特許出願の発明人は人でなければならない。法人は権利の譲渡を受ける
ビジネスモデル特許とは
ビジネスモデル特許という言葉を、聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。字面だけを見ると「ビジネスモデル」つまり「事業者が収益を上げるためのビジネスの手法・仕組み」で特許が取得できると思ってしまいます。
ですが実際には、ビジネスモデル自体では特許要件を満たさないため特許は取得できません。特許法に定められる「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」という要件の「自然法則を利用した」という部分に、人為的に考案されたものであるビジネスモデルでは該当しないのです。
いわゆるビジネスモデル特許とは、ビジネスモデルのうち「コンピューターシステム及びインターネットを使用して構築されたビジネス手法」に対して取得が許されている特許のことを指します。
IT技術という「自然法則を利用した」テクノロジーによる「技術的思想の創作」を特許として取得することで、そのシステム上に構築されたビジネスモデルも同時に保護されるという考え方で成り立っています。
なお特許庁などでは「ビジネス関連発明」と呼称されています。
ビジネスモデル特許のこれまでの経緯
日本では2000年頃に、IT技術の急速な普及に伴ってビジネスモデル特許ブームと言える時期がありました。2000年には前年比約5倍の20,000件程の出願がありました。近年の出願数は、おおよそ5,000〜6,000件程度で推移しています(参照:特許庁「ビジネス関連発明の最近の動向について 2013.11.29」/下記記載のデータも同資料より)。
そして、出願された特許のうち実際に権利取得となった割合を「特許査定率」と言います。ビジネスモデル特許における特許査定率を見てみると、2000年代前半〜中盤までは約8%と非常に低い数値でした(この時期の特許出願全体の平均特許査定率は約50%)。
つまりほとんどの出願が審査に落ちていました。この頃は言葉だけが独り歩きして、IT技術を伴わない単なるビジネスモデル単体での出願も多かったようですが、一般的に「ビジネスモデル特許は取得しづらい」というイメージも広く浸透してしまいました。
ビジネスモデル特許の取得率は上昇傾向
2000年代には低い特許査定率が続いていたビジネスモデル特許ですが、2012年には50%を突破するようになりました。特許出願全体の平均値(約67%)にも迫るような割合で、特許取得に至っている状況です。
これはIT技術をベースとしたビジネスモデルという要件の啓発が進んだこと、またIT技術に精通した特許事務所・弁理士も増加しており、適切な対応が行いやすくなったことが理由として考えられます。
ビジネスモデル特許はハードルが高いとのイメージを持っている方も、ぜひ一度ビジネスモデル特許の可能性を探ってみてはいかがでしょうか。