水資源開発と地盤環境問題に取り組む地下水調査のプロ
石塚学
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水資源開発と地盤環境問題に取り組む地下水調査のプロ
石塚学
#chapter1
「自然災害が頻発する近年、ライフラインの根幹をなす『命の水』を災害時に確保することが急務の課題となっています。その解決策として注目されているのが地下水源(井戸)。一部または全部を組入れることで、大きな防災効果が得られます」と語るのは、地下水の総合コンサルタントとして国からも調査・解析を依頼される「アクアジオテクノ」代表取締役の石塚学さん。
2011年の東日本大震災の井戸被害調査を東北4県(青森・岩手・宮城・福島)で実施した結果、地震で機能を失った井戸は全調査井戸数234本中5本、被害発生率は2.1%、また、2016年の熊本地震では全調査井戸数161本中4本、被害発生率は2.5%でした。どちらも大変低い被害率だったことから、改めて井戸が地震に強い安定的な水源であることが確認され、地下水が見直されるようになりました。
「特に災害対策の重要な拠点となる収容避難場所、医療施設等には、水供給施設として防災井戸と共に揚水ポンプ用の非常用発電設備を備えることで、トイレ用水などの生活用水が利用可能となり、災害後の公衆衛生を確保するうえで極めて有効です」と石塚さん。
さらに災害時だけでなく、ふだんから使用するのが最大の防災対策。費用対効果も期待できます。ふだんから井戸を使用していた宮城県の「国立病院機構水戸医療センター」では、東日本大震災で周辺は約14日間断水しましたが、水が利用できたため多数の患者を受け入れることが可能だったそうです。
「弊社 は1992年の創業以来、地下水や温泉に関する水源開発の可能性について各種調査・検討を科学的に行った上で井戸掘削を行ってきました。今後も行政をはじめ、病院やホテル、工場、農業組合、魚の養殖組合など、水源が必要な多くの方々にご利用いただきたいと思っています」
#chapter2
石塚さんは大学の卒業論文で、地下水研究で権威のある山口久之助先生に師事。地下水の環境に同じものがないことに面白さを感じて研究に夢中になり、さく井業界の会社へ就職しました。技術者として約13年間働く中で、調査・解析を科学的に極めたいという思いが募り独立。1992年4月に「アクア(現・アクアジオテクノ)」を設立しました。
「技術が進歩した現在は、水文調査や空中写真による線状構造解析などの科学的な各種調査・解析を通じて、地下水や温泉を含む水理地質構造をほぼ確実に予測できるようになりました。計画地では、どのくらい掘れば、どんな水質の地下水が、どのくらい採水できるか、ほぼ知ることができます」と石塚さん。
アクアジオテクノでは、水源開発の事前調査だけでなく、さく井工事の設計、施工、管理までトータルで対応しています。「井戸は目詰りによる能力低下や、設備の腐食などで劣化します。けれども、人が定期健診を受けて病気の早期発見・早期治療へとつながるように、井戸も定期的にチェックをし、早い段階で問題箇所の修復をすれば長持ちしますよ」
井戸の寿命で新しく掘ることになっても、メンテナンス時のカルテを見直すことで設備を改善し、より良い井戸を作れるとか。一方、使えなくなった井戸は、地上の汚れた水が流れ込んできれいな地下水脈を汚染することもあるので、きちんと廃止井処理をすることも大切だそうです。
#chapter3
「地下水と言えば、地盤沈下など自然に悪影響を及ぼすものなど、いまだに誤った認識を持つ方もいらっしゃいます」と残念そうに話す石塚さん。「確かにかつて、限界を超える水量をくみ上げてしまい地盤に影響が出た例もあります。しかし、科学的判断で地下水の能力を評価しコントロールができるようになった現在では、それも過去の話だ」と言います。
「地下水はもともと雨水なので、供給量を超えないようなルールさえ作れば永続的に使用できます。何より、自然から生み出される人にも地球にも優しい循環資源です。地下に浸透する過程でろ過されるので、水質が良いことも多いんですよ。また、地上の温度変化に左右されにくいため、夏は冷たく、冬は温か。川の水に比べて加熱・冷却にかかる費用や排出する二酸化炭素が少なくて済むことも特徴です」
ほかにも、力のない子どもでもくめるような手押しポンプが開発されるなど設備の性能も上がり、井戸は以前に比べて利用しやすくなっています。そんなメリットの多い地下水の素晴らしさを、石塚さんは世間に広めたいと考えています。
近年では、同業者や水道事業関係者、地方自治体などへの講習会も実施。業界全体の意識と知識の向上にも尽力しています。学生の頃から40年以上培ってきた地下水・地盤調査の知見と、井戸設置などの技術を生かし、「将来は、さく井の設計指針といった地下水のプロのためのマニュアルを作って後世に残したい」と夢を語りました。
(取材年月:2021年7月)
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Profile
水資源開発と地盤環境問題に取り組む地下水調査のプロ
石塚学プロ
地下水の総合コンサルタント
株式会社アクアジオテクノ
地下水や温泉を科学的に調査・解析。高い技術や豊富な知識・実績を誇り、国から依頼を受けるほど。調査・設計から各種さく井工事の施工・管理・廃井までトータルマネージメントを行い、気軽に相談もできる。
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