濡れ縁
以前、コラムで竹中大工道具館の話をさせていただいたとき、「茶室の材料を扱う機会があるので、勉強のために見に来ました」と書きました。そして今回、まさにそのタイミングが来たんです。
今回の改修工事では、和室の天井に使う材料を探すことになりました。ほとんどの材料は、おばあ様が大切に使われていた茶室のものを再利用する予定です。古いものに新しい命を吹き込む、私たちもワクワクするような試みです。
ですが、解体の際にどうしても傷んでしまった部分や、少しだけ天井を足す必要があり、新しい材料を探すことに。昔ながらの茶室に使う竹は、今ではなかなか手に入りません。
地元の銘木屋さんを何軒も回りましたが、どこへ行っても「この手の材料は、今はもうほとんど扱っていなくて…」と、半ば諦めかけていました。
そんな時、とある銘木屋さんの倉庫の奥で、まるで宝探しのように材木の山をかき分け、埃を払いながら探していると…「これだ!」と直感が働きました。求めていた風合いの竹が、ひっそりと2本、見つかったのです。
「あったぞ!」と心の中で叫びました。お客様と設計士さんにも見ていただくと、お二人からも「いいね!」と太鼓判。
これで決まりかと思いきや、翌日になって設計士さんから「もう少しだけ細い竹を探してほしい」と、まさかのリクエストが。
一度決まった竹も素敵でしたが、空間全体のバランスを考えると、さらなるこだわりが必要とのことでした。再び、竹探しの旅が始まります。
最初のお店にはもう在庫がなく、他の材木屋さんも回りましたが、やはり見つかりません。
最後の望みをかけて訪れたのは、昔ながらの竹屋さん。土壁の下地などに使う竹を専門に扱っているお店です。
まさかここにも…と半信半疑で足を踏み入れると、なんとそこには、滋賀県の茅葺き屋根に使われていたという、歴史を感じる立派な竹が。
これが、まさしく求めていた太さだったのです!
ちょっとした回り道はありましたが、こうして無事に、今回の和室の天井を彩る「運命の竹」と出会うことができました。



