難治性片頭痛
この度の西日本豪雨により被災された皆様ならびにそのご家族の皆様に
心よりお見舞い申し上げます
皆様の安全と被災地の一日も早い復興を心より お祈り申し上げます
本日はとても珍しい一次性頭痛であるSUNCT (サンクト)について記事を書いてみます。
一次性頭痛は画像や血液データなどで異常が指摘できない頭痛です
これを器質的異常がない頭痛ともいいます。
日本人の女性の五人にひとりといわれる片頭痛や、緊張型頭痛などの頭痛を一次性頭痛といいます。
「器質的異常がないから軽い頭痛でしょ?」というのは誤り。
片頭痛は頭痛発作のためにお仕事を休んだり家事に支障をきたします。
日本人の一万人しか罹患していないまれな群発頭痛も一次性頭痛。
この群発頭痛は夜間ねてるときに突然襲ってくる頭痛。
別名「自殺性頭痛」とも。
痛みのため自殺未遂をはかるほどの頭痛といわれてます。
SUNCT(サンクト)
今回、紹介しますのはその群発頭痛に似ているSUNCTです。
群発頭痛は目の中をえぐられるような痛みが15分から3時間くらい続く頭痛。
それに対しSUNCTは1から600秒間続く頭痛です。
「たった10分間なんだ。」と思われるかたもいらっしゃいますが
この痛みは目をキリで刺されるような痛み。
SUNCT(サンクト)とは結膜充血および流涙を伴う短時間持続性片側神経痛様頭痛発作の略語。
英語ではShort-lasting Unilateral Neuralgiform headache attacks with Conjunctival injection and Tearingと書きます。
結膜充血および流涙を伴う短時間持続性片側神経痛様頭痛発作が正式名称。
こんな長い病名って、変ですがあるんです。
SUNCTの頻度
不明です!
かなり少ないと思います。
私のクリニックでも年に7名から8名がSUNCTを疑います。
そのなかで診断にいたるかたが1名いるかいないかです。
当院の群発頭痛の患者さんが年に50名ですので、ざっと1/50から1/25くらい。
つまり日本人の200名から400名くらいがSUNCTではないかと推測してます。
○診断基準
A. BからDをみたす発作が20回以上ある。
B. 中等度から重度の一側性の頭痛が、眼窩部、眼窩上部、側頭部またはそのほかの三叉神経支配領域に単発性あるいは多発性の刺痛/鋸歯状パターンとして1から600秒間続く。
C. 頭痛と同側にすくなくとも以下の頭部自律神経症状あるいは徴候の一項目を伴う。
1.結膜充血または流涙(あるいはその両方)
2.鼻閉または鼻漏(あるいはその両方)
3.眼瞼浮腫
4.前額部および顔面の発汗
5.前額部および顔面の紅潮
6.耳閉感
7.縮瞳または眼瞼下垂(あるいはその両方)
D. 発作時期の半分以上においては、発作の頻度が一日に一回以上。
E. ほかに最適なICHD-3の診断がない。
これが診断基準です。
この難しい診断基準ですが、頭痛専門医は約1分間の問診でこの病気を疑います。
先日24歳の男性が受診されました。
過去にも何度か年に一回くらい同様の頭痛あり。
こんかいも右目をえぐられる感じの痛み。
当院の問診表では持続時間「瞬間」と記載。
「瞬間えぐられる痛み。」
持続時間を聞きました。
どれくらい続くのですか?
数秒間でしょうか?数分間でしょうか?
患者さんはそんなのどうでもいいじゃないと思われたかも。
「約10分間です。」
(600秒間)診断基準の秒数に変換。
頭痛時に、結膜充血、鼻汁、流涙をともなうとのこと。
頭部MRIで脳腫瘍などないことを確認して(数年前、同様の症状で脳腫瘍だったことあります。)、患者さんにSUNCTであることを紙に書きながら説明しました。
治療
いまのところあまりありませんが、抗てんかん薬のラミクタール(ラモトリギン)が効果あります。
ラミクタールを25mgから処方して二週間目から50mgに増量したところ頭痛がだんだん軽くなり消失。