「再建築不可物件」~不動産売買における注意点~
不動産売買では、「土地の上に何があるか」だけでなく、「土地の下に何が眠っているか」にも注意が必要です。
その代表的なものが「埋蔵文化財包蔵地(まいぞうぶんかざいほうぞうち)」です。
今回は、「埋蔵文化財包蔵地とは何か」「売買時に注意すべきポイント」「どんなリスクがあるのか」など、知っておきたい基本をわかりやすくご紹介します。
埋蔵文化財包蔵地とは
「埋蔵文化財包蔵地」とは、地下に遺跡や古墳、住居跡などの文化財が埋まっている、または埋まっている可能性がある土地のことを指します。
日本は歴史の深い国であるため、文化庁のホームページによると、全国には文化財が埋まっていることが知られている「周知の埋蔵文化財包蔵地」が令和5年時点で全国に約46万件以上も存在するとされており、都市部や住宅地でも該当するケースがあります。
それらは文化財保護法によって保護され、国や自治体の教育委員会が管理しています。
また、毎年約9,000件の発掘調査が行われているそうです。
埋蔵文化財包蔵地の調べ方
埋蔵文化財包蔵地を調べるには、物件が存する地域の市役所など自治体の教育委員会または文化財課(行政により名称は異なります)の窓口で照会するのが最も確実な方法です。
窓口で「遺跡台帳」や「遺跡地図」などを確認し、物件が埋蔵文化財包蔵地内に位置しているかどうか確認することができます。
それ以外にも、自治体が埋蔵文化財包蔵地の位置をホームページで公開している場合もあります。
埋蔵文化財包蔵地は都市計画図や登記簿には記載されていませんが、不動産の重要事項説明書には記載義務があるため、宅建業者は必ず調査を行う必要があります。
埋蔵文化財包蔵地にある物件のデメリット
埋蔵文化財包蔵地の土地は、歴史的には価値のある場所と言えますが、その一方で建築や売買の際にはいくつかのデメリットとなる点があります。
1. 手続きや調査に時間がかかり、工事着工が遅れる可能性がある
たとえば福岡市を例にすると、埋蔵文化財包蔵地で建築を行う際には、次のような手続きが必要です。
■手続きの流れ
- 工事着工の約60日前までに、市役所の埋蔵文化財課へ照会と届出を行い、工事計画図面を提出します。
- 図面をもとに、土地の掘削範囲と埋蔵文化財の想定範囲が審査されます。
- その結果、「慎重工事」「工事立会」「要試掘」のいずれかに分類されます。
- 「要試掘」となった場合は、試掘調査を行い、結果に応じて「慎重工事」「工事立会」「発掘調査」のいずれかの最終判断が出ます。
この手続きが終わるまで、工事の着工はできません。
場合によっては、調査や協議に数ヶ月から1年以上かかることもあります。
■審査結果のパターン
- 慎重工事 → 特別な制限はなく、慎重に作業すれば工事可能です。
- 工事立会 → 工事に市職員が立ち会う必要があります。工期の調整が必要となる場合があります。
- 要試掘 → 重機で敷地の一部を掘り下げ、遺跡の有無を確認します。建物や樹木、舗装などは事前に撤去が必要で、近隣への騒音説明や立会いも求められます。
- 発掘調査 → 実際に遺跡の記録保存などを行う大規模な調査です。土地の面積や遺構の種類によっては、数ヶ月~1年以上かかることもあり、費用負担が数百万円に達する可能性もあります。
2. 発掘調査の費用負担が必要になる場合がある
埋蔵文化財包蔵地内で建物を建てる場合、事前に発掘調査を行い、遺跡の記録を残す必要があります。
発掘調査の費用は、個人が自己居住用住宅を建てる場合などは、公費で補助されるケースもありますが、原則として建築行為を行う者(=建築主)が負担します。
つまり、個人でアパートなどの収益物件を建てる場合や、不動産会社などの事業者が住宅を建てる場合には、調査費用を自分で負担することになります。
発掘調査費用は自治体や土地の面積、遺跡の種類などによって異なりますが、数百万円にのぼることも珍しくありません。
3. 予定した建物が建てられない場合がある
長期間にわたる調査の結果、建築計画の変更を求められることもあります。
例えば、「地盤改良工事を禁止される」「基礎の位置を変更しなければならない」といったケースです。
このような場合、希望通りの建物が建てられない可能性もあります。
こうした買主側のリスクを踏まえ、
- 売買契約時に「発掘調査が必要となった場合は契約を解除できる」旨の特約を設ける
- 調査費用分を売買代金から減額する
などの対応を検討する必要があります。
過去に試掘調査や発掘調査を実施済みの場合
過去に試掘調査や発掘調査を実施している物件だと分かれば、現在建っている建物と同じ規模、同じ構造の建物であれば、新たに試掘調査や発掘調査を行わなくても済む可能性があります。
ただし現在建っている建物が古い場合、
- 自治体に新築時の資料が保管されていないケース
- 新たに建てる建物の構造によっては再調査が必要となるケース
- 自治体によっては建築の都度新たに照会が必要となるケース
などもありますので、注意が必要です。
まとめ
埋蔵文化財包蔵地は、一般の方では判断しづらい法的制限があるため、宅建業者による重要事項説明書での正確な記載が不可欠です。
弊社では、不動産業者様向けに「重要事項説明書の作成代行」サービスを提供しております。
埋蔵文化財包蔵地に関する調査・記載も丁寧に対応いたしますので、物件の安全な取引と、買主・売主双方の安心のために、ぜひお気軽にご相談ください。



