自分の居場所
トイレの改修前、神様にご挨拶をしました。
先日、長年のお付き合いがあるお客様の家で、使わなくなったトイレを物入れに変える工事を始めました。
水の流れが変わる場所を触るため、工事を始める前にご家族とお祓いの儀式を執り行いました。
お母さんは「やるべきか」と最後まで迷っていらっしゃいましたが、「せっかくだからきちんと挨拶をしよう」と決心されたのです。
お供えに用意されたのは、一瓶の純米大吟醸。その良い香りに、神主さんも「これはいい香りだ」と喜んでいらっしゃいました。
どんよりとした曇り空でしたが、儀式が始まると同時に一気に雲が切れ、すっきりと晴れ渡りました。
お母さんはこれに大変感動され、熱心に写真を撮っていらっしゃいました。
この儀式には、大切な意味があります。
海の幸、山の幸、野の幸をお供えし、神主さんに祝詞(のりと)をあげていただきます。
これは、これから手を加える場所を見守ってください、工事の安全をよろしくお願いします、と親しくお願いをするための時間です。
祝詞の声がお腹の底まで響く中、私たちも順番に「二礼二拍手一礼」を捧げます。拍手の音がきれいに響くかと少しドキドキしましたが、青空に向かってふわっと舞った紙吹雪の美しさは格別でした。
私たちの日常でも、大事な相談をしたり誰かと仲良くなったりしたい時は、食事を共にすることが多いのではないでしょうか。
神事において、お供え物を神様と一緒にいただく「直会(なおらい)」という習慣があるのも、こうしたコミュニケーションと同じなのだと感じます。
ただ形式的に祈るだけでなく、同じものを分け合うような気持ちで手を合わせる。それは、家に対して「これからよろしくお願いします」と、心を込めてお願いをするための最も自然で大切な方法なのかもしれません。
伊勢神宮のように、調理した料理をお供えする例があるのも、そうした細やかな心遣いの表れなのでしょう。
お祓いのおかげか工事中もよく晴れ、お母さんも「やって良かった」と心から喜んでくださいました。
時代と共に儀式を省略することも増えていますが、家に宿る神様や家族の歴史に対して、きちんと手を合わせる。
この丁寧な姿勢が、工事の質やお客様との信頼関係に繋がっていくのだと、改めて感じた一日でした。
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