片頭痛治療薬の授乳時の(授乳された小児に対する)リスク
頭痛と生理
生理前になると頭痛がくるというかたの多くは片頭痛といわれております。生理に関連する頭痛のことを月経関連頭痛とよんでおります。学会では生理に関連した頭痛の約7割のかたが片頭痛だろうといっております。このときの頭痛は生理痛がいっしょにきていたり、生理痛の前におこったりするので生理による頭痛だろうと思われ、片頭痛発作が生理によりでてると思われるかたは意外に少ないようです。
月経関連頭痛の誘因(ゆういん)
女性ホルモンが排卵期(はいらんき)から生理にかけて変化するのが頭痛が出現する誘因といわれております。女性ホルモンには大きく二つの重要なホルモンがあり、一つは卵子(らんし)をそだてるエストロゲンと、もう一つは妊娠や出産をたすける働きをするプロゲステロンというのがあります。
生理前になるとエストロゲンが少なくなり、片頭痛が誘発されるといわれております。
エストロゲンは、痛みの抑制物質でもあるので量が減ると頭痛が誘発されます。また、エストロゲンのレベルが大きく変動するのも頭痛の要因とされています。生理前以外にも排卵期もエストロゲンのレベルが非常に低くなり頭痛が誘発されます。
プロゲステロンの量が少なくなると、子宮の内膜(ないまく)から分泌されるプロスタグランジンという物質のレベルが上昇します。このプロスタグランジンが子宮を収縮させる作用があり、いわゆる生理痛といわれる下腹部の痛みや腰痛をひきおこします。またプロスタグランジンには末梢の組織の痛みにも関連しており、痛みを強めるという作用があり、これが月経関連頭痛の要因になっているといわれております。
*プロスタグランジンは子宮を収縮させはがれおちた子宮内膜を血液とともに経血(けいけつ)として体のそとに排出させます。
女性ホルモンの関係によって片頭痛は以下のように変化します。
1. 60%くらいのかたは、生理中に悪くなります。
前述した理由からです。
2. 50から60%くらいのかたは、妊娠中に改善します。
妊娠中期にはエストロゲンのレベルが非常に高くなりますが、高レベルのエストロゲンは痛みを遮断します。
3. 更年期の初期には頭痛はひどくなったり回数が多くなったりすることがよく見られます。
エストロゲンのレベルが大きく変動することで、ホットフラッシュとともに片頭痛の悪化をもたらします。
4. 閉経(へいけい)をむかえた方の、60%以上の方はよくなります。
更年期の後期からエストロゲンのレベルが低下して安定するので頭痛は改善します。
5. 子宮を摘出(てきしゅつ)した方の、60%以上の方は悪くなります。
理由の詳細は不明だと思いますが、環境や生体内の変化に弱いのが片頭痛ですので、そのためと思います。
【参考文献】
Facchinetti F et al. The association of menstrual migraine with the premenstrual syndrome.Cephalalgia.
1993;13: 422-425.
Neri I et al. Characteristics of headache at menopause: a clinico-epidemiologic study. Maturitas. 1993; 17: 31-37.