不安を煽ることは百害あって一利なし
皆様方、お世話になっております。日々雑感を綴っております。
前回、『マニュアル類の中身が多いと、なかなか見る気にならない』と申し上げました。
(山の安全とアマチュア無線)
https://mbp-japan.com/hyogo/banyohkagaku/column/5174946/
今回は研究開発の場でも結果に大きく左右するマニュアル類、特に自作の取り扱い説明書について申し上げます。
トリセツはマニュアル類の一つ
『マニュアルが、業務プロセスやフロー、ノウハウ、製品やサービスの説明に至るまであらゆる行動範囲の指示書であるのに対し、取扱説明書はあくまでもモノに対する操作や取扱い方を説明する文書です。』とあり、取扱説明書はマニュアル類の一つであると言えます。
(マニュアルと取扱説明書(トリセツ)の違いとは?)
https://kagurazaka-editors.jp/instruction-manual/
PL法対策
いろいろな機器類、購入したものの、まずは『使い方を知る』となるため、説明書も必要です。
ところが、いわゆる取り扱い説明書は機器類を快く使ってもらうためだけではなく、PL法対策の一面を担っています。
PL法については、『1995年に施行された製造物責任法の略称です。この法律は、製品の欠陥によって消費者が被る損害についての責任を定めています。製造物責任法は、製造業者や販売業者の過失ではなく、製品の欠陥に焦点を当てています。
したがって「製造物の欠陥」を原因として生命や身体などに損害を被った場合、原因がその欠陥であることが証明できれば、消費者は製造業者や責任者に対して損害賠償の請求が可能です。』とあります。
更に『対策には取扱説明書が肝心』とあり、ポイントとして『(1)正しい使い方を明確に説明する、(2)絶対にしてはいけないことを明記する、(3)絶対にしなければいけないことを明記する、(4)最新の内容に随時更新する、(5)PLを遵守する、のようで、 取扱説明書が不完全なものであれば、事故が起きた場合、製造業者及び関係者は責任を問われる恐れがあります。』となるみたいです。
(製造物責任法(PL法)の重要性と対策|製品安全性と消費者保護)
https://modern.co.jp/colum-product-liability/
結局内容量が多くなる
上記事情は非常に重要であり、十分理解できますが、どうしても遭遇する可能性がかなり低い事柄まで含まれてしまい、分量ばかりが多くなってしまいます。致し方ないところです。
そして、結局のところ、いざ使うとなると、前置きが長くなったりして、どこをどう見れば良いか?わかりにくくなってしまいます。これは取扱説明書が『如何にクレームを防ぐか?ダメージを少なくするか?』に力点を置いた結果で、より良い使いやすさや効率良く使う方法など、如何に機器類の能力を最大限に引き出すか?についてはどうしても優先されて来なかったからでは?と考えてしまいます。
中には注意点と使い方を分けた取扱説明書もありますが、少数派です。
製薬会社では
そんなこんなで、日々の業務などで機器類を使うとなれば、それに合わせた取扱説明書を自力で作って凌ぐことも一手となります。使う度にメーカーのトリセツを何時間も読んでばかりいるわけには行かないからです。
とある製薬会社でのお話です。まず、機器類それぞれに担当者を貼り付けます。これはよくあることです。そして、その担当者は自作の簡易トリセツを作ります。そこへ新入社員などが入って来ると、何も教えずに作ったトリセツだけを見せ、その機器を操作させるそうです。少しでもまごつくようなことがあれば、その自作トリセツに不備があったことになります。担当者に連絡が行き、改善策を検討し、トリセツの修正や追記することになるそうです。更に年度末には総括もあるそうです。
製薬会社ですから、GMP(Good Manufacturing Practice)の関係もあり、機器類の取り扱いには非常にシビアな状態でしょうが、かと言って、生産効率も気にする必要があり、本当に必要な操作のみをピックアップすることで対応しているようです。
自作トリセツの作り方
そんなこんなですが、ここで拙い経験ながらも、これまで概ねうまく行ったトリセツの作り方です。
もちろん、これがベストではなく、他にもっと良い方法があるはずです。
自作トリセツについて考えるきっかけになっていただければと思います。
(1) とにかく使ってみる。使い方を誰かに聞いてみる。
(2) 修理などで機器類メーカーのサービスマンが来るのであれば、一大チャンス!根掘り葉掘りいろいろ聞くと裏技まで教えてくれることもあり、当然自作トリセツには反映できる。
(3) スイッチの場所、スイッチを入れる前後の様子など、動作一つ一つの写真を撮る。
(4) パソコン制御の場合も、画面が少しでも変われば(例えば単に『OK』と出ただけでも『PrintScreen』キーを押して、画面を保存する。
(5) Wordに必要なこと書き込みながら上記で準備した写真やパソコンの画面を挿入して貼り付ける。
(6) 貼り付けた写真のどこを見るか?囲み、矢印、吹き出しなどを入れる。いわゆる漫画のような感じとなる。
ざっとこんな感じです。
ポイントはWordで書くというところです。
自前トリセツを作り始めた時は『Visio』というソフトを使っており、フローチャート作成機能など便利ではありましたが、汎用性に欠けるのと、他の誰かに引き継いでもらうこともできないので、Visioを使うことを止めました。そして、意外にもWordでも十分であることがわかりました。
下記は、昨年技術顧問先で作った自作トリセツの一部を改編したものになります。
(自作トリセツの例)
https://smooooth9-site-one.ssl-link.jp/banyokagakukenkyusho230710/uploads/blog/30/6700be11ac13930.pdf
頑張って作れば効果絶大
てなことで、自作トリセツのお話でした。
自作トリセツを真剣に作ろうと思ったきっかけは、前職時代にNMRというやや大きめ且つ操作もいささか煩雑な機器が導入され、担当者になったことでした。
上記、製薬会社の出身者から、『簡易トリセツをしっかり作っておかないと、使おうとした人から呼び出されてばかりで、自分の仕事ができなくなるよ!』と言われておりました。そこで、かなり用意周到に自作トリセツを作った結果、担当をしていた11年間、使い方不明で呼び出されたことも、自作トリセツが元で装置が破損したことなど一度もありませんでした。そして、NMRの稼働率も導入当初から飛躍的に伸び、装置の有効利用にも繋がりました。この自作トリセツ作りも横展開して他の機器類にも適用され、次第に作り方の要領も得て行きました。いささかのやり込みと忍耐は必要ですが、面倒がらずにやったことで効果は絶大でしたので、お勧めです。