世界に一つだけの、自分だけの壁
今、改修工事中の現場から解体していたら面白いものが出てきました!
これらは昔の家で実際に使われていたもので、先端のパズルのピースみたいな部分を「ほぞ」と呼びます。
昔の家は、このほぞのような木の凸凹をがっちりとかみ合わせて建てられていました。いわば、巨大な木のパズルです。
例えば写真の左端にある、すっと長いほぞ。これは屋根を支える「母屋(もや)」と呼ばれる場所で使われたりします。強い風で屋根がめくり上げられないように、このほぞの長さでしっかり踏ん張って、抜けないようにしていたんですね。
中央のひときわ複雑なものは、大黒柱に何本もの梁が交差するような、家の心臓部を支えていたのかもしれません。
こうして木同士をしっかり組むことで、地震が来たときに建物が絶妙に揺れて力を逃がす、そんな役割も担っていました。
最近の住宅では、こうしたほぞはあまり見かけなくなりました。なぜなら、とても手間がかかるから。長いほぞを作るには、それを受け止めるための深い穴をもう一方の木に掘らなくてはならず、どちらも大工さんの時間と技術が必要なんです。
だから今は、ほぞを短く浅くして加工の手間を減らし、その分を「かすがい」や「構造用金物」という頑丈な金属部品で補強する方法が主流になっています。
どちらが良いという話ではありませんが、古い家の部材には、大工さんの知恵が静かに形になって残っているのが面白いところ。
もしどこかでこんな木を見つけたら、見えない場所で風や地震から家を守ってきた働き者だったのかも、なんて想像してみるのも楽しいかもしれません。
ちょっとマニアックな、ほぞのはなしでした。



