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食品ロスの削減を目指し、食を通じて人がつながるフードシェアリングサービスを展開

6次産業化で食品ロスを削減する循環型フードビジネスの専門家

長谷川哲雄

長谷川哲雄 はせがわてつお
長谷川哲雄 はせがわてつお

#chapter1

規格外品を生かすため、ゆめが丘ソラトスに食品加工所「たべるラボ」をオープン

 「手塩にかけて育てられた野菜や果物のうち種類にもよりますが、多いのもので約4割は規格外です。味はほぼ変わらないのに、形や色などが出荷の基準を満たさず、売り物にならないために捨てられていると地元の農家さんから聞いた時はショックでした」

 そう語るのは、「グロバース」代表の長谷川哲雄さん。食品ロス削減に向け、農家などの生産者・小売業、飲食店、消費者をマッチングするフードシェアリングサービスの企画・運用に尽力しています。

 横浜の農家の規格外野菜を生かすべく2022年12月に「YOKOHAMA Dry」というプロジェクトを開始。市内の農福・産学連携も図り、袋詰めなどは福祉事業所で行い、パッケージデザインは専門学校の学生が手掛けています。また、現在同プロジェクトは、干し野菜研究家の香予さんがプロデュースから製造まで担っています。

 さらに2026年2月には、横浜市泉区の相鉄いずみ野線・ゆめが丘駅に直結するショッピングモール「ゆめが丘ソラトス」1階に、食品加工所「たべるラボ」も開業予定。コンセプトは「つくる・つながる・つたえる」と地域の「食」の拠点となることを目指します。

 「近隣の農家さんから仕入れた野菜・果物をドライフーズやピューレにして販売したり、スムージーやスープにしてテイクアウトしたり。無駄なく活用することで循環型社会を実現したいと考えています」

 乾燥野菜の手作り教室や農家への農業体験といったイベント、モール内の飲食店とのコラボも企画しているとか。

 「商品ラベルに生産者の名前や顔写真を載せるなど、生産者・料理人・消費者が“食”を通じて絆を深め、フードロスという社会課題を解決する拠点を目指しています。小ロットの商品開発・製造も気軽にご相談ください」

#chapter2

農作物の付加価値を高める6次産業化プロデューサーとして農家に伴走

 長谷川さんは慶応義塾大学を卒業後、教育、保険、通信、IT企業など数々の業界で営業に従事。30年間の会社員生活を経て、独立を決意しました。

 「常に顧客に接してきた経験から、いずれの仕事も最終的には人との関わりだと学びました。相手を思いやる重要性を実感し、人々に身近な問題を扱いたいと考え、興味のあった“食”の道へ進みました」

 新技術だったスマートフォンや3Dプリンターの営業を担当して普及させた経験や、デジタルの力で既存の業務や仕組みを変革し、新たな価値を創出するDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進してきたことも、起業挑戦への意欲をかき立てました。

 挑むべきは「食品ロスの削減」。そう定めたものの解決の糸口が見いだせずにいたところ、たまたま野菜の路上販売を見かけて足をとめました。そこから人の繋がりが始まりました。

 「横浜市は都心に近いですが農業従事者が多く、その大半が家族や親族で営む小規模農家のため生産に精いっぱいでした。手が回らない部分を補うため、商品開発で作物の付加価値を高め、販路開拓により所得を向上させる6次産業化プロデューサーとして伴走することにしました」

 あるイチゴ農家では実を乾燥加工し、ラスクと一緒にかわいらしく包装した商品をリリース。イチゴ狩りに訪れた顧客のお土産として好評だったそう。

 「サービスエリアなどの販路も、人を通じて紹介してもらいました。人の輪が広がりソラトスへ出店するなど、ご縁をありがたく思います」

長谷川哲雄 はせがわてつお

#chapter3

横浜の学校や市庁舎で食品ロス削減を啓発。「食べること」から社会貢献を

 オリジナル商品「YOKOHAMA Dry」は、地元色を訴求し、SDGs(持続可能な開発目標)で掲げられた食料の損失・廃棄の削減につながる商品として、百貨店の横浜高島屋でお中元やお歳暮のギフトセットにも選定されました。

 「地方には数多くの農家さんがいらっしゃいます。新拠点の『たべるラボ』も、食をキーワードに社会課題の解決と地域活性化のモデルケースになるよう努めます」

 長谷川さんの取り組みが徐々に認知され、横浜市内の小中学校、高校で総合学習の講師として招かれ、食品ロスについて伝える機会も増えたと言います。

 「子どもたちから『アプリで農家と消費者をつなげては?』といった意見が出てきて刺激を受けることもしばしば。1年間の学習の総括となる発表会に招待していただくこともあり、啓発活動の励みになっています」

 10月の食品ロス削減月間では横浜市と連携し、市庁舎で開催された「食べるを考える1日」というイベントにも出展。市内で多くの野菜や果物が処分されている事実を広く周知するとともに、「食べること」から社会貢献に参加してほしいと発信しています。

 「ある農家さんから『どれも同じように大切に育てているから、うちでは“規格外”ではなく“個性派”と呼んでいるんですよ』と聞いて目からうろこが落ちる思いでした。農家さんの愛情が詰まった作物の魅力を引き出し、おいしく食せるよう、今後もヒト、コト、モノを結び、アイデアを紡いでいきたいですね」

(取材年月:2025年2月)

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専門家プロフィール

長谷川哲雄

6次産業化で食品ロスを削減する循環型フードビジネスの専門家

長谷川哲雄プロ

食の6次産業化プロデューサー

合同会社グロバース

規格外の野菜・果物に6次産業化で新たな価値を創出し、食品ロス削減や地域活性化など社会課題を解決。ソラトスの「たべるラボ」を拠点に、食を通じて人と資源をつなぐ循環型モデルを確立。

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