資金ショートを防ぐ返済計画の立て方と実践法

望月良友

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テーマ:返済計画 資金ショート 防止方法



中小企業の経営において最も避けたい事態の一つが「資金ショート」です。売上が好調でも、支払い期日に資金が足りなければ事業は一瞬で行き詰まります。その原因の多くは、返済計画の不備や資金繰りの見通し不足にあります。

本記事では、元銀行員として30年以上にわたり中小企業の融資支援・財務改善に携わってきた筆者が、「資金ショートを防ぐための返済計画の立て方」と「実践的な資金繰り改善の方法」をわかりやすく解説します。

【資金ショートとは何か】



まず「資金ショート」とは、支払いに必要な現金が不足する状態を指します。つまり、資金の流れ(キャッシュフロー)の時間差によって、一時的に資金が足りなくなることです。

資金ショートの要因は多岐にわたります。売掛金の回収遅延、過大な設備投資、返済負担の増加、税金・賞与など季節要因による支出集中などが典型的です。特に中小企業では、これらが重なることで予期せぬ資金ショートに陥るケースが少なくありません。

【返済計画の重要性と資金繰りの関係】



資金繰り表と返済計画は経営の両輪です。どんなに優れた事業でも、返済計画が現実的でなければ、資金は必ず詰まります。銀行が融資判断で重視する「数値・人物・ストーリー」のうち、返済計画は「数値」を支える最重要要素です。

返済計画は単に「借入金を何年で返すか」だけではありません。事業のキャッシュフローに基づき、「どの月に、いくら返済できるか」を具体的にシミュレーションし、資金繰り表に反映させることが求められます。

【銀行が評価する返済計画とは】



銀行は、借入時に「返済原資が確実に確保できるか」を見極めます。特に重視されるのは以下の3点です。
・営業活動によるキャッシュフローで返済できるか
・売上・利益の見通しが根拠ある数字か
・経営者の計画遂行力(信頼)があるか

返済計画は「数字」だけでなく「人物評価」「ストーリー」と結びつくため、銀行との信頼関係を築く重要な資料でもあります。

【資金ショートを防ぐための実践的ステップ】



資金ショートを防ぐには、単に資金を増やすことよりも、「資金の流れを見える化」し、早めに対策を取ることが大切です。以下では、返済計画を軸にした防止策を具体的に解説します。

① 資金繰り表を月次・週次で作成する



資金ショート防止の第一歩は、資金繰り表の定期的な更新です。最低でも月次で、理想的には週次で現金の入出金を可視化します。

資金繰り表には、売上・入金予定、支払い予定、借入返済、税金、賞与、経費をすべて反映し、手元資金の推移を確認します。これにより「資金が不足しそうな時期」を事前に察知できます。

② 借入返済スケジュールを柔軟に見直す



借入返済が負担になり始めたら、早期に金融機関へ相談することが肝要です。リスケジュール(返済条件の変更)は、資金ショートを防ぐ有効な手段です。

重要なのは、「資金繰りに問題が生じてからではなく、予兆段階で相談する」ことです。銀行は、誠実に状況を説明する経営者を高く評価します。事実、再生支援の現場では「早く相談した企業ほど立て直しが早い」という傾向があります。

③ 支払いサイトと回収サイトのバランスを取る



売掛金の回収が遅く、仕入や外注費の支払いが早いと、資金繰りが悪化します。取引先との関係を維持しつつ、できる範囲でサイト条件を見直すことが有効です。

例えば、「請求書発行から30日以内の支払い」を「45日払い」に変更する、あるいは主要顧客に「早期入金割引」を提案するなど、資金流入のタイミングを調整します。

④ 設備投資・賞与・税金支払いのピークを管理する



設備投資や税金、賞与支払いは一時的に多額の資金を必要とします。これらを年間資金繰り表に組み込み、「資金流出の山を平準化する計画性」が求められます。

特に賞与月(6月・12月)と消費税納付月(3月・9月)は、資金ショートが発生しやすい時期です。余裕資金を確保し、ピークを乗り切る体制を整えておくことが重要です。

【資金ショート防止に役立つ管理体制の整備】



資金繰りの管理は経理担当者任せにせず、経営者自身が主体的に関わる必要があります。ここでは、資金ショートを未然に防ぐための仕組みづくりを紹介します。

① 「資金繰り会議」を定例化する



月1回でも構いません。経営者・経理担当・営業責任者が参加し、資金繰り状況を共有する場を設けましょう。これにより、売上・入金・支払い・借入の全体像をチームで把握できます。

筆者が支援した企業では、この「資金繰り会議」を導入したことで、黒字転換後も資金ショートを一度も起こさず安定経営を実現しています。

② キャッシュフロー経営を意識する



利益が出ていても現金が不足するケースは珍しくありません。損益計算書ではなく、「キャッシュフロー」を重視した経営判断を行うことで、資金ショートのリスクを大幅に下げられます。

銀行融資においても、キャッシュフロー重視の姿勢を見せることで「金融リテラシーの高い経営者」として信頼を得やすくなります。

③ 短期・長期資金を明確に区分する



短期資金(運転資金)と長期資金(設備資金)を混在させると、返済計画が破綻しやすくなります。運転資金は短期借入や当座貸越で対応し、設備投資は長期借入で賄うのが基本です。

この区分を誤ると、長期返済の途中で資金ショートを招く恐れがあります。銀行との交渉時にも、「資金の使途を明確に説明する」ことが信頼につながります。

【まとめ:資金ショートを防ぐ返済計画の立て方と実践法】



資金ショートを防ぐ最も確実な方法は、「返済計画と資金繰り表を一体で運用すること」です。数字の裏にある経営実態を理解し、銀行と信頼関係を築きながら柔軟に計画を見直す姿勢が求められます。

経営は「資金の流れの見える化」から安定します。資金繰りの透明性を高めることで、返済能力を裏付け、金融機関からの信頼も厚くなります。最終的には、資金ショートを恐れずに前向きな投資判断ができる経営体質へと変わるのです。

【よくある質問(Q&A)】



Q1. 資金ショートの兆候を早期に見抜くには?


手元資金の減少ペースが続いたり、支払い予定を先送りする状況が増えたら注意信号です。資金繰り表を週次で確認し、「来月の残高見込み」を常に把握することが重要です。

Q2. 銀行への返済が厳しいとき、どうすれば良い?


支払いが遅れる前に、誠実に現状を説明して返済条件の見直し(リスケジュール)を相談しましょう。信頼を損なわない対応が再建の第一歩です。

Q3. 資金繰り表を作る時間がない場合の代替方法は?


簡易的なキャッシュフロー管理でも構いません。入金予定・支払い予定・借入返済をExcelや会計ソフトで整理し、「手元資金の増減」を見える化するだけでも大きな効果があります。

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望月良友(ファイナンシャルプランナー・アドバイザー)

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