砂岩の石積みの危険性について
2016年4月14日21時26分より始まった熊本地震において、多くの家屋が倒壊してしまいました。これほどの大きな地震では現在の安全基準を満たした擁壁でも倒壊してしまいます。では、古くから擁壁と使用されてきた自然石の石積み(以下石積み)はどうなのでしょうか。一般的に石積みを擁壁と同じように考えがちですが、現在では擁壁としては認められていません。つまり「斜面を守る保護的工作物」程度の考えた方なのです。
宅地内に有る既存の石積みが安全上支障のない健全なものでると判断された場合でも、住宅を新築する場合では石積みに荷重がかからない位置に建築するか、家屋の下に杭を打つことなどが必要になります。しかしながら、そのような対策をせずに建築された古い物件が数多く存在するのが現状であるため、石積災害を防止するためには、それらの石積みを調査して安全性を検証することが必要であると考えます。
熊本地震は北九州地区でも影響があり、複数箇所で石積みが崩壊してしまいました。崩壊したのは地震の後の降雨によって崩壊した箇所が多いようです。これは緩んだ地盤に雨水が入り込んだことが原因だと考えられます。
写真は数年前に崩壊した石積みです。よく見てみると水抜きパイプが殆どないことが判ると思います。そして大切なことがもうひとつ。それは目地部をモルタルで塞いでいることです。目地部をモルタルで補修されている石積みをよく見ますが、水が抜けなくなることが多く崩壊に至る場合もあるため危険なのです。
古くから受け継がれてきた石積みの技術は、その多くがモルタルや生コンを使用しない空積みと言われる手法です。これは、胴と呼ばれる主となる石を友飼石、迫飼石、裏込石、胴飼石などの役割のある石を使用して積み上げることが特徴です。この技術は、石同士の噛み合わせが良い場合、かなり安定した状態を保つことができる上、背面に浸透した降雨を目地の隙間から排出させることができる優れた技術なのです。ただし、それは優れた技術を持ち合わせた石職人が積み上げた場合に限ります。高度成長期には多くの石積みが造られましたが、その時代では石積みの石が不足していただけでなく石職人も手が全く足りなかったようであり、素人が積み上げた不安定な石積みも多くあるようです。また、さらに素人が目地をモルタルで塞いだ危険な石積みも多く存在しています。
今回の熊本地震において、あの天下の名城として知られている熊本城の石垣でさえもが崩れ落ちてしまいました。石積みの崩壊原因は複数ありますが、今回のような地震などの外的要因は、優れた石職人が積み上げた石積みにおいても致命的な影響を受けてしまうのです。
当社では、石積みの内部に接着性の高い石積専用充填材を注入することで補強する特許工法を発明し、数多くの補強工事を行っております。この工法は、専用の水抜きシートと発泡固化剤を使用することで確実に背面の水を抜く事ができる構造を作れることも大きな特長のひとつです。
崩壊の原因の水を効率よく排除して、石積みを内部から接着補強する石積接着補強工法。この工法が災害から守ってくれるかもしれません。是非、お気軽にご相談ください。
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