建物が小さいと、なぜ坪単価が上がる?
家を支える鉄筋コンクリート造の基礎、今回はそのお話しをしたいと思います。
家づくりを考えている皆様に、ぜひ知っていただきたい大事な内容になっています。
かなり長文になっていますが(^_^;)、ぜひ最後までお読みくださいm(__)m
住宅の基礎の種類には主に、布基礎(ぬのきそ)、べた基礎という種類があります。
布基礎というのは、主に建物の壁の下部分だけが基礎になっている構造をいいます。外壁の下や、室内の間仕切り壁の下部分にだけ鉄筋コンクリート造の基礎がある構造です。
べた基礎は、1階の床下部分全面が鉄筋コンクリート造の基礎で造られている構造です。
イメージ的には、このような感じです。
青い部分が基礎です。
もともと住宅の基礎と言えば、布基礎が当たり前だったのですが、現在は、べた基礎を採用する住宅会社が多くなりました。
そのきっかけになったのは、平成12年に、建築基準法において、新しい基礎仕様規定が適用されたからです。
どのような規定かというと、地盤の長期許容応力度によって、基礎仕様を分類するというものでした。
長期許容応力度って言われても、何?って思いますよね(^_^;)
そのことを説明すると、その説明だけで、今回のお話しが終わってしまうので・・・・・・、今回は説明しません(笑)
なので、簡単にイメージしやすくするために、
「地盤の強さ」のこと
と思ってください(^_^;)
その地盤の強さが
・30kN/㎡ 以上あれば、布基礎で造ることが可能で、
・20kN/㎡ 以上 30kN/㎡ 未満の場合は べた基礎で造る(布基礎は不可)
・20kN/㎡ 未満 は 杭を打ち込んで基礎を造る
という分類になりました。
つまり、地盤が強いと布基礎、少し地盤が弱い場合は、べた基礎で、さらにもっと地盤が弱い場合は、杭基礎にしてね!という感じです。
逆を言えば、地盤がそんなにしっかりしていなくても、べた基礎や杭基礎だったら可能!ということになりますね。
ですから、べた基礎や杭基礎というのは、頑丈でしっかりした基礎のイメージを持たれます。
以上のことを、頭に入れていただいて、さて、ここからが大事な大事な、とーーーーっても大事な話になっていきまーーーす。
住宅会社のチラシだったり、住宅展示場に行ったりすると、
「頑丈で地震に強いべた基礎工法を採用しています!」といった内容で紹介されていることがあります。
つまりこれは、先に述べた平成12年の規定を根拠としたものとも言えるんですよね。
「我が社の住宅は、べた基礎を採用しているので頑丈です!、だから地震にも強いし、地盤が多少弱くても心配いりません!」
なんて言われても納得しちゃいますし、
「我が社の住宅は全て、べた基礎が標準仕様!、布基礎にはしません。だから地震に強い安全な建物なんです!」
なんて言われたら、
「べた基礎が標準仕様なんて素晴らしい!」ってなりますよね!
