広島で頭痛外来
わたしどもは、広島で脳神経を中心に内科疾患を診療しております。
トリプタンの副作用と問題点
先日、片頭痛にはトリプタンという有効なお薬が医師の処方のもと使用できることをブログに書いてみました。
今回は、そのトリプタンの副作用と問題点について書いてみます。
現在国内で使用されているトリプタンは5種類あります。
(スマトリプタン・ゾルミトリプタン・エレトリプタン・リザトリプタン・ナラトリプタン)
これらは7種類の経口薬と1種類の点鼻薬および2種類の注射薬があります。
片頭痛発作はセロトニンとの関連性が強く、セロトニンを投与することで頭痛が軽快します。
トリプタンはセロトニン受容体サブタイプの5-HT1B/1D受容体に選択的に作用する作動薬です。血管の壁にある5-H1IB受容体という部位に作用して、拡張した硬膜血管を収縮させます。
同時に三叉神経の終末の5-HT1D受容体という部位にも作用します。
その結果、終末からの神経原性の炎症を惹起するカルシトニン遺伝子関連ペプチド(calcitonin generelated peptide:CGRP)の放出を抑制するといわれます。
過敏になっている三叉神経血管系を沈静化させます。
これが、片頭痛発作を頓挫させるメカニズムです。
トリプタンの副作用について
片頭痛の特効薬としてトリプタン製剤が使われ始め20年以上が経ちました。
いままで幸に重篤な副作用の報告はほとんどありません。
安全性が高い薬剤としても評価されております。
トリプタンの副作用として多いものは
トリプタン感覚です!
トリプタン感覚とは頸・胸・のど・肩の締め付け感や圧迫感そして息苦しさのことを指します。
この感覚は、服用後20~30分で出現することが多く10分から2~3時間持続して自然に消失します。
この副作用は狭心症や心筋梗塞の症状に若干似ていますが、実際は心臓の異常ではありません。
食道の平滑筋の運動亢進や肺動脈に対する影響、骨格筋のエネルギー代謝の異常、痛感受性の増加などが原因と考えられています
つまり、トリプタン感覚が出現しても心臓発作に至ったり、呼吸不全になったりすることはありません。
その他の副作用
眠気と倦怠感です。
脱力感をいわれるかたも多いです。
*胸部症状は冠動脈の虚血ではないと言われてはいますが、トリプタン系薬剤は血管作動薬であり、拡張した脳血管に作用しますから、冠動脈にも少なからずとも作用をもちます。
でハイリスクの患者には禁忌(きんき)です。
狭心強や心筋梗塞の既往のかた。
脳血管障害の既往のかた、もやもや病などの脳血管狭窄があるかたはトリプタン使用はできません。
これらの副作用を軽減する方法
トリプタンの種類を変える。
お薬を飲むタイミングを変える。
トリプタンを飲む量を変える。半錠のみ飲むなど。
片頭痛発作にトリプタンは効果ある。
特効薬といわれていますが、数%位の患者さんには片頭痛発作であっても効果がない方がいらっしゃいます。
トリプタンノンレスポンダーと呼びますが、一カ月に10日以上を三か月もトリプタンを飲んでる患者さんは薬剤の使用過多による頭痛になりますので、この場合もトリプタンが効果なくなります。
トリプタン製剤の薬価の問題
トリプタン製剤は薬価が高いといわれております。
トリプタンの経口薬・点鼻薬はいずれも1錠(1個)800~1000円前後の薬価になります。
3割負担の人でも、1錠(1個)250~300円程度の自己負担額となります。
この経済的な面から考えると、安全性の高いトリプタン製剤でなく、市販の鎮痛薬で充分満足できる程度の片頭痛であれば、必ずしも無理にトリプタンを使う必要はありません。
実際にのみ比べてみて、費用対効果を検討してみることも大切です。
また、多くのトリプタンにはジェネリック医薬品が発売されています。
先行品とのみ比べてみて、特に効果やのみやすさに差がなければ、ジェネリック医薬品の使用も選択肢といえます。