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大橋正寛プロはぎふチャンが厳正なる審査をした登録専門家です

茶室と材料と天井と

大橋正寛

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テーマ:こだわり

前回、コラムで和室の天井に使う材料を探し回ったお話をしました。紆余曲折を経て、無事に「運命の竹」と出会うことができましたが、ここからが私たち職人の腕の見せ所。見つけてきた材料を、実際に天井に収めるための加工が始まります。



そしてもう一つ、これも以前のコラム「つながる」でお話しした木材の出番でもあります。

和室の天井というと、一見きれいに整った板と木材が並んでいるように見えますが、実は一つ一つの材料が微妙に異なる表情を持っています。



特に今回使うのは、おばあちゃんの茶室から受け継いだ材料と、新しく見つけてきた竹。そのままではぴったりと収まらないので、まずは個性を生かしつつ、加工していく作業から始めます。



一本一本の竹の節や太さ、曲がり具合を見ながら、カンナやノミを使って丁寧に形を整えます。まるで竹と対話するような、繊細な作業です。

特に、苦労して探し出した貴重な竹。その価値を最大限に引き出すため、一本の竹に何時間も向き合うことも珍しくありません。



天井板も同様です。表面の木目を生かしつつ、一枚一枚の板が隣り合う板と美しく連なるように、細かな調整を繰り返します。



古い材料と新しい材料が、違和感なく一つの天井として調和するように、職人の感覚が研ぎ澄まされていく瞬間です。

そんな作業の途中、お客様から「古い材料を使うと大変でしょう?新しい材料だけなら簡単だよね」というお話をいただきました。

確かに、個性のある古い材料は手間も時間もかかります。しかし、その先に生まれるものが、私たちの仕事の醍醐味です。

加工が終わると、いよいよ天井への取り付け作業です。足場を組み、一本一本の材料を丁寧に組み合わせていきます。



まるでジグソーパズルのピースをはめていくように、加工した材料が少しずつ形になっていく様子は、何度経験しても感動的なものです。



これまで別々の場所にあった材料が、一つの天井として結びつき、新たな空間を生み出していく。それは、ただモノを作るだけでなく、空間に物語を紡いでいく作業なのだと改めて感じます。



こうして完成した天井をお客様に見てもらうと、古い材料と新しい材料が違和感なく馴染んでいる様子に、大変喜んでいただけました。その笑顔を見たとき、手間はかかりましたが、やってよかったと思いました。


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大橋正寛
専門家

大橋正寛(大工、二級建築士)

ETETORU WOOD 梅津建築

大工として培った高い技術と、建築士の資格を生かし、顧客の暮らしに寄り添った住宅を提案。伝統技術「手刻み」の考え方により、木の美しさを引き出しながら、現場目線で住みやすい設計案を提示する。

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