かわいい子には旅をさせよ、という程ではなくても…

辻村豊

辻村豊

テーマ:研究開発のヒント

皆様方、お世話になっております。日々雑感を綴っております。

次男が中学校に入ってからソフトテニスを始め、この週末に開催されたローカルな大会で引退しました。この2年数か月は本当にテニスに没頭していました。
いろいろなことがありましたが、特に昨年の9月末にあった出来事は私の経験にも繋がることがありましたので、ご紹介致します。

ソフトテニスについて

そもそも私自身、テニスというものにあまり詳しくないのですが、下記は次男がテニスをするようになって知り得た最小限の知識であり、あくまでも中学生レベルの話にはなりますが、今回の話題については、次の3点を押さえておけばOKです。

(1) シングルはなく、試合は全てダブルスで試合行う。なので個人戦と呼ばれる試合もダブルス。
(2) 団体戦は3ペア(3回マッチ)で行う。
(3) 試合中は何度か2~3分間のブレイクタイムがあり、指導者はそこでアドバイスをする。その結果、試合の流れが変わることもある。

まず、ダブルスなので、誰とペアを組むかが重要となります。やはり相性というものがあるようです。
更に団体戦となると、更にどの順番でどのペアを送り込むか?も重要となります。
柔道の団体戦のようなもので、それに加えて各ペアの相性も絡むので、頭脳戦となる場合もあります。

放り出された

昨年の9月末に近隣の中学校で、ローカルな大会がありました。
そこには次男の中学校から2チーム出場していました。
いわゆる1軍と2軍です。次男は2軍の部に出ました。
ところが、諸事情あって、突然2軍チームは指導者なしで試合に臨むことになりました。その結果、2軍チーム、何もかもを自分たちで決めなければならなくなりました。
ところが、全員にスイッチが入ったようで、異常な盛り上がりとなりました。

優勝してしまった!

試合は団体戦で4チーム出場の総当たり戦でした。
ペアをどうするか?どのペアを出すか?どの順番で出すか?など、試合ごとに綿密な作戦会議をやっていました。
また、試合中も出ていないメンバーは試合をしっかりと観察し、ブレイクタイムでは皆が多くのアドバイスを送っていました。
それらが功を奏したのか?全くの負けなし、優勝してしまいました。
2軍の部とは言えども、表彰式もあって、立派な優勝カップと賞状もありました。
試合後の記念写真には全員の笑顔が溢れています。

小さくても成功体験

小さくても大きな大きな成功体験でした。
おそらく全員がテニスを始めて僅か1年数か月のことです。テニスに関して腕も知識もまだまだの時点でありながら、何とか頑張ったということです。もちろん、これも日頃から適切な指導を行ってきた先生方によるものです。更に事情はあったにせよ、試合中に監督者不在であったのは問題ですが、そこは他の中学校の先生方にもカバーしてもらって何とか切り抜けましたので、とにかく先生方には感謝感謝です。

就職した先が…

さて、私ですが、大学院を修了した時、当時、出身の大学に新たにできたベンチャーラボラトリーという施設で期限付きで働くことになりました。
その施設、ユニークな制度があって、原則教員は建物内に立ち入ることができず、選抜された学生だけが入り、ベンチャー精神を養うのが目的でした。私は研究活動と並行して学生の補佐役もやることになっておりました。
ところが、実際には学生の姿はほとんどありませんでした。学生は全員既存の研究室にも籍を置いていましたので、既に居場所はありました。中には『スーパーコンピューターがないと何もできないから』とか言って、全く来ない学生もいました。噂ではベンチャーラボラトリーに関する多額の予算があったそうですが、実際にはベンチャーラボラトリーの外へ流れていたようです。
そして、私がベンチャーラボラトリー去ってから後にはなりますが、結局大した成果も出せずに閉鎖されました。
後に『ベンチャーラボラトリーは大成功だった』と単行本に書いた教授サマもいましたが、全く理解できません。その教授サマにメールを何度か出しましたが、全く無視でした。余程都合が悪かったのでしょう。
結局、学生にベンチャー精神を持たせる発想は良かったかもしれませんが、予算の取り合いが行われただけで、完全に計画倒れとなり、ベンチャーラボラトリーに関わった中で、実際にベンチャー企業を興したのは私だけだろうと思いますが…

箱だけ与えて成果を出せ出せ!

てなことで、採用されたものの、何もない建物の中に放り込まれました。施設長と称する教授サマからは『成果を上げてもらいたい』ばかりを頻繁に言われていました。『次のポストは成果を上げないと無いよ』ということなんでしょうが…
また、施設長はそれ以上に、『君を雇用しているからには…』をお念仏のように何度も何度も言っていましたが、未だに意味不明です。
それで立ち上げの際にいくらか予算がありましたが、その後は月2回締め切りの購入計画書を書いて、承認されて、それから見積を取って、どうのこうのでしたので、とてもではないが、スピーディーに研究を行える状況ではありませんでした。

ほとんどお金を使わず

結局、ほぼお金を使わずに切り抜けるしかありませんでした。
たまたまその大学に過去に機械系の先生が取り組んでいていた研究テーマがありました。それを化学的な切り口で進めることを考えました。それはレーザー変位計さえあえれば可能でした。ただ、元が機械系だっただけに、化学系のことはわからないということで、自力でやるしかありませんでした。
また、当時はまだ珍しかったPETボトルのジュースをひたすら飲んで、片っ端から空いたところへサンプルの水溶液を入れて保管したり、ウエイトも分銅ではなく、釣り道具屋さんで購入して使ったり、出来る事は何でも工夫しました。
そして、肝心のメインの試料であるコラーゲンフィルムも、その大学の卒業生が勤務していた会社から無償サンプルで譲り受けておりました。

学会論争に一石を投じた

内容はコラーゲンというゲルが塩水に対して収縮、純水に対しては戻る現象を追いかけるものでした。ただ、ゲルへの環境変化に対して、動きが大きく容易に観測でき、且つ驚異的な速さで応答することが特徴でした。
得た結果を論文にまとめました。

(コラーゲン・フィルムの塩水-水中収縮-回復挙動)
https://smooooth9-site-one.ssl-link.jp/banyokagakukenkyusho230710/uploads/blog/3/64ed54e690dee3.pdf

当時、ゲルに対して、イオン強度という物性がどのような関係にあるのか?が専門の学会では論争になっていたようで、そこへも一石を投じることができたようです。何もない箱のなかでも、何とかなりました。
そして、おそらく純粋にベンチャーラボラトリー内だけで行われた唯一の研究例であると確信しております。その経験は現在、非常に役立っております。

かわいい子には旅をさせよ?

てなことで、学校を卒業して、いきなり何もないところで、どうにかせい!と言われ、何もかも自分一人でやる破目になったお話でした。世の中あるあるです。
かわいい子には旅をさせよ、ではないですが、時には放り出して、自力で何とかさせることも必要だ思います。たとい、それがほんの小さなことであったとしてもです。上記次男の例も、メンバー全員にとって、必ずや将来役に立つ経験となるはずです。

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辻村豊
専門家

辻村豊(技術コンサルタント)

合同会社 播羊化学研究所

材料や素材の研究開発、製造工程、特許に関する企業の困りごとを丁寧にサポート。専用の実験室で実証実験や試作も行っており、少量からでも対応が可能です。技術系社員の育成、技術承継も相談に応じます。

辻村豊プロは神戸新聞社が厳正なる審査をした登録専門家です

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