歯磨きは1日2回!そして、うがいは1度だけ
心臓手術が決まり、主治医から「念のため歯医者さんで診てもらってください」と言われることがあります。
心臓の手術と歯科治療に、一体どんな関係があるのでしょうか?今回は、その理由と、手術前に歯科医院でできることについてご説明します。
なぜ心臓手術前に歯科治療が必要なの?
最大の目的は「感染性心内膜炎」という病気を予防するためです。
感染性心内膜炎とは、心臓の弁や、人工弁・人工血管に細菌の塊(疣贅)が付着してしまい、全身に菌が運ばれてしまう病気です。放置すると脳の血管が詰まる「脳塞栓」を引き起こしたり、症状が悪化して「心不全」を招くこともあります。
この病気を引き起こす原因の一つに、むし歯や歯周病の原因菌である「レンサ球菌」などの口腔内の細菌が挙げられます。
口の中にむし歯や歯周病があると、細菌が血管内に入り込み、心臓に到達してしまうリスクがあるため、心臓手術の前にこれらの病気を治療しておくことが推奨されているのです。
特に治療が推奨される口腔内の状態
以下のようなお口の状態がある場合は、心臓手術後に歯科治療を行うと感染性心内膜炎のリスクが高まる可能性があるため、手術前に可能な限り治療を終えておくことが望ましいとされています。
- 歯の根の中に膿が溜まっている
- 管理が行き届いていない親知らずがある
- むし歯がある
- 歯周病がある
手術後ではダメなの?
やむを得ず心臓手術後に歯科治療を行う場合は、感染予防のために「抗菌薬の予防投与」が行われます。
ただし、下記のような治療であれば予防投与は不要とされています。手術後であっても、いつも通り安心して治療を受けることができます。
- 感染していない組織への麻酔注射
- レントゲン撮影
- 矯正器具の調整や乳歯の脱落
- 歯磨きやフロス、外傷などによる軽微な出血
日頃の口腔ケアが命を守る
心臓手術後に原因不明の発熱や悪寒、倦怠感などがある場合は、感染性心内膜炎が疑われることがあります。歯科に関連して心内膜炎を発症するケースは少なくないと報告されており、心内膜炎は死亡率が高い病気とされています。
「日頃からの口腔ケアが重要」と言われますが、感染性心内膜炎を予防するという観点からも、お口の衛生状態を放置しないことが非常に大切です。
歯磨きで歯ぐきから血が出たり、食事中に歯に違和感を感じたりするような、ささいな状態でも菌血症(血液中に細菌が入ること)が起こると報告されています。
ご自身の、そして大切な方の健康を守るためにも、日々の丁寧な歯磨きと、歯科医院での定期的なチェックを心がけましょう。



