新築住宅➀ ~ 二世帯住宅 ~
名前は、空間の意味を決めている
家や建築をつくるとき、
私たちは無意識に空間へ名前を与えています。
居間、寝室、書斎、キッチン、玄関。
そして現代では、LDKという言葉が当たり前のように使われています。
これらの名称は、空間の機能を整理し、
設計や生活を合理的に進めるためのものです。
けれど、名前は単なる機能の説明だけではありません。
名前は、その空間の使われ方を導き、
そこに流れる時間の質を決めていきます。
どのような名前で呼ぶかによって、
その場所は、単なる部屋にもなり、
特別な場所にもなります。
かつて建築には「名前」がありました
昔の日本の建築には、
機能とは別の名前が与えられていました。
○○庵(あん)
○○荘(そう)
○○亭(てい)
それらは、用途を説明する言葉ではなく、
その場所の性質や、そこに流れる時間を表す名前でした。
庵とは、本来は小さな草庵のことですが、
そこには静かに思索する場所、
自然とともにある時間という意味が含まれています。
荘という言葉には、
人が集まり、滞在し、
時間を重ねていく場所という響きがあります。
名前は、機能ではなく、
「どのように存在する場所なのか」を示していました。
建築は、部屋の集合ではなく、
意味を持つ場所の集まりだったのです。
現代建築の名前は、どこから来ているのか
一方で、現代のマンションや賃貸住宅には、
さまざまな名前がつけられています。
○○レジデンス
○○コート
○○ハイツ
○○ガーデン
けれど、その名前の多くは、
その場所の風景や時間と結びついているとは限りません。
むしろ、
響きのよさや、イメージによって選ばれていることも少なくありません。
また、建物の中に入ると、
そこにあるのはLDK、洋室、サービスルームといった
機能によって整理された空間です。
それは合理的である一方、
その場所固有の意味を持ちにくい構成でもあります。
名前が機能だけになるとき、
空間は均質化され、
どこか交換可能なものになっていきます。
部屋に名前をつけるという行為
けれど本来、
空間の名前は、自分でつけることができます。
例えば、
光がよく入る窓辺の場所を「光の間」と呼ぶこと。
本を読むことが多い小さな場所を「読書庵」と呼ぶこと。
庭とつながる場所を「風の間」と呼ぶこと。
それは公式な名称である必要はありません。
自分たちがそう呼び、
そう使うことで、
その空間は少しずつ、その名前にふさわしい場所になっていきます。
名前は、使い方を固定するものではなく、
むしろ、使い方を広げていきます。
そこは単なるLDKではなく、
家族が集まり、考え、休み、時間を重ねる場所になります。
名前が、空間と暮らしを育てていく
名前をつけるという行為は、
空間との関係を結ぶことでもあります。
それは、与えられた空間に住むのではなく、
自分たちの場所をつくるということです。
建築は、完成した瞬間に終わるものではなく、
そこに住む人の時間によって育っていきます。
名前は、その始まりになります。
最初は小さな呼び名でも、
日々の暮らしのなかで繰り返し呼ばれることで、
その空間は固有の意味を持ちはじめます。
やがてそれは、
他のどこにもない場所になります。
空間を、機能から解放する
LDKという名前は、
リビング・ダイニング・キッチンという機能を示しています。
けれど、実際の暮らしは、
その言葉よりもずっと豊かです。
そこは食事をする場所であり、
語り合う場所であり、
考える場所であり、
ただ静かに過ごす場所でもあります。
ひとつの名前では、
言い表せない時間が流れています。
だからこそ、
空間を機能の名前から少し解放し、
自分たちの言葉で呼んでみること。
それは、建築を取り戻す行為でもあります。
名前から始まる設計
レフトハンズでは、
間取りや面積だけでなく、
その場所がどのような存在になるのかを考えながら設計しています。
そこは何をする部屋なのか、ではなく、
どのような時間が流れる場所なのか。
どのような光が入り、
どのような風が通り、
どのような名前で呼ばれる場所になるのか。
名前は、設計のあとに与えられるものではなく、
設計のはじまりにあるものかもしれません。
まだ名前のない空間に、
言葉を与え、かたちを与えていくこと。
そんな空間を、一緒につくりませんか。




