応急手当普及員の更新講習体験記(労働衛生コンサルタント監修)

松井正義

松井正義

テーマ:イベントレポート



私は応急手当普及員という資格を保有しています。今回、資格取得から2回目の更新となる再講習対応を2月4日に川西市消防本部で実施してきましたので、その時のことを簡単にレポートしたいと思います。


1.応急手当普及員とは?




応急手当普及員とは、「主として事業所又は防災組織等において当該事業所の従業員又は防災組織等の構成員に対して行う普通救命講習の指導に従事するもの」(応急手当の普及啓発活動の推進に関する実施要綱、日消防救第41号)と規定されています。

所定の講習受講などの要件を満たすことで応急手当普及員として認定されますが、資格認定日から 3 年で失効します。そのため、失効前に定められた再講習を受講すればさらに3年間有効となり、以降も同様となります。

私は、前職で従業員が酸素欠乏、化学物質ばく露などの業務上災害が発生した時の万が一に備え、2015年に応急手当普及員資格を取得し、その後、1回更新をしました。2023年7月に労働衛生コンサルタントとして独立してからも、上記のような業務上災害の万が一に備えることの重要性を関係事業場の方や、技能講習の講師として受講生にお伝えする機会があり、応急手当普及員資格を継続する必要があるという立場にいます。今回、2回目の有効期限を迎えることになったため更新のための再講習を受けることにしました。

2.思いがけない出来事が!


なお、再講習にあたってうっかりしていたことがありました。それは、応急手当普及員を認定するのは所管している市町村等の消防長であることです。私は前職で大阪市にある民間企業に勤務していたので大阪市消防局での資格取得、更新をしてきましたが、2023年7月に独立したため本資格の更新にあたっては住所地の兵庫県川西市消防長の認定を受ける必要があったのです!

そこで、急ぎ、問い合わせをしたところ、有効期限内に講習を受講できることになりました。本当に良かったです!

しかも、受付の際、思いがけない申し出がありました。それは川西市民の方を対象とした市民救命士講習Ⅰ(3時間講習:主に成人対象の実技指導)において受講あるいは指導をすることで受講要件を満たすとのことでしたが、「応急手当普及員なので指導ができますよ。指導してみませんか?」とのこと。間髪置かず「お願いしますっ!!」と二つ返事でお願いしました。

指導と言っても、川西市消防本部の方がメインとなってご指導されるのをサポートすることが主な役目になるとのことでした。川西市に在住して20年、子供たちが育ったこの川西市にいつか恩返ししたいと思っていたので、ちょうど良い機会だなと思いました。

3.市民救命士講習Ⅰでの指導




講習当日、主担当の川西市消防本部のOさん、私と同じ立場でサポートにあたる同消防団のCさんと共に事前の打ち合わせを行いました。12名の市民の方が受講されるとのことで、3名ずつの班を4つ作り、私はその一つの班を担当させていただくことになりました。

講習の中身は、一次救命処置の手順をいくつかのパートに分けて一通りこなし、最後に確認テストを行うというものでした。心臓や呼吸が止まってしまった人を助けるために心肺蘇生を行ったり、AEDを使ったりする緊急の措置を、専用の人形を使って行うというものです。

主担当のOさんがパートごとにVTRをお見せした後に模範実技を示してから、各班に分かれて実習という流れでした。処置の流れや手技は決められているのですが、呼吸の確認のためには身体のどこを見たら良いのか、効率的に胸骨圧迫するには腕の角度をどのようにすれば良いのかなど細かい点は実際に手技を行いながら体感していただかないと分かり難いため、それらに力点を置いてご指導させていただきました。

特に、救命救急で大事なことは胸骨圧迫(止まった心臓の代わりに全身に血液を送るための手技)を「強く」「速く」「絶え間なく」実施することです。



実際に体験いただくと、かなりの体力を要する大変な手技だということを実感いただけます。一方で、この手技を心臓が止まってから一早く開始し、救急隊が到着するまでの約8分間継続する大切さを実感いただきました。

講習の最後に一連の手技の確認テストがありました。一連の流れを一人でこなしながら、AEDを持ってきてからの流れでは担当させていただいた班の3名の方が見事な連携プレーを見せてくれました。そして、「胸骨圧迫は大変だったけど、この手技が人の命を救うことに貢献することが良く分かった!!」と、目をキラキラと輝かせながら言っていただけた時には、指導させていただいて本当に良かったなと思いました。

4.事後の感想



こうして川西市民の方を対象とした市民救命士講習Ⅰが終了しました。参加した感想としては、一般市民の方にご指導させていただく機会が今回初めてだったため、とても新鮮な体験をさせていただけて良かったことです。

私はこれまで、前職で放射線業務従事前教育(RI規制法に定める法定講習)の講師や、独立後は酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習(労働安全衛生法令に定める法定講習)などの講師などを務めてきました。これらの受講者は企業等での実務者を対象にしています。対して、今回、初めて一般市民の方を対象にご指導をさせていただいたのです。

今回受講された方から「胸骨圧迫、力が要るね~」とか、「胸を押さえる手首が痛くなりますよね」など、リアルな感想をお聞きすることができました。これは、受講生が実務者の場合にはなかなか聞かれない反応なのです!

そして、受講生の皆様が、手技の大変さに苦戦しつつも、救急蘇生の重要性を理解される過程でのダイナミックな変化を、顔つきの変化や身体から出る雰囲気、そして、「これが大事なことなんや、一生懸命!」という講習中の言葉からダイレクトに感じることができました。指導させてもらいつつも、私の方が良い経験をさせていただいたな、本当にありがたいなと感じました。そして、その機会を与えていただいた川西市消防本部の関係者の皆様に感謝、感謝です!!

また、主担当の川西市消防本部Oさんの市民の方に対するご指導方法がとても参考になりました。語りかけるような優しい口調と共に、受講に来られた方に如何に理解いただくかに力点を置きつつも、詰め込み過ぎずに段階的に理解を促していく進め方は、私の日頃の講師業にも参考になることが多かったです。そして、私と同じ立場でサポートにあたる同消防団のCさんにも、人工呼吸の細かな手技や実際の現場での大変さなどいろいろとお話をお伺いすることができてとても勉強になりました。

5.最後に




今回、応急手当普及員の再講習を川西市民の方を対象とした市民救命士講習Ⅰの指導という形で実施したことをレポートさせていただきました。地域に貢献したいと思っていたところだったので、とても良い経験をさせていただきました。

個人的には、市民の方を対象にご指導されていただくという初体験をさせていただけたこと、リアルなご感想を聞けたこと、そして、救急救命の意義をしっかりとご理解いただけたことが感慨深かったです。応急手当普及員の次回の有効期限となる3年後にも同じように貢献させていただけたらうれしいです。ありがとうございました。

※応急手当について知りたい方は以下をクリック
  消防庁ホームページ:https://www.fdma.go.jp/relocation/kyukyukikaku/oukyu/05kobetsu/index.html
※心肺蘇生の一連の流れを動画で確認されたい方は以下をクリック(約3分半の動画です。是非ご覧下さい!!)
  消防庁ホームページ:https://www.fdma.go.jp/relocation/kyukyukikaku/oukyu/05kobetsu/01/05_01_26.html
※コラム中の写真等の画像はイメージです。

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松井正義
専門家

松井正義(労働衛生コンサルタント)

株式会社トトロエコンサルティング

労働安全衛生を専門に、現場の実情に即した環境改善をサポート。労働災害対策だけでなく、企業のイメージアップにも貢献します。大手化学メーカーでの有害性評価の研究などの経験から化学物質管理にも精通。

松井正義プロは神戸新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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