何が起こるかわからない?
本質に迫る
研究開発にも流行があります。前職時代、15年程前のことです。共同研究をしていた大学の教授サマが『その研究はもはや機を逸している!』と言っていました。本当にそうだったのでしょうか?
更に時代は遡り、大学院生だった頃、とある大学の教授様から『題材の新旧に関わらず、物事の本質に迫ろうとすることが大切』と書いた葉書をいただいたこともありました。
軽量化素材の開発をしていた時
前職時代、軽量化素材素材の開発を担当しておりました。その時の出来事です。
取り組んだ甲斐もあり、かなり良いものができました。ただ、耐熱性はイマイチでしたが、何とか樹脂製品としてはギリギリのところでした。
耐熱性を上げる手法も見出してはおりましたし、量産試作も成功しておりましたが、原料が高価であるなど、課題も多くありました。
大手自動車詣で
当時、その軽量化素材を自動車用途に使うことが親会社の商社も含めて方針でした。ただ、どうしても耐熱性のところがネックになっていました。その一方で、親会社の営業担当者は某最大手の『自動車メーカー詣で』を毎月繰り返していました。毎月新しい話題を提供してその自動車メーカーにお気に入りになることが、その商社での出世の近道だったからです。
意外なところからフィーバックしていた
ところが、例の軽量化素材、耐熱性が問題で、なかなか安価で乗り切ることが難し状況でした。その結果、営業担当者は自動車メーカー詣での際に開発担当である前職の会社の悪口ばかりを言うようになって行きました。その結果なのか?開発品を採用してもらうことなく、そのまま終焉となりました。
その後、全く関係のない懇意にしていた繊維メーカーの人と話をすることがありました。その人も某自動車メーカーの担当者を知っているらしく、大変興味深い話を聞きました。
何と某自動車メーカーの担当者は耐熱性が良くないことについては、さほど気にしていなかったそうです。『他の樹脂と比べても、そもそもプラスチックというものに耐熱性を求めることはナンセンス』という認識だったそうです。
それより、営業が開発担当者の悪口ばかり言っている姿に壁壁したのでしょうか?体制が良くないという判断があったのかもしれません。
小型乗り物への応用を提案したが…
当時から、軽量樹脂を積極的に導入している中小の自動車会社もありました。主に一人乗りで当初は50ccのエンジンだったようですが、その後電気式も採用されるようになったそうです。ただ、出力が非力なので、軽量化は必須でした。
まず、電気式にすれば、耐熱性の問題は解消します。
更に、『この一人乗りの自動車のおかげで、障害のある人も外出できるようになり、生き生きとなった!!!』という話も聞いておりました。
これは『開発品を一人乗りの車に応用するしかない』『人が元気になるのであれば是非ともやりたい!』そんな衝動に駆られました。
馬耳東風
上記を複数の営業担当者に話し、一人乗りの車を製造している会社の調査を依頼しました。
例えば、下記の自動車メーカーとかです。
(タケオカ自動車工芸)
https://takeoka-m.co.jp/
ところが、全員『馬耳東風』で、誰一人耳を傾ける者はいませんでした。
どうやら『某大手自動車メーカー詣!!!』でが何よりも大切なようで、その考え方は営業のみならず、子会社である樹脂メーカーにも波及し、私の考えは『幼稚な発想!』として一蹴されました。
世の中あるある、どこにでも権力にすり寄る人々ばかりが目立ちますが、何も得ることもなく終わるものです。
今や小型乗り物が脚光を浴びている!
あれから15年程が流れました。
最近、下記のようなテレビ番組を見ました。
(儲かる!『小さな乗り物』)
https://www.youtube.com/watch?v=RiKby-aE_U4
15年程前に『その研究はもはや機を逸している!』とか言われましたが、むしろ『これから!』といったところのようです。
『機を逸した!』は戯言に過ぎない
あの時、真剣に小型乗り物への応用をやっていたらどうなっていたでしょうか?
さすがに15年もあれば、パイオニアとして確固たる地位が築けたかもしれません。
世の中あるある、中小企業で成功すると、大手メーカーは必ず乗り出して来るものです。
その結果、前職の会社の製品の売り上げの構図も変わっていたかもしれません。
しからば、もはや『機を逸した』のでしょうか?
そうは考えません。
『題材の新旧に関わらず、物事の本質に迫ろうとすることが大切』を踏まえれば、やり方など無限で、あの手この手考えない方が駄目と言えます。
上記軽量化素材もできた物質だけが重要ではなく、どのようことを経て開発したのか?そのプロセスが非常に重要です。しかも、開発担当者が私一人だけの時期も長かったので、得た貴重な経験を今後生かして行きたいと考えております。




