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創業220余年。しっかりした仕事で、長く親しまれるお墓を作る

真面目な仕事で価値あるお墓を作る登戸の老舗石材店店主

吉澤光宏

吉澤光宏 よしざわみつひろ
吉澤光宏 よしざわみつひろ

#chapter1

お客さまの想いをかなえるお墓をプロの視点で提案

川崎市登戸駅近くにある吉澤石材店は、江戸時代寛政年間より続く老舗です。8代目の吉澤光宏さんは、お客さまの希望をじっくり聞いたうえで、プロとしての提案をしながら、よりよいお墓ができるよう説明してくれます。 「お墓は長く残るものですから、10年、20年と時が経ったときのことを考えて建てる必要があります。流行や個性だけではなく、墓地との調和や文化の側面も考えながら、相談に応じています。たとえば息子を亡くした両親が、彼の趣味にちなんだ形のお墓を建てたいと相談に来たら、その形ではなくても、息子さんの想いを取り入れることができることをお話しします。お客さまの希望をそのまま取り入れるだけではなく、何十年か先のことも考え、施主さまが代わっても長く親しまれるような形を提案する責任があると思っているからです」

 「たとえば石と石を接着させるモルタルは、十分に練っておかないと、石を長期間留めておくことができないのですが、中には費用や日数を削るため、あまり練らずにバサバサしたままの状態で使う業者もいます。手間をかけてよく練ったり、接着剤をけちらずに使うと、どうしてもその分価格に反映されますが、それでもきちんと仕事をしたいし、きちんと仕事をしてほしいというお客さまの希望に応えていきたい。お墓は単なるモノではなく、先祖と子孫をつなぐ存在であり、文化を担う存在でもあるから、売れれば何でもいい、安ければそれでいいとは考えられないのです」

#chapter2

「いいお墓を建てた」という満足感を味わってほしい

「店の近くには、先代が建てたお墓も残っているのですが、丁寧に仕事をしているものだから、いざ解体する時、とても手間がかかるんです」 と吉澤さん。先祖の仕事ぶりを知れば知るほど、自分も同じように丁寧な仕事がしたい、と思いが募ります。その姿勢に共鳴してくださるお客さまを大切にする一方、お墓の意義や石の価値を、より多くの人に理解してもらえるよう、もっと情報を発信したいとも話します。「長く続いた伝統には、意味や理由があります。だから、昔ながらのお墓を見学したり、お墓の本質的な部分を勉強して、お客さまにもその意味をわかりやすく伝えたいのです」

お客さまの中には、吉澤さんと話し合いを重ねるうちに、お墓への興味がだんだんと膨らみ、「怖い」と思っていたお墓が好きになったり、名品と呼ばれるお墓を見学するため、遠くまで足を運ぶ人もいるそうです。「お墓作りの主役は、あくまで施主さまです。私たち石屋の仕事は、プロとして実務を担い、施主さまを支えること。納得できる形にするまでやり取りするのは、時間がかかるかもしれませんが、『これ“で”いい』ではなく、『これ“が”いい』という選択をしてほしい。頑張っていいお墓を建てたな、というお客さまの満足感を、大事にしたいのです」

正しい情報を提供するには、お墓の意義だけではなく、石材や加工の知識も欠かせません。吉澤さんは採石地に足を運び、どのように石が切り出され、どんな人が加工しているのか、自分の目で確かめているので、その言葉には説得力があります。

吉澤光宏 よしざわみつひろ

#chapter3

素材やデザイン、墓じまいの相談も納得するまで

石のプロとして、国産石材を大事にしたい気持ちもあります。「国産の石なら、50年、100年前のお墓を見れば経年変化がわかるし、長年の実績に裏打ちされた良さもあるので、お客さまに安心してお勧めできます」。店内には石材のサンプルも豊富に用意していますが、「サンプルで見るのと、お墓になった時の印象は、また違います。たとえば、小さなサンプルではあらが目立つように見えても、大きなお墓にすれば気にならなかったり」。石の個性や特徴を把握して、持ち味を生かしたお墓を提案する吉澤さん。好みの色や産地、予算を伝えると、それに適した石材やデザインを教えてくれます。

最近よく耳にする「墓じまい」に対しては、「もっと早く相談してくれれば、閉めなくてもよかったのに……と、残念に思うこともあります。どうしても避けられない場合もあるでしょうが、墓じまいの後、気持ちが弱くなってしまう方も中には見受けられます」と吉澤さん。「テレビで見たから、流行っているからという理由で判断せず、まずは問い合わせてほしい。私の店でお墓を購入したり、仕事を依頼しなくても構いません」と呼びかけます。

「お墓参りは、単なる行事ではありません。先祖の冥福を祈り、心の中で話しかけ、時には都合のいいお願いをしながら手を合わせているうちに、だんだん安らかな気持ちになってくる。時代とともに変わる部分はあるけれど、お墓を建てる時には、そんなことを思い出してもらえれば」。長年の伝統の裏にある、変わらない人の想い。その想いを形にして残していくのが仕事です。

(取材年月:2016年1月)

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吉澤光宏

真面目な仕事で価値あるお墓を作る登戸の老舗石材店店主

吉澤光宏プロ

石職人

有限会社吉澤石材店

川崎市登戸駅近くで約220年続く老舗石材店の8代目店主。お客さまの想いをじっくり聞いたうえで、プロとしての意見、そして伝統の良さを説明して、納得できるお墓を作る。ブログやフェイスブックでも情報を発信。

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