創業融資に成功する銀行交渉と事業計画書の書き方

望月良友

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テーマ:創業融資 銀行交渉 事業計画書



創業融資に成功する銀行交渉と事業計画書の書き方
創業期の資金調達は、事業の立ち上げにおいて最も重要な関門です。特に「創業融資」を銀行から受ける際、事業計画書と銀行交渉の質が結果を大きく左右します。

本記事では、銀行員として30年以上の現場経験をもつ筆者の視点から、融資審査を通過するための実践的な戦略と、事業計画書作成・交渉のポイントを詳しく解説します。


 

創業融資とは何か:銀行が見る「リスク」と「信頼」


創業融資とは、新たに事業を始める個人や法人に対して、銀行や日本政策金融公庫などが資金を貸し付ける制度です。銀行は利益を目的とした金融機関であるため、融資の判断は常に「返済可能性」と「信頼性」の2軸で行われます。

創業段階では、まだ決算書も実績もありません。したがって、銀行が重視するのは「事業の将来性を裏付ける計画書」と「経営者本人の信用」です。この2点を的確に伝えることができるかどうかが、創業融資成功の分かれ道になります。

銀行が融資審査で重視する3要素


創業融資を成功させるには、銀行が審査で重視する「3つの柱」を理解しておく必要があります。これは銀行員が実際に内部で確認する基本的な視点です。
 

1. 数値(事業計画の収益性と資金繰り)


銀行はまず「数字」で判断します。売上予測・原価・固定費・利益率・資金繰り表などが現実的であるかを厳しく見ます。特に重要なのは、資金繰り表の整合性です。創業期は売上が想定より遅れる一方で、支出は前倒しになるケースが多いため、「3か月先の現金残高がマイナスにならないか」を必ず確認されます。
 

2. 人物(経営者の姿勢と信頼感)


銀行員は、数字以上に「経営者の人柄」を重視します。過去の職務経験、実行力、誠実さ、継続的な努力の姿勢が、融資可否を左右します。面談では、明るく、論理的に話すこと。質問に対して根拠を持って答えること。これが「信頼の積み重ね」となります。
 

3. ストーリー(事業の意義と実現性)


事業の目的や社会的な意義が明確かどうかも、評価の大きなポイントです。単なる「儲けたい」という動機ではなく、「なぜこの事業を立ち上げたのか」「どんな課題を解決するのか」を一貫したストーリーとして伝えることが、信頼につながります。

 

銀行交渉で失敗する典型例とその対策


創業者の多くが、銀行との交渉に慣れていません。ここでは、よくある失敗例とその回避法を紹介します。
 

失敗例1:数値の根拠があいまい


「売上は月100万円を見込んでいます」と説明しても、その裏づけがなければ銀行は信用しません。市場データや見込み客の存在、契約予定の証拠を具体的に示すことが大切です。

 

失敗例2:自己資金が少なすぎる


創業者自身がリスクを負っていない場合、銀行は「本気度が足りない」と判断します。理想は総投資額の3割以上を自己資金で用意することです。
 

失敗例3:銀行担当者との信頼関係を築けていない


交渉の場は「説得」ではなく「対話」です。担当者は敵ではなく、あなたの事業を内部で説明してくれる「味方」です。担当者が上司に説明しやすい資料と話し方を意識しましょう。
 

銀行面談での伝え方:担当者が動きたくなる説明法


銀行面談では、書類以上に「伝え方」が重要です。融資判断の現場を知る立場から、効果的な面談の流れを紹介します。

1. 結論を先に伝える


「○○万円の融資を希望しています。その資金は△△の初期投資と運転資金に充てます。」まず目的と金額を明確に。曖昧な話し方は避けましょう。

 

2. 実現可能性を数字で補強する


想定売上・利益率・損益分岐点を簡潔に説明できるようにします。たとえば「1日平均20人×単価1,500円×営業日25日=売上75万円」など、根拠が明確な説明が信頼を得ます。
 

