愛犬のお悩み|問題行動の原因を発散・学習・環境の3視点で 解説

金成舞

金成舞



「外の物音に吠えてしまう」「リードを引っ張るくせがなかなか直らない」と、お悩みを抱えご相談に来てくださる飼い主さんの多くは、すでにネット記事やSNS等で紹介されている方法を一通り試したり見聞きしたりした方が多いです。しかし、毎日真面目に練習を続けているのに、思うような改善が見られず、自分のやり方が悪いのではないかと思い詰めてしまう方も少なくありません。今回は私が犬の問題行動を考えるときどの視点・ポイントで見ているのかをお話ししていきたいと思います。

犬の問題行動を見るときに欠かせない3つの視点

問題行動に関するご相談を受けるとき、私はいつも3つのバランスを頭に置きながら、その行動が起きている原因を考えるようにしています。

1つ目は、「発散
心と体が満たされているかどうか、具体的には運動、食事、睡眠のバランスが日々の生活の中でうまく取れているかを見ます。散歩の時間や量が足りているか、食事の内容やタイミングに無理はないか、しっかり眠れる環境が整っているかといった、生活の土台になる部分を確認する作業でもあります。

2つ目は「学習
犬がこれまでどのような学習を積んだ結果として、その行動が起きているのかを確認します。してよいこと、してはいけないことを、犬自身がどのような場面でどう学んできたかによって、同じきっかけに対する反応は大きく変わってきます。

3つ目は「環境
その行動が増長されやすい環境がどこにあるのかを探ります。音の聞こえ方、人や他の犬との距離感、居場所の落ち着きやすさなど、犬を取り巻く条件そのものに目を向ける視点です。

この3つはどれか1つだけを見ていても全体像はつかめず、組み合わせて考えて初めて、行動の背景がはっきり見えてくると考えています。

吠えるという行動ひとつにも、原因は一つではない


たとえば、外の物音に吠えるという問題行動を例に考えてみます。

発散が十分にできている犬は、日々のエネルギーがきちんと発散されているため、物音がしてもイライラすることが少なく、満足して寝ていることが多いものです。
学習がしっかりできている犬は、吠えるという行動をとらなくてよい、あるいはとってはいけないとすでに理解しているため、その行動そのものが出にくくなっています。
環境が整っている犬は、そもそも物音を気にする必要のない環境で暮らしているか、自分の居場所が安定していて不安を感じにくい状態にあります。

同じ吠えるという行動でも、「発散」「学習」「環境」のどこに偏りがあるかによって、実際に必要になる対応はまったく異なってきます。発散が足りていないだけなのに学習の練習ばかりを繰り返しても、根本の原因には届かないことがありますし、環境に無理があるまま学習を重ねても、犬にとって負担の大きい練習になってしまうこともあります。
ネットや動画で紹介されている1つの練習方法だけをそのまま当てはめて解決しようとすると、この違いを見落としたまま練習を重ねることになりかねません。同じ手順を真面目に繰り返しているのになかなか変化が出ないと感じるときは、この3つのうちどこかに見落としがある場合が多いと感じています。
そのためご相談を受ける際は、行動そのものよりも先に、発散、学習、環境のどこにどれくらいの偏りがあるのかを、飼い主さんと一緒に確認するところから始めるようにしています。

一点集中よりも、3方向からゆっくり整えていく


発散、学習、環境のいずれか1つを飛び抜けてやり切ることができれば、多くの問題行動はそもそも起こりにくくなるだろうと思います。しかし、日々の生活の中でその1つを完璧にやり切れる飼い主さんに出会うことは、現実にはほとんどありません。仕事や家事に追われる毎日の中で、どれか1つに全力を注ぐことを求めるのは無理があると感じています。そのため私は、3つのバランスを踏まえながら、3つの方向から少しずつアプローチしていく進め方を選んでいます。
発散だけを頑張るのでも、学習だけを頑張るのでもなく、無理のない範囲でそれぞれを少しずつ底上げしていき、3方向から同時に整えていくことで、1つ1つは大きな変化に見えなくても、行動全体が落ち着いていく流れをつくることを目指しています。
また、急いで1つの正解を探すよりも全体のバランスを整えるほうが、結果として飼い主さんにとって続けやすい方法になると考えています。一時的に行動が収まったように見えても、バランスの崩れが残ったままでは、別のきっかけで同じような行動が顔を出すこともあるため、3方向を意識することが大切なのです。遠回りに見える進め方ですが、日々の生活の中に少しずつ取り入れられる形にすることで、飼い主さんが途中で無理をして続けられなくなることを防げると考えています。

