自動車部品のアフターマーケットとは?修理とカスタマイズを支える業界の仕組み
自社でつくっている部品や用品を、新車の組み立て用ではなく、すでに街を走っている車の修理やカスタマイズ向けに売り出したいと考えたとき、耳にするのが「アフターマーケット」という言葉ではないでしょうか。
しかし、実際にどのような会社やお店が携わり、部品がどんな道筋をたどって自動車オーナーの手元に届くのかとなると、業界の外からは意外と見えにくいものです。
実は、様々な方からこの言葉の意味を尋ねられることは今も少なくありません。そこで今回は、自動車部品のアフターマーケットがどのような業界なのかを、私が長く身を置いてきた現場の目線でお話ししたいと思います。
自動車オーナーとの接点は、主に修理工場や量販店
自動車部品のアフターマーケットとは、ひと言でいえば、自動車の修理やカスタマイズを行う業界のことです。新車として販売された後の車が故障したときや部品が消耗したときに直し、あるいはオーナーの好みに合わせて用品を取り付けるといった場面で動いているのが、この市場です。
自動車オーナーとの接点になるのは、街の一般の修理工場やカーディーラー、ガソリンスタンド、そしてオートバックスやイエローハットに代表される、自動車部品・用品の販売を担う量販店などです。車の調子が悪くなったときや、タイヤやバッテリーを交換したいときに足を運ぶお店を思い浮かべていただくと、イメージしやすいと思います。
一般的には車の修理といえばカーディーラーを相談先として思い浮かべる方が多いかもしれませんが、街の修理工場にも、融通が利き、費用を抑えやすいといったよさがあります。どのお店を選ぶかはオーナー次第なのですが、部品メーカーから見れば、こうしたお店の一つひとつが商品の出口になります。
市場の大きさについては、調査会社Astute Analyticaの自動車修理サービス市場レポート(2025年11月更新)によると、世界の自動車修理サービス市場の規模は2024年に8,908.2億米ドルと評価されています。業界の外からはなじみが薄いかもしれませんが、それなりに規模の大きな市場だといえます。
適合する部品探しの手間を、お店が引き受けています
一般の自動車オーナーが、自分の車を修理したい、あるいはカスタマイズしたいと思っても、その車に適合する部品や用品を自分で探し出すのは、とても時間のかかる作業です。前述のAstute Analyticaのレポートでも、内燃機関のパワートレインは約2,000個の部品で構成されるとされており、その中から自分の車に合うものを見つけるのは簡単ではありません。
そこで、先ほど挙げた修理工場や量販店などのお店が、オーナーに代わって適合する部品や用品を検索し、販売しています。オーナー自身では取り付けられない部品や用品であれば、お店がそのまま取り付けまで引き受けることもあります。
こうしたお店の後ろには、部品や用品をつくる部品メーカーや、部品の販売に関わる部品商が控えており、お店から部品メーカー、部品商までを総じてアフターマーケットと呼びます。私自身、部品メーカーの側で代理店営業やロジスティクスなどの業務に長く携わってきましたが、一つの部品がオーナーの車に取り付けられるまでには、実に多くの会社とやお店の手を経ていることを実感してきました。
「走る・曲がる・止まる」を妨げない部品であることが前提
アフターマーケットで部品や用品を扱ううえで、私が何より大切にしたいと考えているのは安全性です。自動車の修理には、どうしてもリスクがつきまといます。修理やカスタマイズをしたことで、車の基本である走る・曲がる・止まるという機能を妨げてしまうような部品や用品は、販売するべきではありません。
もう一つ忘れてはならないのが、日本の車検制度です。販売する部品や用品は、基本的に車検に通るものであるべきですし、いわゆる違法改造につながるような、法律に反する部品の販売や取り付けも行うべきではありません。
オーナーの代わりにお店が部品を選び、取り付けまで行う流れが一般的な業界だからこそ、部品を供給するメーカーの側にも、安心して扱ってもらえる商品であることが求められます。
特に、新たにアフターマーケットへ参入しようとする場合には、どうしても売れるかどうかに目が向きがちですが、販売した部品を取り付けた車は、その後も公道を走り続けます。オーナーの安全と法令を守れる部品であることは、販路を考える以前の前提条件だと私は考えています。
中古車業界とは異なるマーケット
アフターマーケットという言葉から、自動車そのもののアフターマーケットを思い浮かべる方もいらっしゃいます。しかし、自動車そのもののアフターマーケットは中古車の業界を指し、ここでお話ししている自動車部品のアフターマーケットとは意味が違います。
自動車部品のアフターマーケットに関わるのは、これまでお話ししてきたように、修理工場やカーディーラー、ガソリンスタンド、量販店といったオーナーとの接点となるお店と、その後ろにいる部品メーカーや部品商です。
中古車の業界が車そのものを売り買いする世界であるのに対し、自動車部品のアフターマーケットは、オーナーが乗り続けている車を直したり手を加えたりするための部品・用品と、その販売や取り付けを担う業界です。
同じアフターマーケットという言葉でも、どちらを指しているかによって関わる会社も商品の流れもまったく異なるので、販路について話し合う際には、最初に言葉の意味をそろえておくと話がかみ合いやすくなります。
部品・用品メーカーが販路を広げるときに考えたいこと
私は外資系の自動車部品メーカー3社で32年にわたり、営業や物流、情報管理などの実務を経験し、2020年に自動車部品のアフターマーケットに特化したコンサルタントとして独立しました。EVやハイブリッド車が普及し、電動化によって部品点数が大幅に減っていく中で、既存の商品に今後もニーズがあるのか、新たな市場を開拓できる余地はあるのかと、先行きに不安を感じている企業は多いように思います。
日本車に適合したものづくりが前提ではありますが、いいものを作れば売れるという時代ではありません。日本で売れている部品や競合他社の分析など、市場のニーズをつかむ調査から始め、どこにどう売るかという道筋を具体的に描いていく必要があります。
乗用車向けに販売してきた部品を、販売ルートの異なる大型トラック市場へ広げたり、ECサイトでの展開を検討したりと選択肢はさまざまですが、ECサイトひとつをとっても、サイトの運営や迅速な出荷に対応できる在庫の確保など、参入のハードルは決して低くありません。
アフターマーケットの仕組みを理解したうえで、自社の商品がどの接点を通ってオーナーに届くのかを描けると、次に打つ手が見えてきます。
まとめ
自動車部品のアフターマーケットは、修理工場や量販店などのお店を接点に、部品メーカーや部品商が関わりながら、自動車オーナーの修理やカスタマイズを支えている業界です。安全と法令を守れる部品であることを前提に、どこにどう売るかを考えることが、この業界で商品を広げていく第一歩だと私は考えています。
こんな方はご相談ください
・自社の部品や用品を、自動車部品のアフターマーケットで販売したいと考えている部品/用品メーカーの方
・アフターマーケットでの既存商品の拡販や、新たな販路の開拓を検討している方
・日本市場に進出したものの、日本での売り方に悩んでいる外資系の部品メーカーの方
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