地震国の日本ですから、なおさら、布基礎よりも剛性のある、べた基礎がいいと思うのは当然のことです。
ただですね・・・、実は・・・、ここに問題があるんですよ(汗)
では、何が問題か?ですが・・・・。
実は・・・、その問題を理解している人というのは、本当に少ないのです・・・。というか、多くの住宅会社の営業マンや現場監督が理解していないのです。
単純に、地震に強いのは「べた基礎」、弱いのは「布基礎」、みたいなイメージしか持っていません・・・。
「いまどき布基礎で造るのは時代遅れだよ。」
なんて言う住宅会社の人もいますから・・・。
そこで!、基礎を設計する時に何が重要か、お話ししたいと思います。家づくりを考えている皆さんもぜひ知っておいてください。
まず基礎を設計するためには、事前に必ず地盤調査をするのですが、
住宅の場合、SS試験(スウェーデン式サウンディング試験)という方法で地盤調査をすることがほとんどです。
鉄の長~い棒を地面に深くどんどん突き刺していって、地盤の強さ(地盤の支持力)を調べる方法で、N値という数値で結果が出ます。
N値=2だったり、N値=3だったり、N値=4だったり、という数値で結果が出て、数値が大きい方が地盤の支持力が強く、このN値の数値をみて、布基礎なのか、べた基礎なのか、杭基礎なのかを決めるのですが、
で、問題なのはそこなんです。
多くの住宅会社は、このN値の結果だけで地盤の良し悪しを決めて、それで地盤の検討を終わりにしています・・・。
それではダメなのです。ではなぜ、それで終わりにしてしまうのかというと、
残念ながら住宅会社の営業マンも、現場監督も、設計者ですら、地盤に対して、ちゃんとした知識を持っている人が少ないのです・・・。
地盤の良し悪しというのは、N値(地盤の支持力)の他に、地盤沈下についての検討が必要で、実はむしろ、沈下について調査のポイントを置く必要があります。
日本建築学会発行の「基礎設計の手引き」でも、同じようにはっきり書かれています。
※N値では、地盤沈下は分かりません。←これが重要なのです!
地盤が悪い場合は、布基礎じゃなく、べた基礎にすれば大丈夫!と安易に判断する人がとても多いのですが、実は、地盤沈下対策としてのべた基礎は、布基礎よりも重量がめちゃくちゃ重い分、沈下量が大きくなるのです!
つまり、軽い基礎である布基礎の方が有利で、べた基礎の方が危ないのです。
事実、木造住宅2階建て程度の建物は、軽い建築物なので、地盤の支持力破壊を起こすことはほとんどなく、沈下について注意を払うことが必要なのです。
では、どうやって、沈下の検討をするかというと、
それは、土の種類についてしっかり調べることです。
土には、ローム、砂質土、粘性土、腐植土・・・・等々さまざま存在し、実はN値より、土質を調べるほうが、よほど信頼性が高いのです。
例えば、砂質土でN値=3と、腐植土でN=3という地盤がありました。N値は一緒なので、同じ地盤の強さと思いますが、土質を考慮すると、腐植土は砂質土のおおよそ8分の1の地盤の強さしかないのです。
ちょっと専門的な説明になりますが、土の名称や状態が確認できれば、圧密降伏応力、粘着力、内部摩擦角を推測することが可能になって、地盤沈下の評価ができるようになり、実は重いべた基礎だと危険!なんてこともあります。
なので、是非くれぐれも皆さん、べた基礎は万能ではなく、沈下には不利ということを知っておいてください。
ということで、長々書きましたが(^_^;)、結論は、
結論!
・べた基礎は地震に強く、布基礎は地震に弱いという考えはNG!
・べた基礎を標準仕様(布基礎は造らない)としている住宅会社は、べた基礎の重さ(沈下)の検討をしていない!
・地盤調査結果の報告を受けた際に、N値の数値だけで地盤の良し悪しを決めているような場合は要注意!、土質についての説明もしっかり受けましょう!
・土質と基礎との関係について、あやふやな説明しかできないような住宅会社は信用できない会社と思いましょう。家づくりで最も大事な基礎について、しっかり説明できないようでは、基礎以外の部分の施工についても信用できませんから・・・。
以上、私の結論でした(^^)
あっ!
それと、コンクリート工事について補足です!
コンクリートを施工後、コンクリート中の水分が抜けるまでには、すごく長~い期間がかかります。しかも、放出される水分量がハンパないです!
基礎工事が完了し、すぐに、一階の床面に合板を施工している現場をよく見かけますが、
床下がものすごい湿度になって、合板の裏側が濡れ、最終的にはカビが発生・・・、みたいなことになることがありますので、その対策をしているのか?を、ぜひ家を建てる皆さんは、住宅会社に確認をしてくださいね。全く対策をしていない住宅会社もいますので・・・。
以上、たいへん長くなりましたが、今回はこの辺で~(^^)