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大学を卒業してすぐの頃、私はどうしても海外にいきたくてロンドンに向かいました。英語を学びなおしていましたが、決して得意ではなく現地の語学学校に入りまして、そこで約1年英語学習をしました。当時の私のレベルは英語を聞いても理解できないし、ましてや話せない状態ですから大変でした。とりわけ、一番つらいのが語学学校での授業が終わった後です。
通った学校にもよりますが、私がお世話になった語学学校は午後3時にその日の授業が終わることが多く、早い日ですとお昼にはフリータイムになってしまいます。校内で何人か友人ができましたが、彼らと毎日遊ぶわけにもいかず、ましてや英語も喋れないので座学による勉強を続けたいのですがそのスペースを探すのに苦労していました。日によって、語学学校側で放課後レジャーを企画してくれたりもしていましたが、ほとんどの場合は自分でその日の予定を組まなければなりません。無謀にも、私はIELTSの受験対策も同時に行っていたので日常会話だけでなく、座って試験勉強する静かな環境が欲しかったのです。通っていた語学学校は16時に施錠されてしまうので長居できず、公共図書館やマクドナルド、時にはパブにも行って学習のための机と椅子を探していました。
勉強スペースを探すことが毎日のこととなり、英語学習よりもその活動の方が自分には苦行でした。私が渡英した年のロンドンは珍しく猛暑で、夏の暑さの中ふらふらになりながらその日座っていられる居場所を求めてさまよい歩きました。やがて秋になり、冬がくるとその活動は一層険しさを増しました。夏にはできたような大学の構内の日陰や公園のベンチという手段が使えないので、やむなくホームステイをしていた家に戻らざる得ませんでした。「だったら初めからホームステイ先の部屋にいればいいじゃないか」と思われるかもしれませんが、私のホストマザーのお考えで「外で英語を学びなさい!」と文字通り尻を叩かれるのでとてもじゃないがぬくぬくと引きこもることができなかったのです。しかし、そのおかげで自分ひとりの意思では行かない場所や出会うことがなかった人に出会えました。一人はロンドンで写真を学んでいた大学院生で、その方の卒業展覧会を見に行ったり、引退した老歯科医の家に遊びに行ったこともありました。ロンドンの老舗の剣道道場に飛び入りで参加し、稽古をしたのも「外出しなさい」と背中を押してくれたホストマザーがいたからでしょう。ある冬の日の夕方、いつものように図書館で勉強した後バスでホームステイ先へ帰宅するときうっかり寝過ごしてしまい、ロンドン郊外のバス停留所で運転手さんに起こされ、見知らぬ地区から夜通し歩いて家に帰り着いたのも、今思うとよくできたなと自分でも驚いています。すでに携帯の電源は落ちていて、バス停にあった地図を頼りに4時間ほど歩いたのでした。
最近、当院に相次いで外国の方がお見えになりました。1人は中国の方で、もう1人は東南アジア圏の方のようでした。どちらの方も日本語はおろか、英語も話せないらしくスマホの翻訳アプリとアイコンタクトで対応しましたが、現地の言葉を話せない苦労というのは並大抵ではないはずです。私の英語はすっかりさび付いてしまいましたが、せめて英語くらいは何とかなるようにせっかくロンドンに居たこともあるわけですから折を見て勉強しなおししたいと感じています。