3. 熱意と誠実さを態度で伝える


銀行員は「この人なら失敗しても立て直せるか」を見ています。誠実な受け答え、礼儀、準備の丁寧さが最終判断に影響します。
 

事業計画書に盛り込むべき実践的な視点





銀行が評価する事業計画書は、見栄えではなく「実現性」と「説明力」で決まります。以下の5つの構成要素を意識して作成しましょう。

1. 創業の動機とビジョン


「なぜこの事業を始めたのか」を明確にすることで、銀行は経営者の熱意と一貫性を判断します。過去の経験や社会的課題との関係性を盛り込みましょう。
 

2. 市場分析と競合比較


業界動向、ターゲット層、競合他社の強み・弱みを明示します。単なる感想ではなく、データや統計を用いて客観性を持たせることが重要です。
 

3. 収支計画と資金繰り表


売上・経費・利益の推移だけでなく、「資金がいつ、どれだけ出入りするか」を月単位で示す資金繰り表を添付します。銀行はこの部分を最も重視します。

4. リスク対策


リスクを隠すより、「想定リスク」と「対策」を明記する方が信頼を得やすいです。例:「客数減少時は販促費を調整」「外注比率を下げて固定費を軽減」など。

5. 経営者プロフィールと信用情報


過去の勤務経験・資格・人脈など、実務遂行力を示す情報を具体的に記載します。銀行は「人」を見ています。
 

創業融資を通すための実践ステップ


ここでは、実際に創業融資を成功に導くための流れをステップ形式で解説します。
 

ステップ1:自己資金の準備


自己資金は多いほど有利です。最低でも総投資額の30%を目標に、コツコツ貯めましょう。


ステップ2:事業計画書の作成


テンプレートではなく、実際の運営をイメージした数字を入れること。銀行が「現実的だ」と感じる構成にします。

 

ステップ3:金融機関の選定と事前相談


地元の信用金庫や政策公庫は、創業支援に積極的です。いきなり本申請せず、まずは相談窓口でアドバイスを受けましょう。

 

ステップ4:面談準備と模擬練習


質問想定集を用意し、第三者に聞いてもらうと効果的です。緊張せず、短く的確に話せるように練習します。

 

ステップ5:交渉後のフォロー


結果が出た後も、担当者へのお礼と定期報告を欠かさないこと。これが次回融資への信頼構築につながります。

 

借入申込はいつから始めるべきか:銀行の内部事情を理解する


多くの創業者が誤解しているのが「申込から入金までの期間」です。銀行には、内部審査・決裁・契約手続きといった固定のフローが存在します。そのため「来週には借りたい」といった短期希望には対応できません。

一般的に、初回面談から融資実行までには少なくとも1か月前後かかります。銀行によっては、支店内の稟議(りんぎ)だけでなく本部決裁を要するため、さらに1〜2週間かかる場合もあります。そのため、資金が必要になる予定日の2か月前には、借入相談をスタートするのが理想的です。

また、創業前の場合は「開業予定日の3か月前」を目安に、金融機関との関係づくりを始めるとスムーズです。事業計画書を練り上げる時間的余裕も確保でき、銀行側の信頼構築にもつながります。余裕のあるスケジュールは、「準備力=経営能力」として高く評価されます。

 

まとめ:創業融資に成功する銀行交渉と事業計画書の書き方




創業融資を成功させる鍵は、「数値・人物・ストーリー」の三位一体で信頼を築くことにあります。そしてもう一つ大切なのは、「時間的余裕をもって準備を進めること」です。

銀行は慎重に審査を進める機関であり、事前相談から実行までのプロセスには一定の期間が必要です。焦らず、早めに相談を始め、誠実な準備と丁寧なコミュニケーションで信頼を積み重ねましょう。

創業は挑戦の連続ですが、「資金繰りは数字ではなく信頼の積み重ねで決まる」という意識を持ち、堅実に一歩ずつ進めていきましょう。

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