月刊消防2021年10月号の連載記事について
理事会でマンションの防火管理者を依頼されたのですが・・
分譲マンションなどでは、定期的に輪番等で管理組合の理事長、理事が変更され、それに伴って防火管理者が変更することがあります。場合によっては、理事会役員の宛て職的なルールがある管理組合もあるのではないでしょうか。
もちろん、理事会役員さんが防火管理者に選任される場合でも、その方が防火管理者として十分な実務を経験し、その職責と使命感をもって業務に就かれているのであれば全く問題ないと思いますし、また、それが本来、自主防火のあるべき姿ではあると思います。
しかし、前任者等から「防火管理者は届出だすだけだから・・」「私が任期の時は、何もなかったよ。」などと、半ば押し付け的にすすめられ、ただただ、前任者の話を鵜呑みにして儀式的に宛て職のような形で防火管理者を簡単に引き受けても良いものなのでしょうか?
防火管理者には法令で定められた責務がある!
防火管理制度とは、火災の発生の防止と火災の被害を最小限に止めることを目的として、「普段、誰が何をしたらよいのか」、「万一火災が発生した場合にどうしたらよいのか」を消防計画に定め、日常の火気管理や避難施設の管理、消防用設備等の維持管理、火災に備えた消火訓練や避難訓練を行うものです。
そのため、法令上もいろいろな責務が課されています。例を挙げると、
・消防計画の作成、変更届出
・消防計画に基づく消火、通報及び避難の訓練の実施(企画から手続、実施まで)
・消防用設備等の点検及び整備等
・火気の使用又は取扱いに関する監督
・避難又は防火上必要な構造及び設備の維持管理
・収容人員の管理
・その他防火管理上必要な業務の実施
などなど・・・
これらの業務を管理権原者の指示のもと、誠実にその職務を遂行しなければならないこととされています。
これらを見ると、それなりの労力がかかるものであるということは、容易に気が付くと思います。
分譲マンションがゆえのトラブル
前述のように防火管理者には法令で定められた重大な職責があります。そのため、その職責を果たすためには、もちろん、同じ建物に住む他の住人に対しても“嫌なこと”、“角が立つこと”を言わなければならないことも多いわけです。
例えば、バルコニーに置いてある物品等。
バルコニーについて、マンションの造りによっては、二方向避難といって火災時に隔壁(隔て板)を破壊して隣接住戸側の避難はしごを使用して避難するような構造のものもあります。
では、ここが物置状態だったらどうでしょう?
ここが物置状態で隔壁が完全に塞がれていたとすると、隣接住戸で火災があった場合、隣接住戸の住人はそこを経路として避難することができません。
そこで、防火管理者は、その旨を住人に説明し、当該物品等を撤去させなければなりません。
しかし、これがトラブルのもとになります。
「みんな色々置いてるじゃないか?」「なんでウチだけなんだ!?」
不満や怒りの矛先は、防火管理者に向けられます。こうなるともうハチの巣状態です。
しかし、やっとの思いで35年ローンで購入した分譲マンション!長く住まなければいけません。こんなことで、トラブルになって住人相互の関係性を崩したくない!誰だってこれが正直な気持ちではないでしょうか。
しかし、過去の火災事例をみると、防火管理の不手際により、火災が拡大し、被害が大きくなってしまうケースが多くあるのです。中には、防火管理業務の不履行から管理権原者や防火管理者が刑事責任を問われた事例もあります。
防火管理者は、住人間の人間関係を崩してまでも、火災予防上必要なことを履行させていかないといけないわけです。
防火管理の外部委託のメリット
防火管理の外部委託では、このような嫌なことを第三者目線、中立的な立場から客観的に指導することができるため、住人同士で嫌な思いをしなくて済むというメリットがあります。
また、防火管理者の引継ぎ等で誤った認識であったり、手続が伝承されていくことも防止でき、何より理事会役員等の変更の度に後継者探しをしないでよくなります。このため、法的にも未選任期間の発生を防止でき、継続した防火管理により建物全体としてのコンプライアンスの向上にも繋がっていくものと思われます。
弊社では、消防法のことを熟知したエキスパートが防火管理のサポートを行う防火管理の委託業務を行っております。定期的な建物のチェックから、消防法で規定される消防訓練の実施、各種消防法令関係の申請届出等、消防の立入検査の対応、消防設備関係の改修等の相談、助言等も必要に応じて行い、ビルオーナー、管理組合代表者の皆様の消防法令に関する顧問的なお立場としてお役に立ちたいと考えています。
前任者の任期が終わり、次の防火管理者の候補が見つからない!!また、誰もなりたがらない!!そういったお悩みをお抱えの管理組合等は、防火管理のアウトソーシングを検討するタイミングに来ているのかもしれません。
◆Nプラスコンサルティング株式会社 https://n-plus2019.com
◆防火管理外部委託センター https://www.boukakanri.com/