産業医として企業を支えるプロ
辻上周治
Mybestpro Interview
産業医として企業を支えるプロ
辻上周治
#chapter1
従業員のメンタル・ヘルスケアに不安を感じている人事担当者も多いのでは? 新神戸にある「つじがみクリニック」の院長・辻上周治さんと協力体制の医師たちは、産業医として数多くの企業をサポートしています。
「労働安全衛生法のもと、50人以上が所属する会社では産業医の選任が義務付けられています。組織で働くみなさんの健康を管理するほか、就労規則の問題点を指摘したり、労働環境の改善点をアドバイスいたします」と辻上さん。
「管理職の方々は日々の業務に追われ『労務がなかなか行き届かない』といった声がよく聞かれます。しかし、がんばっていた人が『ある日、事故に遭った。あるいは病気になった。そしてそのまま辞めてしまった』なんてことになったら? 大切な人材を失うのはとても辛いことです。ケガをしないように施設の安全管理に努めたり、身体的な病気を予防するために健康診断を行ったり対策を講じておられることでしょう。同様にうつ病といった精神的な病も、日頃から従業員の言動に注意を払うことで早期発見、早期対応をして重症化を防ぐことができます。会社で働くすべての人が意識を持ちましょう」
過剰労働やパワーハラスメント、セクシュアルハラスメントによる健康被害に加え、裁判員制度の施行以降は、裁判員に選ばれたことが不調の原因になることも。
「事件によって、体力的にも心理的にも大きな負荷がかかってしまいます。ある日、社内の誰かが裁判員になったとします。公務を終えて仕事に戻ってから『様子がおかしい』ということがあるかもしれません。今後は、こういった問題もふまえたバックアップ態勢が求められるでしょう」
本人、上司ともに少しでも違和感があれば迅速に産業医へ連絡を。個々の病状を判断し、適切な専門医の受診へと導いてくれます。
#chapter2
管理職の男性からこんな相談があったそうです。「『ある部下の残業時間が急に増えている。平日は深夜まで、さらに休日出勤もしている。適切な仕事量を任せているつもりであり、以前より効率が下がっているようで心配だ』とのことでした」
辻上さんはこれを受けて、本人だけでなく全社員に面談を実施しました。「全員を対象にすることで、当人に不安を抱かせることなくカウンセリングできるからです。デリケートな問題なので、配慮は欠かせません。実際に会って話を聞くと、公私ともに悩みがありうつの症状が見られました。病院を紹介して診断の結果、しばらく休職することになりました。職場に戻る際には上司や人事にも掛け合って、定時であがれるように取り計らってもらいました」
このケースでは上司がきちんと部下の勤務状態を把握し、いち早く異変に気づいたことが早期復帰へとつながったようです。「病気になってしまった人には焦りがあります。でも、しっかりと治療に専念できる環境を用意してあげること。それが企業の果たすべき責任だと考えています」
辻上さんは、企業の経営方針説明会などに参加。事業拡大や方向転換など、運営の方向性を理解した上で、復帰者などが無理なく仕事に励めるように配置先や作業・業務内容についても相談に乗ってくれます。
「通院治療中の方であれば、自立支援医療制度の手続きをふめば、治療にかかる費用を減額することができる方もあります。また障害者手帳を申請すれば、雇用において法的に守られる部分が生まれます。こういった制度をきちんと理解して活用しましょう」と辻上さん。
#chapter3
「現場を知ること」と「現場で働く人たちと話をすること」が大好きだと話す辻上さんの指針は、「支える医療」。産業医のほかに、通院が困難な高齢者や精神障害を持つ人、身体的に障害のある人、先天性疾患により自宅での治療を必要としている子どもたちへの在宅医療にも携わっています。
「自宅で人工呼吸器や持続点滴といった医療機器を使用されている場合、災害などにより停電したときの電力の確保は? 一人暮らしのご老人で、外出もままならない方のデイリーケアは? 寝たきりの患者さんの往診は? 患者さんにはさまざまな要望があり対処すべき課題があります。でも、それらに応える情報がとても少ない。病気を抱えて懸命に闘うご本人とそのご家族のために、私は私にできることをしていきたい。それが医師としての志です。みんなで支え合う社会を目指していきたいですね」と未来をしっかり見すえる辻上さん。障害者の雇用支援にも関心を寄せているそうです。
「縁あって、この神戸の地で活動させていただいています。街のために貢献していきたい」と言葉を締めくくりました。
(2012年8月 現在)
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Profile
産業医として企業を支えるプロ
辻上周治プロ
医師
つじがみクリニック
主治医と産業医とは同じ医師ですが、立場が違います。産業医は本人だけでなく会社からの情報(上司や職場の周囲からの情報)も入手して意見を出します。産業医は中立的立場での見解・意見を提示できるのが強みです。
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