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良い住宅は、新しい住宅ではありません。

テーマ:広島家づくり

―流行の先にある住まいの本質―


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良い住宅は、新しい住宅ではありません。

それでも私たちは、新しい住宅に価値があると信じてきました。
新しく建てられたこと、新しい設備が備わっていること、新しいかたちであること。
新しさは、住宅の価値として当然のように語られてきました。

しかし住宅は、本来、数十年という時間を受け止める存在です。
数年単位で移り変わる流行とは、異なる時間の中にあります。
住宅の価値は、新しさだけで測られるものではありません。

住宅には流行がある

私が建築を学び始めた1990年代から現在に至るまで、住宅には確かに流行がありました。
外観のかたち、素材の選択、間取りの考え方。
それらは社会の変化とともに移り変わってきました。
住宅は常に、新しい価値観を反映する存在でした。

1990年代には、造形的で象徴性の強い住宅が注目されました。
白い壁やコンクリート打ち放しの空間は、住宅を個人の思想の表現として位置づけました。
住宅は、住まいであると同時に、時代の空気をかたちにするものでした。

2000年代に入ると、自然素材を用いた住宅が広がります。
無垢材の床や塗り壁は、触覚的な心地よさを空間にもたらしました。
住宅は主張するものから、暮らしに寄り添うものへと変わっていきました。

2010年代には、住宅の価値は性能へと向かいます。
耐震性や断熱性などの基準は、住宅を安心して暮らすための基盤として位置づけました。
住宅は生命を守る存在として語られるようになります。

そして現在、住宅はライフスタイルの表現として語られています。
空間は個人の価値観を映し出し、住宅は生き方そのものと結びついています。
住宅は、社会とともに変化し続けています。

なぜ住宅は変わり続けるのか

住宅の変化は、社会の変化と重なっています。
経済、技術、制度、そして人々の意識が、住宅のあり方に影響を与えてきました。
住宅は社会の中でつくられる存在です。

同時に、住宅は産業の中にもあります。
新しい提案は更新を促し、新しい基準は過去の住宅を古いものとしていきます。
変化は自然な流れであると同時に、仕組みの中でも起きています。

経済が成長していた時代には、それは合理的でした。
新しく建てることは、社会の活力につながっていました。
住宅は更新されることで価値を持っていました。

しかし、これからの時代は同じではありません。
社会は拡大から持続へと向かい、住宅の意味も変わり始めています。
住宅は、消費され続ける前提を見直す時期に来ています。

住宅は本当に、流行によって更新され続ける存在なのでしょうか。
この問いは、住宅の本質を静かに浮かび上がらせます。

住宅は消費財なのか

多くの場合、住宅は商品として扱われます。
性能や設備が示され、比較され、選択されます。
住宅は購入される対象として提示されます。

しかし住宅は、本来、時間の中で意味を持つ存在です。
日々の暮らしを受け止め、記憶を蓄積していきます。

流行は外から与えられます。
しかし住まいは、住まい手によって内側から整えられていきます。
そこには異なる時間があります。

住宅を消費財として扱うのか。
それとも時間を受け止める基盤として扱うのか。
その違いは、空間の価値そのものを変えていきます。

空間を読み、楽しむということ

自分が設計した住宅でなくても、空間を使いこなしている人を見ることがあります。
その人は光の入り方を知り、居心地のよい場所を自然に見つけています。
そこには空間との関係があります。

住宅は完成した瞬間に完成するのではありません。
住まい手によって整えられ、関係が築かれていきます。
住宅は住まい手とともに存在します。

良い住宅とは、すべてが与えられた住宅ではありません。
住まい手が空間を読み取り、居場所を見つけることができる住宅です。
そこには余白があります。

良い住宅は、空間を読み楽しめる住宅です。
住宅の価値は、住まい手との関係の中で生まれます。

住宅を整えるということ

住宅は、買うためのものではなく、整えるためのものです。
暮らしを整えることが、空間の方向を導きます。
住宅は内側から生まれます。

その過程を通して、住宅は意味を持ちはじめます。
流行は過ぎ去りますが、整えられた空間は残ります。
住宅は時間とともに深まっていきます。

これからの時代、住宅は消費財ではなく、文化として歩む存在です。
良い住宅は、新しい住宅ではありません。
良い住宅は、空間を読み楽しめる住宅です。

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ねぎもとあやこ
専門家

ねぎもとあやこ(一級建築士)

建築設計 LEFTHANDS 一級建築士事務所

木造住宅や古民家再生の経験を生かし、環境や多様な暮らし方にあう計画を提案。日本の自然環境にある木材を生かし、構造・意匠・素材の木のリズムでととのえ、安心感と温もりに満ちた住空間を実現します。

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