故障した給湯器の交換等に時間がかかる-「貸室・設備等の不具合による賃料減額ガイドライン」がお役に立つかもしれません
ポイントその1:法務局が預かったからといって、その遺言内容が確実に実現できるとは限りません
法務局における自筆証書遺言保管制度創設の趣旨
自筆証書遺言は、自書能力さえ備わっていれば他人の力を借りることなくどこでも作成することができ、特別の費用もかからないことから、遺言者にとって手軽かつ自由度の高い制度といえます。
他方で、自筆証書遺言は作成や保管について第三者の関与が不要とされているため、遺言者の死亡後相続人に発見されなかったり、一部の相続人により改ざんされたりするなどのリスクがあります。
そこで、遺言書保管法という法律が制定され、自筆証書遺言の抱えるリスクを軽減するための方策として法務局による自筆証書遺言保管制度(以下、「本制度」といいます)が創設され、今年7月から運用が始まりました。
保管の申請ができるのは
様式としては、封をしていない自筆証書遺言に限られます。
全国の法務局(地方法務局およびそれらの支局や出張所を含みます)のうち法務大臣の指定する法務局が、遺言書保管所としてこの事務を行います。
保管の申請は、申請人となる遺言者自身が法務局に出頭して手続を行う必要があります。代理人による申請はできませんので、病気などの事情で法務局に出頭できない方は、本制度を利用することができません。
なお、本制度に基づき法務局に保管されている遺言書については、家庭裁判所による検認手続が不要となります。
法務局では
法務局の職員(遺言書保管官といいます)が、民法第968条の定める自筆証書遺言の方式に適合しているかどうか、外形的な確認を行います(日付および遺言者の氏名の記載があるか、押印がなされているか、本文部分が手書きで書かれているかなど)。
保管申請に際しては、申請人の本人確認手続を行います。本人確認書類として顔写真付きの身分証明書が必要ですので、これをお持ちでない方は事実上本制度を利用することができません。
注意点は
法務局では遺言書の作成に関する相談は受け付けていません。また、保管する遺言書の内容についての審査も行いません。このため、本制度により保管される遺言書について、その有効性を保証するものではありません。
つまり、法務局で保管されたからといって、その遺言書の内容が確実に実現できるとは限らないのです。
当事務所では、裁判所の検認手続を経た自筆証書遺言に基づく相続登記申請が認められなかった事例があります。本制度により保管された遺言書でも、同様のことが起こる可能性がありますので、ご注意ください。
本制度については、part 2 以降で引き続き情報提供をしてまいります。
遺言のみならず、相続手続全般に関するご相談も承りますので、お気軽にご連絡をお願いいたします。
<参考文献等>
『一問一答 新しい相続法-平成30年民法等(相続法)改正、遺言書保管法の解説』 商事法務発行
本制度に関する法務省のパンフレット
http://www.moj.go.jp/content/001322593.pdf
<参考リンク>
法務省ホームページ内 法務局における自筆証書遺言書保管制度について
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html