飼い主さんと一緒につくる、その家庭だけのレッスン


3方向からのアプローチを続けるために、まず取り組んでいるのは、飼い主さんに今のバランスがどこで崩れているのかを知っていただくことです。散歩の時間、食事の与え方、日中の過ごし方など、日常の中の何気ない部分を一緒に振り返るところから始めています。
頭では分かっているつもりでも、実際に1日の流れを言葉にしてみると、思っていたより発散の時間が足りていなかったり、環境の面で気になる点が出てきたりすることも多いものです。
そのうえで、日々の生活の中でどれくらいの時間をかけられるかを、飼い主さんと一緒に考えます。このとき、理想の形をそのまま押しつけるのではなく、仕事や家族の予定を抱えながら、無理なく続けられる範囲を確認することを優先しています。
その範囲を確認したあとで、その家庭とワンちゃんだけの特別なレッスンプログラムを組み立てて取り組んでいきます。同じ問題行動であっても、生活のリズムや家族構成、これまでの学習の積み重ねが違えば、無理なく続けられるやり方も変わってくると考えているからです。

情報があふれる時代だからこそ大切にしていること


これまで、インスタグラムやYouTube、ネット記事など、しつけに関する情報があふれている中で、教えられたとおりにやっているつもりなのにうまくいかず、自分を責めてしまう飼い主さんに数多く出会ってきました。
検索すればすぐに何らかの方法が見つかる時代だからこそ、かえってどれを選べばよいのか分からなくなったり、うまくいかない自分を責めてしまったりすることが増えているようにも感じています。
ネットで紹介されている解決方法が間違っているわけではないと思います。ただ、日々忙しく過ごす飼い主さんが、それをすべてやり切れないのも無理はないことです。1つの練習に集中して頑張るのではなく、発散、学習、環境の全体のバランスを見ながら少しずつ整えていくことをお勧めしているのは、そうした背景があるからです。
そして、1人で抱え込んで自分を責め続けるよりも、近くにいる相談しやすいトレーナーに声をかけてみることも、その第一歩としておすすめしたいです。誰かと一緒に今の状況を振り返るだけでも、次に何から手をつければよいかが見えてくるかもしれません。

まとめ


問題行動は一つの原因だけで起きているわけではないため、発散、学習、環境のバランスを少しずつ整えていくことが、結果として犬にも飼い主さんにも無理のない解決につながっていくと考えています。

・外の物音や来客時の吠え癖に悩んでいる方
・リードの引っ張りなど、日常のお散歩で気になる行動がある方
・ネットや動画で紹介されている方法を試しても改善が見られず、自分のやり方に自信が持てない方


お問い合わせは MAI Dog School(https://www.maidogschool.com/)までお気軽にどうぞ。

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

金成舞
専門家

金成舞(ドッグトレーナー)

MAI Dog School

厳しく叱るのではなく、褒めながら個性や長所を引き出すしつけ教室。レッスンはマンツーマンで出張とオンラインに対応。簡単な振り付けを通じて愛犬と飼い主が楽しめるドッグダンスレッスンも人気。

金成舞プロは福島放送が厳正なる審査をした登録専門家です

プロのおすすめするコラム

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

褒めて伸ばす愛犬のしつけとドッグダンスレッスンのプロ

  1. マイベストプロ TOP
  2. マイベストプロ福島
  3. 福島の趣味
  4. 福島のペットの悩み
  5. 金成舞
  6. コラム一覧
  7. 愛犬のお悩み|問題行動の原因を発散・学習・環境の3視点で 解説

金成舞プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