語ります。
(取材年月:2023年7月)
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Profile
生産者と消費者を食でつなぐ京都在住飲食店経営のプロ
中谷安志プロ
飲食店オーナー
有限会社あんじ
「飲食店は生産者とお客さまをつなぐ」をテーマに京都市内で4業態5店舗を経営。京都府飲食業経営審議会の設立と運営にも携わり、地域の飲食店のネットワーク作り、業界の声を行政に届ける活動も行う。
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