光は設計者が決めきらない

ある産婦人科の待合室に水景があります。
設置してから十年以上が経ち、今ではその空間の風景の一部になっています。
週末になると、よく見られる光景があると
立ち会っている守衛の方が話してくれました。
出産前の母親を見舞いに来た家族が帰るとき、
一緒に来ていた子どもが泣き出します。
ところが水景の前に来ると、
子どもはしばらく魚を見ている。
そして父親に「帰るよ」と声をかけられると、
思い出したようにまた泣き出す。
水景の前では、
人がしばらく立ち止まっていることがあります。
誰かと話しているわけでもなく、
スマートフォンを見ているわけでもなく、
ただ魚を見ています。
水景の前では、
人の意識が外に向く瞬間があります。
そしてまた、
元の感情へ戻っていく。
水景は装飾として置かれることが多いものですが、
空間の中では、こうした心の行き来のそばに
静かに存在しています。
私は、そうした水景を設計する仕事をしています。



