【消費税減税と積極財政の関係を専門家が徹底分析】

日常の買い物やサービスの支払いのたびに、私たちは当たり前のように「消費税」を支払っています。
多くの方は「消費者が負担して、お店がそれを国に納めている税金」だと理解しているはずです。
ただ、長く企業の資金繰りや税・社会保険コストを見てきた立場から正直にお伝えすると、この理解は制度の本質をかなり外しています。
ここを正しく捉えないと、中小企業の価格設定、利益管理、人件費の考え方、ひいては日本経済の弱体化まで、なぜこうなっているのかを読み違えます。
今回は消費税について、「本当はどういう仕組みなのか」を4つの視点から整理します。
感情的な話ではなく、法律・制度設計・企業の現場感に基づいた話です。
これまでの”常識”からは違った話、でもこれが真実という内容ですので、
よーく考えながら読んでくださいね。
1.消費税の納税義務者は「消費者」ではない
まず押さえてほしいのは、法律上、消費税を納める義務があるのは「事業者」だという点です。
ここがすべての出発点です。
消費税法では、「国内で課税取引を行った事業者は消費税を納める義務がある」と定義されています。
つまり、納税義務者はあくまで事業者。消費者という言葉は法律上出てきません。
なぜ出てこないかというと、そもそも消費者は消費税の「納税義務者」ではないからです。
多くの方が「消費税は間接税(負担者と納税者が別)」だと習ってきましたが、この説明はかなりミスリードを誘います。
実際には、消費税を計算し、申告し、納付しているのは事業者ですし、その負担・影響も事業活動の中で吸収・調整されています。
たとえば法人税や固定資産税など、企業が支払う他のコストも最終的には商品・サービスの価格に織り込まれ、結果的に消費者が支払う形になります。消費税も、広い意味では同じ「価格の一部」として扱われているというのが実態です。
レシートに「本体価格100円+消費税10円=110円」と書いてあっても、「10円をお店が一時的に預かっている」というよりは、「110円という販売価格の内訳表示」と考えるほうが本質に近い、ということです。
つまり「消費税=消費者の税金」という言い方は、制度上は正確ではありません。
あくまで、事業者に課される税である、という理解が正しいということです。
2.「預かった消費税を国に納めている」という説明は正確では
次によくある誤解が「お店はお客様から消費税をいったん預かって、あとから国に納めている」という表現です。
これも現場では当たり前のように語られますが、厳密には間違いです。
実際には、消費税というのは「価格の一部」という扱いです。
つまり、110円なら110円で売っているだけであり、その110円の中から、法律に基づいた計算方法で事業者が消費税額を確定し、納めているという構造です。
ここで重要なのは、「お客様から『税金』として預かったお金を、そのまま横流ししているわけではない」ということです。
預かり金ではないので、厳密にいうと「お客様のものを国に渡している」のではありません。
あくまで売上の一部として受け取った金額の中から、事業者が自分の税金として納めている、という整理になります。
これが本当の意味での「間接税」ではないと言われる理由です。
本来の典型的な「預かり型の税金」は、例えば温泉の入湯税のようなものです。宿や施設側が利用者から特定の税額を徴収し、それを自治体に納める。これは制度として「特別徴収義務者」という位置づけが明確にあります。
一方で消費税には、その「特別徴収義務者」という考え方は入っていません。
つまり制度の設計自体が異なるのに、「消費者から預かったものを納める税です」というイメージだけが独り歩きした形になっている。それが現在の「消費税はあなたが払っている税金」という一般的なイメージを強くしてしまった背景です。
要するに、「消費税は預かり金です」という説明は、法的にも制度的にも整理された公式の定義ではなく、広報上・印象上の言い回しによって定着した”感覚的な理解”にすぎない、ということです。
3.消費税の計算構造が、人件費を圧迫し、正社員を減らす方向に
ここからは、中小企業の経営現場で特に重いテーマです。
消費税の計算式は「売上にかかる消費税」から「仕入や経費にかかる消費税(控除対象分)」を差し引いて納税額を決める形になっています。
問題は、人件費(給与・社会保険料など)はこの「控除対象」にならないという点です。
