広島市中区いのうえ内科脳神経クリニックにおける頭痛患者さんの統計
ブログなどでも片頭痛の遺伝性について書いております。
一般に、お母さんが片頭痛だと、娘さんの約70%に
息子さんの約30%に片頭痛が出現するといわれております。
男性の片頭痛の罹患率は女性の四分の一、五分の一といわれておりますので
お子さんにはほぼ、70%の罹患率といわれます。
人種の違い、統計の解析のしかたで若干の差があります。
また、片頭痛でも前兆がある場合とそうでない場合では、前兆がある場合のほうが圧倒的に遺伝性要因が強いようです。
お父さんが片頭痛だと、娘さん、息子さん、それぞれ約50%に片頭痛が出現するといわれております。
また、隔世遺伝(かくせいいでん)のように遺伝することもあります。
ご両親は片頭痛はもっていないのに、おばあさんは片頭痛もちだったなどです。
ただ、ほとんどの片頭痛はメンデルの遺伝形式による一つの遺伝要因から遺伝することはありません。
いくつかの遺伝要因から遺伝します。
多くのアルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患も同じような遺伝形式です。
その遺伝要因が複数あるものを多因子遺伝性疾患(たいんしいでんせいしっかん)と呼びます。
多因子遺伝性疾患は、一般に病気の発症に環境による要因などの後天性の要素がふかく関連します。
じつは、ほとんどの糖尿病、高血圧、アレルギー疾患、がんなども多因子遺伝性疾患なのです。
生活習慣病といわれているものも、実は遺伝要因の差によって、不摂生しても病気にならない人がいたり、きちんと生活していても病気になるひとがいるのです。
片頭痛をもった親から生まれた一卵性双生児(いちらんせいそうせいじ)の場合、
もし、遺伝要因のみであれば、ふたごのお子様のふたりとも片頭痛になるわけでるが、
実際は、必ずしも二人とも片頭痛になるわけではありません。
つまり、後天性要素や誘発因子などがかなり関係しているのが片頭痛なのです。
ただ、例外的にメンデルの遺伝形式による片頭痛もあります。
それは、
家族性片麻痺性片頭痛(FHMと略します)という疾患があります。
片麻痺性片頭痛というまれな病気があり、それが家族性に発症します。
片麻痺性片頭痛は頭痛のまえに、半身の脱力を生じたり、言葉がでなくなったり、呂律困難になったりします。
その後で、頭痛が起こります。
この頭痛の場合、第二親等以内に必ず、同様の症状をもっている方がいます。
つまり、遺伝要因はただ一つの遺伝子なのです。
現在まで、明らかにされているのはFHM1、FHM2、FHM3の三つです。(かなり専門的になりました)
1.FHM1 CACNA1A(カクナワンエーとよびます)の遺伝子変異です。
第17番染色体にある、カルシウムチャンネルの遺伝子をコードしているCACNA1Aの変異が原因です。
2.FHM2 ATP1A2(エイティーピーワンエイツーとよびます)の遺伝子変異です。
第1番染色体にある、K+/Na+-ATPase の遺伝子をコードしているATP1A2の変異が原因です。
3.FHM3 SCN1A遺伝子の変異です。
第2番染色体にある、ナトリウムチャンネルの遺伝子をコードしているSCN1Aの変異が原因です。
日本では、非常にめずらしい疾患と思われますが、発作時に、意識消失をきたしたり、発熱や髄液細胞数が増えるので大学病院レベルでも、てんかん発作や髄膜炎と誤診してしまう疾患です。
しかし、問診により、家族歴が聞き出せれたら診断は容易です。