動物耳科医療のプロ
杉村肇
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動物耳科医療のプロ
杉村肇
#chapter1
淡路島の洲本市、決して交通の便が良いとは言えない立地に予約が先々まで混みがちな動物病院があります。獣医師の杉村肇さんが院長を務める「どうぶつ耳科専門クリニック主の枝」です。医院名が示す通り、動物の耳の病気に特化したクリニックです。
「統計上、わんちゃんの耳の罹患率は、疾患全体の中でも例年2から3番目に多いんです。そしてそのほとんどは耳の外側、つまり外耳炎から始まって中耳炎、内耳炎へと至ります。脳に近いものですから、この段階で治療をしてあげないと髄膜脳炎、場合によっては突然死もありえます」と杉村さんは警鐘を鳴らします。
早期の発見と適切な処置が肝要であることは、言うまでもありません。
「初期症状としては、かゆがったり頭を傾けたり。深刻になると、例えば片目が閉じにくくなったり、唇が垂れてきたりと表情に現れます。さらには顔面神経麻痺や平衡感覚にも異常を来してしまいます。体験された方には分かるはずですが、中耳炎や内耳炎の痛みは大変つらいものです。できるだけ早く、こうしたサインに気付いてあげてください」
耳科専門であるがゆえに、来院者の多くは難治性といわれる治りにくい疾患を耳に抱えたペットの飼い主。しかも近郊のみならず、北は青森県、南は九州の各県からも訪れます。
「ペットは正直です。治療をして良い状態にしてあげると、動きも表情も見違えるほど変わります。それを楽しみにしてもらいたいですね。裏を返せば、それだけつらい思いをしてきたということでしょう」
#chapter2
開業当初は、内科や外科、循環器科といった全科目を診療していた杉村さん。とある国際セミナーへの出席をきっかけに、耳の医療の重要性を認識することになります。しかし、そこには一つの問題がありました。
「人の場合と違い、そもそも獣医学部に耳鼻科はありません。日本に限らず、動物医療の最先端と言われるアメリカでさえも、皮膚科や軟部外科などで適宜対処しており、一つの体系を持った学問としては確立されていないんです」
そこで杉村さんは、人間の医療にも学びを求めます。医科大学の耳鼻咽喉科や耳科関連の学会にも参加して知識や技術を習得。1992年には、日本では前例のなかった動物の鼓膜切開手術を成功させました。
治療に使用するのは、高度な技術を要するオトスコープという動物の耳専用内視鏡。ゆえに軽症の場合を除き全身麻酔のもとで行われます。
「麻酔を用いることで、わんちゃんや猫ちゃんが苦しみや恐怖から解放された状態のもと、時間をかけて症状を観察することができます。また部分的に組織や異物を取ったり、洗浄したり、手術に至るまでの一連の処置を耳の中だけで行うことができるのです」
初診で必ず血液検査、心電図検査、胸部レントゲン、そして胃の検査などを行うのは、適切な麻酔を考えるためでもあります。
「薬の量も種類もその子その子で異なります。これには、かつて全科を診ていた経験が生かされています。また耳以外に問題を抱えていても、それを把握できることは私の強みでもあります」
#chapter3
キリスト教徒である杉村さんは、自らを「クリスチャンの端くれ」と表現します。自身のさまざまな実績について語る際も「神さまがアイデアをくださったんです」と謙虚に断りを入れることがしばしばです。医院名の「主の枝」には、「自らの医療技術は、木の根であり幹である神さまから与えられた枝にすぎない」という思いが込められているそうです。
また、人の医療のように耳鼻咽喉科ではなく、耳科に特化しているのは、「それだけ動物の耳の疾患が多く、構造も複雑かつ多岐に及ぶため」だと言います。
「もちろん鼻やのど、呼吸器とも関連性がありますから、併せて勉強しています。耳というと非常に狭い分野のように聞こえますが、アトピーや食事、感染症など背景には幅広い要因があるわけです。こうした研究を重ね、動物耳科医療における治療法をより確固たるものにしていくことも、私に与えられた使命なのかなと感じています」
研さんの場は国内にとどまりません。アニマル・アシステッド・セラピーなどで知られるアメリカのデルタ協会で、人と動物のあるべき相互関係を科学的に学び、日々の診療でも実践しています。
「アメリカには『犬はしつけて初めて犬になる』という意識がありまして、インストラクターのもとでペットのしつけ方を学ぶ文化があるんです。学習を重ねながら飼ってらっしゃるので、ペットとの関係が豊か。私自身も、こうした関係性をも含めて指導ができる獣医師として、みなさまに関わっていけたら幸いです。お問い合わせやお困りのことなど、遠慮なくクリニックまでご連絡ください」
(取材年月:2021年9月)
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動物耳科医療のプロ
杉村肇プロ
獣医師
どうぶつ耳科専門クリニック主の枝
犬・猫・ウサギをはじめとするペットの耳科医療に特化し、外耳炎・中耳炎・内耳炎をはじめ、難治性といわれる耳の疾患にも専門的な技術と知識、また総合的な獣医科診療経験をもって治療に当たり回復へと導く。
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