つまりどういうことかというと、企業が人件費をかければかけるほど、控除できる消費税額は増えない。
裏を返すと、人件費は消費税の面ではコスト圧縮のメリットにならない。
一方で、業務を社員ではなく外部委託(外注・業務委託・派遣等)にすると、その外注費には消費税がかかっているため「控除対象」になります。結果として納める消費税額が下がる方向に働きます。
これが何を意味するか。
・正社員を抱える:給与という「非課税のコスト」が増えるだけで、消費税計算上の控除メリットはない
・外注・非正規・業務委託に切り替える:外注費は「課税仕入れ」になるので控除対象となり、消費税の負担が軽くなる
つまり、制度上まっすぐ読むと「人を直接雇うより、外に出したほうが税コスト的には有利」という強いインセンティブが生まれるわけです。
私は日々、中小企業の現場で「人を正社員で雇いたいが、固定費としての人件費が怖い」「それなら請負の形にしたほうが安全ではないか」という相談を受けます。
これは単なる経営者の“ケチ”ではなく、制度そのものが押し出している方向性なのです。
そしてこの流れは、長期的には正社員の減少、不安定雇用の拡大、可処分所得の不安定化につながります。
結果として、社会的には結婚・出産・子育てに踏み出せない人が増える。
これは現場感としても実際に起きている話であり、少子化の背景の一部として無視できない要素です。
つまり、消費税というのは単に「ものを買うときの税」ではなく、雇用の形や所得水準、ひいては家計の将来設計にまで影響を与える設計になっているということです。
4.「消費税」という名前自体が、実態をぼかしている
最後に名前の問題です。制度の名称が現場の理解を大きく左右している、という話です。
もともとこの税は「売上税」という名前で導入されかけた時期がありました。これは事業者の取引(売上)に課税する、というイメージに近い名前です。
ただし、事業者側の反発が非常に強く、当時は導入が見送られました。
その後、名称が「消費税」という表現に変わります。「売上」に税金がかかると言われれば経営者は反発しますが、「消費」に税金がかかると言われると、消費者に負担感の矛先が移ります。
心理的には「事業者の税」から「国民全員の税」にイメージがすり替わるわけです。
しかし中身は、前述のとおり「事業者が納税義務者である税」であり、「人件費には控除メリットがなく、外注には控除メリットがある」という、企業行動に強烈な影響を与える税でもあります。
つまり名前の付け方自体が、制度の本質(=企業側の負担・構造的な圧力)を目立たせない方向で機能している側面は確かにある、ということです。
まとめ:本当の論点は「負担の押し付け先」を誰にするか
では結局、消費税は誰が負担しているのか。この問いこそが、経営者・フリーランス・個人事業主が最も冷静に考えるべきテーマです。
消費税率が上がったとき、その負担増を誰が引き受けるかは、法律で自動的に決まるものではありません。
企業側の価格戦略・交渉力・立場によって変わります。大きく分けると次の3パターンです。
お客様(エンドユーザー)に転嫁する
値上げという形で最終価格に上乗せする。大企業はこの対応を比較的取りやすい。
自社でかぶる
販売価格は据え置きにして粗利を削る。中小・零細はこのパターンが多く、結果として体力を削られやすい。
仕入れ先・外注先に押し付ける
「うちも厳しいから」と仕入れ価格の引き下げを要請し、相手側の利益を圧縮する。
つまり、消費税の負担は「法的に決められている」のではなく「どこにしわ寄せするかの交渉」で決まっているのが実態です。
ここを理解していないと、「なぜうちだけ利益が残らないのか」「なぜ人が採れないのか」「なぜ社員が定着しないのか」という問いに対して、いつまでも感覚論で対処してしまいます。
特に中小企業の場合、「価格にちゃんと転嫁する」「人件費を安売りしない」「外注化の是非を本当に会社の戦略として判断する」という視点なしでは、じわじわと体力を奪われます。
これは資金繰りや金融交渉にも直結していく話です。
結論として、消費税は「ただ支払っている税金」という理解で済ませていいものではありません。
- ・法的な納税義務者は誰なのか
- ・どういう構造で会社の負担が決まっているのか
- ・その負担は誰に押し付けている(押し付けられている)のか
ここを経営サイドが把握していないと、本来守れるはずの利益・雇用・将来が、静かに削られ続けます。



