音響・録音制作のプロ
加登匡敏
Mybestpro Interview
音響・録音制作のプロ
加登匡敏
#chapter1
スピーカー、マイクなどの音響機器をアーティストの音楽やその場(空間)に合わせて緻密に調整し、独自の音響空間を演出する。そんな舞台やライブ会場など電気音響を必要とするイベント会場で活躍する音響制作者は、高い技術力だけでなく、音楽クリエイターとしてのセンスが要求される仕事です。
神戸市中央区「ムーサ・エンタープライズ」(MUSA Enterprise)は、音響制作者の加登匡敏さんが率いる音響技術・音楽制作会社。「確かな音で音楽を」をポリシーに、ライブ、コンサート、フェスティバルから演劇、展覧会、講演会までジャンルを問わず様々なイベント制作を手掛けています。「イベント内容に即した音響機材・録音機材の選定、技術スタッフの派遣、会場設営など、イベントの予算とニーズに合わせてプランニングします」
また、「コンクールの審査用に特別高音質な音源を作りたい」「演奏会の記念CDを作りたい」といったレコーディングのニーズにも柔軟に対応。録音、編集、マスタリングに至るまで全て独自チューニングされた専用機を使用し、PCのみで作られた音源とは明確に音質で勝ります。
そのほか音響プランニングから機器販売・施工、音響・照明機器の修理・メンテナンス、スピーカーユニットの補修・張り替え、音響測定、テープやレコードなどのアナログメディアの修復・復元、デジタルメディアへのアーカイブ化も行っています。
#chapter2
加登さんの強みは、アーティストのアイデアを実現、後押しする技術力と機動力。アーティストが奏でる音楽をより良くするために、場合によっては自ら積極的に音楽づくりに参加し、技術面で様々な提案をします。
展覧会やイベントの演出用にオリジナルの音響機器を製作することも多く、たとえ1度限りのコンサートであっても労力は惜しみません。例えば、「1人の奏者が2台のピアノを演奏する作品の演奏会をしたい」という要望には、自動演奏ピアノ制御装置を製作。「会場を森の中のような音響空間にしたい」という要望には、独自に設計・製作した多チャンネル録音・再生システムを使用しました。
常にアーティストの作品が求める「音と空間の響き」を試行錯誤し、独自の音響空間の演出を目指す加登さんのもとには「演劇の一場面で本物のようなセミを鳴かせたい」「音響分析用の波音を録音してほしい」など、フィールド録音の依頼が次々と舞い込みます。その度に加登さんは、海岸や沖合、山奥などあらゆる場所に出かけて自然音を録音。「鳴門の渦潮にのみ込まれるような音響空間を演出してほしい」という難しい依頼には、海水や潮風に弱い音響機器を改造、多チャンネル録音も可能にして、転覆覚悟で船上から録音に挑みました。
「ただ目的のモノを録音するのは専門家なら誰だってできます。私たちが目指す録音は、空間で鳴っているモノではなく、空間そのものを録音(標本化)すること。言葉で言うのは簡単ですが、これにはかなり高度な技術が必要です。『こんな音を録音できたら、こんな音響空間を作りたい』を実現しますよ」と笑います。
また、様々な分野のプロとの繋がりも強みの1つ。自社レーベル「MUSA Records」ではCD出版も手掛け、アーティストを総合的にプロデュースする体制を整備。グラフィックデザイナーやネット販売会社との連携により、楽曲制作、アレンジ、レコーディング、パッケージ制作、流通に至るまでサポート。ライブハウスやアーティストからのホームページ制作依頼にも、Webデザイナーが音楽ファンの心をつかむサイトを制作しています。
#chapter3
3歳から習い始めたピアノで音楽との向き合い方を教わった加登さん。高校時代のバンド活動を通じて、音楽における電気音響の重要さに気が付き、音響の初歩を学び始めます。高校卒業後は迷わず芸術大学で音楽工学を専攻。テクノロジーが音楽(芸術)に対してどのようにアプローチできるのかを探求するため大学院でも学び続けました。
「一般的には、ミキサーのパラメーターを操作して音を作るのですが、僕はミキサーの中の回路を変更したり、スピーカーユニットを改良して音を調整することもよくあります」というように、音響機器の構造を熟知した上で、カスタマイズできるのが加登さんの魅力。音のクオリティーに徹底してこだわる姿勢は、現代音楽の作曲家・演奏家からも評価されています。自動演奏ピアノを用いた作品では、自動演奏ピアノ制御装置(再生デバイス)製作を担当。伝統的な尺八の奏法を最新の電子楽器で表現する「Cyber尺八プロジェクト」では録音・編集を担当しました。
「クリエイターとして技術者として、アーティストの魅力を最大限に引き出したい。そのためにはまだまだ勉強すべき事が山のようにあります。日々、自分自身を磨き続けたいです」
(取材年月日:2016年8月)
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Profile
音響・録音制作のプロ
加登匡敏プロ
音楽家
株式会社ムーサ・エンタープライズ
自身が理想とする音空間を演出するために、使用する音響・録音機器は改造、必要であればオリジナル機器も製作する。音楽と工学の両サイドからのアプローチが可能であり、アーティストを強力にバックアップできる。
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