木と絵本と家と
今週も猛暑が続いていますね。熱中症に気をつけながら、現場での作業が続いています。以前、初めてコラムを書いたときに、僕の大切な絵本『おおきな木のおはなし』をご紹介しましたが、今回は、その絵本に出てくるような「物語」を秘めた材料たちのお話です。
今回使うのは、ただ新しい材料ではありません。以前この場所にあった離れや蔵で使われていた、たくさんの物語を宿した木材たちです。
離れでおばあちゃんの暮らしを支えてきた柱、玄関で多くの人を見送ってきた鴨居、蔵で静かに時を重ねた松の板。そして、庭で季節の移ろいを見つめてきた柿の木。
どれも新品にはない、深く豊かな表情をしています。この土地の光や風、そして家族の暮らしに触れながら、ゆっくりと熟成されてきた、かけがえのない「味わい」と言えるかもしれません。
バラバラになった材料たちを前に、私たちはある種のワクワクを感じています。それは、かつて別々の場所で家族を見守ってきたこれらの材料が、この家で再び一つになる面白さです。
絵本の中の大きな木が、たくさんの生き物の居場所になったように、離れと蔵、そして庭。それぞれに異なる役割を担ってきた木々が、姿を変え、この家の中で新しい繋がりを持っていく。
それは、この土地で紡がれてきた家族の歴史が、これからも続いていくことにも通じる気がします。
その一部を「活かす」ことで、この家の記憶と、おばあちゃんの思い出を未来へとつなぐ。どんな風に生まれ変わり、この家でどんな物語を紡いでいくのか、今からとても楽しみです。



