【マイ・スケールを持とう】 家づくりのすすめ4

海岸に、製材されたままの流木が流れ着いていました。
波にもまれて角が削られ、木目がはっきりとあらわになっていました。
いつも何気なく「木目」と呼んでいるその模様の中に、まったく別の世界があるように感じて、思わず一枚、写真を撮りました。
木目とは年輪。
木が生きてきた時間そのものが描かれたデザインです。
日本の建築は、その“時間の模様”を取り込みながら、長い歴史の中で木を使ってきました。
それは意匠だけではなく、使い方という実学に根ざした知恵でもあります。
先日、フィンランドのウッドプログラム(木のデザインを学ぶプログラム)に参加している姪と話をしました。
彼女は、木のデザインをスケッチするときに、ある注意を指導者から受けていると言いました。
「形だけ描いているとダメ。木目を入れなさい」と。
木目を描くと“力の流れ”をデザインできるからだと。
なるほど。
木目は模様ではなく、構造を示す線でもあるのだと腑に落ちました。
建築の図面では、材として木を表すため、細かい木目までは描きません。
しかし現場では、大工さんが木を加工するとき、必ず木目を見て、方向や使い方を判断しています。
今の日本の建築は分業が進み、設計士は材木屋さんや構造設計士、プレカット業者に、多くを任せてしまいがちです。
でも、任せる前に、設計する側が木を理解していなくてはいけない。
その重要性を改めて感じました。
木材には、山に立っていたときと同じように“上下”があります。
その方向性は、最低限守られるべきもの。
そうした基礎的な理解が薄れていくと、
「日本の方が木について詳しい」
という思い込みが、いつか覆される日がくるかもしれません。



