心地よい場所を探すこと
最近、「まちのなかで木をつかう」という言葉を耳にする機会が増えました。
木造のビル、木質化された公共施設、木を感じる内装。
それは流行というより、長い時間をかけて積み重なってきた背景が、
ようやく表にあらわれてきた結果のように思います。
国のながれ|木を使うことが選択肢として戻ってきた
日本は国土の多くを森林が占める国です。
戦後に植えられた人工林は、いま使われる時期を迎えています。
木は、植え、育て、使い、また植えることで循環します。
ところが長いあいだ、まちの建築ではその循環が途切れてきました。
そこで国は、公共建築物等木材利用促進法をはじめ、
都市部で木を使うための制度や技術の整備を進めてきました。
木を使うことは特別な取り組みではなく、 本来あった選択肢を、もう一度取り戻すこと
でもあります。
やまの状況|切らないことが守ることではない
木を切ることに、どこか後ろめたさを感じる人もいるかもしれません。
けれど山では、 使われない木が増え、 光が入らず、 下草が育たず、 土が弱っていくという状況が起きています。
木は、切られて、使われて、また植えられてこそ、山として保たれます。
循環が止まることのほうが、山にとっては大きな問題なのです。
マンションでは、どんなことが考えられるのか
都市に暮らす多くの人にとって、 住まいはマンションというコンクリートの建物です。
マンションで木を使う、と聞くと、 雰囲気づくりやイメージの話に寄りがちですが
ここで立ち止まって考えたいのは、どんな木を使うのかという点です。
輸入材を使って木の空間をつくっても、 それは日本の山の循環にはつながりません。
私たちが目を向けたいのは、 国産材、そしてできるだけ身近な地域で育った木です。
床、天井、建具、壁、家具。 すべてを木にする必要はありません。
ほんの一部でも木を使うこと。
その選択が、 それに合わせた部材を考える人を生み、
山とまちのあいだにある流通や仕事を、少しずつ動かしていきます。
広島の木を、今の暮らしへ読み替える
私たちの拠点である広島には、
杉やヒノキといった、長く建築に使われてきた木があります。
それぞれに、 硬さ、香り、調湿性、経年変化といった特性があり、
万能な材料というわけではありません。
だからこそ、 その特性を理解し、
今の暮らし方に合うかたちへと読み替え、デザインしていくことが必要になります。
木は、人が使い続けてきた材料
木は、 人が発明した素材ではありません。
古代から、 人が使い続け、選び続けてきた材料です。
循環の中で残り、 暮らしの中で磨かれてきた。
時間に耐えてきた知恵の塊だからこそ、 いまの住まいにも、静かに力を発揮します。
マンションの一室で木を使うことは、 山の循環に参加することでもあり、
これからの暮らしを選び直す行為でもあります。
大きなことを一気に変えなくてもいい。
ほんの少し、 住まいの中で木を使うことから、 流れは、確かに変わっていくと考えています。



