山川製材舎 前編
目的地である製材所は、飛騨古川の住宅地の中にありました。
まず目に飛び込んできたのは、高く積み上げられた製材された材料の山です。
ナラやブナ、ホオの木など、力強い木肌を持った広葉樹の丸太がたくさん並んでいました。
製材所の中を見学させていただくと、大きな製材機が、丸太を正確な寸法に切り出していく様子は圧巻です。
及川さんの製材所に入ってくる樹は、他の製材所ではあまり買われないような、少し変わった丸太が多いそうです。
及川さんは、こうした樹をどうすればうまく活かせるのか、実際に使う家具職人や建築の材料として使えるのかを考え、製材方法を工夫したり、積極的に提案をされています。
「ナラの木が欲しい」といったざっくりとした注文ではなく、「この椅子の足に使いたい」「この部屋の天井に貼る板が欲しい」といったより具体的な使い方を聞き、それに応じた材料を提供したいという話を聞きました。
どこの山から出てきたのか、という木の出どころまで管理し把握しているという話にも、木材に対する深い責任感を感じます。
さらに、この製材所では丸太から一貫して家具を作るという取り組みをされています。
お客さんと一緒に山から出たばかりの丸太を選び、それを製材したもので家具を作るそうです。
丸太の中は想像でしかありませんが、実際に製材すると、予想外の木の表情(変な穴など)が出ることがあるといいます。
しかし、それをお客さんと共有し、「愛着の湧く個性」として活かしながら家具に仕上げていきます。
丸太選びや製材の見学、作る工程の一部を体験してもらうこともできるため、完成には乾燥期間も含めて半年ほどかかります。
ですが、お客さんも自分が選んだ丸太が家具になるのを、体験と時間とともに楽しみにしてくれて、喜んでもらえているそうです。
これは、まさに「山」と「川」を屋号に掲げる及川さんの哲学です。
山(川上)で採れた木を、製材所(川中)で適切な形に変え、家具職人(川下)やお客さんと繋ぐ、人と自然、そしてものづくりを繋ぐハブの機能を、この場所が果たしているのだと感じました。
今回の訪問は、僕自身の木材への理解を深める、非常に良い機会となりました。この製材所から生まれた木材を、また次の仕事で大切に使わせていただきたいと思っています。
やまかわ製材舎ホームページ



