人は環境を選び・変えれる
日本人は「ルールがある」と思うと、それをとても気にします。
そしてもうひとつ、私たちが強く気にしているものがあります。
それは 世の中の“普通” です。
みんなと同じであること。間違っていないこと。
家づくりも例外ではありません。
「一般的には」「普通はこうなので」と言われると、そうしなければいけないような気がしてしまう。
その背景には、知らず知らずのうちに働く 同調圧力 があるように思います。
では、住宅は誰のルールでつくられているのでしょうか。
確かに、建築基準法など最低限の法律はあります。
けれど、多くの部分は法律ではなく、“普通”らしく見える選択 や お金 によって形づくられています。
広さ、設備、素材、施工方法。
これらは「みんなこうしている」という安心と、予算との兼ね合いで決まっていくのです。
では、もしお金という制限も、世間の“普通”という基準もなかったとしたら——
私たちは今と同じ住まいを選んでいるでしょうか?
決められた間取り、決められた暮らし方、決められた価値観。
それは本当に自分に必要だから選んでいるのか。
それとも、「普通に合わせておけば間違いない」と思う、ただの 慣れ なのか。
安心を求めるのか。
変化を求めるのか。
そのバランスをとるのか。
家は、本来もっと自由で、もっといろんな使い方があってよいはずです。
家族のステージにあわせて住み替える選択もある。
人口が減り、ひとりが持つ住まいが広くなっている今こそ、空間の使い方に新しい提案ができるはずです。
たとえば、もう少し人を招き入れるスペースをつくる。
余った空間を誰かと共有する。
地域とつながる場所にする。
「普通」に縛られた家を、もっと楽しむ家へ。
そうした 別の使い方・楽しみ方を提案し、暮らしを豊かにする方法を考えること。
それが本来、建築士の役割ではないでしょうか。



