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副島勲

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テーマ:再犯防止と人財育成

        再犯を起こさせない社会づくりを目指して 
     ~2019年10月九州経済連合会機関紙掲載分より抜粋~

                                株式会社ヒューマンハーバー
                                代表取締役  副島 勲
1.再犯の実態
 弊社では創業以来7年間で25名の出所者を雇用している。その中には初犯であっても重い罪を犯してしまった人や累犯の人も含まれている。彼等が再び罪を犯さず,被害者と向き合い健全な社会のモデル形成者として社会復帰を果たすことが,再犯防止につながることになると考える。国もまた再犯防止推進法を平成28年12月に制定し,平成29年12月には再犯防止推進計画を閣議決定し再犯防止に取り組んでいる。しかしながら,実態は依然として再犯率が上昇の一途をたどっており,再犯による新たな被害者が生まれているのも事実である。さらに,検挙された人の有前科者率や同一罪名有前科者率は約10年間横ばい状態である。
 一方で,再犯を犯してしまった人の中には,「今度こそは」と自立更生を誓って出所する人も少なくない。しかし,「社会情勢の変化についていけない」「今までの生活習慣や価値観を変えられない」「体力が衰えている」「希望する職種につけない」などの課題を抱え,その課題を解決できないまま再犯に至るケースが多くみられた。「自己責任だ」と言われればそれまでだが,その結果新たな被害者や犯罪が発生し,治安の乱れが生じていることにも目を向けなければならない。
 私は,「この現実から目をそらさず再犯防止という社会問題に取り組むべきだ」という信念のもと弊社の創立に至った。その際に2つの重要な柱を立てた。一つは「ビジネスとして再犯防止事業を行うこと」そしてもう一つは「教育を取り入れること」である。この二つの柱に取り組むことが,再犯防止に向けた成果を上げるとともに継続した事業となると考えている。

2.再犯防止をビジネスで解決
 「再犯防止をビジネスで解決する」というと貧困ビジネスのイメージを持たれることが多い。しかしそうではない。私は,納税者を作り出すメーカーになりたいと思っている。刑務所に入り出所するまでに一人あたり約300万円の経費が必要であると言われている。さらに逮捕から判決,移送,刑務所入所,出所となると一人当たり2000万円近くの経費がかかると言われている。もちろん刑期が長ければ長いほど経費は膨らむことになる。これは全て税金で賄われているのである。その額は全体で年間5兆円近くにのぼる。それほどの莫大な公費を投じている事実に対して,私は「罪を犯した人が納税者に変わることこそが,国にとっても大きなメリットとなる」と考える。しかし,この事業を,国の助成金や補助金だけに頼れば公費を使うという点では同じ事になる。だからこそ私は,自分たちで稼ぎ出し,100年続く事業とすることで社会問題の解決だけではなく,国に対しても貢献できると考えている。これこそがユヌス・ソーシャル・ビジネスであり私が「再犯防止をビジネスで解決する」という信念の真意である。

3.教育の必要性
 もう一つの柱である「教育」についてであるが,私は弊社で働く元受刑者に対し常々「ここは永久就職先ではありませんよ」と言っている。弊社は,産廃・中間処理と清掃の事業において就労の場の提供を行っている。出所者は,刑務所内で刑務作業を行っているとはいえ、一般社会における作業量やスピードは刑務作業とは比べ物にならないほどきつい。さらに,罪を犯してしまった人は,一線を越えてしまう程に,ものの見方や考え方,捉え方,価値観というものが偏っていたり間違っていたりする。罪を犯したことに対し,反省し更生を誓っても,体力を回復させたりものの見方や考え方,捉え方,価値観を変えたりしなければ,トラブルを起こし,挫折し,また同じことを繰り返してしまうことになる。つまりは再犯である。これもまた「自己責任」という言葉では片づけられない。なぜなら,新たな被害者を生み,治安が乱れるからである。では出所後,体力のリハビリや再教育を受けられる場があるだろうか。そう考えたとき,私は「教育の場」それも出所者が「人罪」から「人財」に変われる「教育の場」が必要だと考え「そんとく塾」という教育の場を作り,多くの出所者に学んでもらっている。7年間で17名が教育支援を受け,2年以内の再犯者はいない。さらに,近年では他社で受け入れられた出所者も16名教育支援を受講されている。弊社の「心のスポンジづくり」という教育支援を今後さらに充実させ広げていくことが,今後の再犯防止の大きな柱の一つになると考えている。

4.「企業」「出所者」「国」の三方よし
 出所者にとって一番必要なことは,やはり生活の安定である。住むところと働く場。これが社会復帰への第一歩であることは間違いない。しかし一方で,アパートを借りようとしても「保証を得るための身分証がない」「元受刑者には貸せない」「敷金などが用意できない」など多くの課題を抱えている。また,「まずは就労を」と働いてはみるものの働けない。雇用主からも「根気と体力がない」「雇用してもすぐやめる」「社会人としての自覚がない」「正しい金銭感覚がない」などの声が上がっており,企業としても,「大きなリスクを負ってまでは」という声をよく耳にする。そのため,協力雇用主に登録はしているものの,実際の雇用には至らない現状がある。企業が部屋を用意し,就労訓練を行い,価値観の変容を促し出所者の生活の安定を供給できれば良いが,他の社員との格差や経費の増加,費用対効果など簡単にはできない。だからこそ私は,出所者のためのリハビリテーションが必要であると考えている。現在弊社では,出所者に対し「教育」と「就労訓練」のリハビリを提供することで,この人手不足の時代に,企業にとって大きな「人財」を提供できている。しかし大きな課題もある。「教育」や「就労訓練」を実施するには多額の経費が掛かるため,出所者が受講を希望しても受け入れ切れていないのが現状である。かといって,出所者から授業料を徴収することもできない。正にジレンマの日々である。
そんな困難の中にあっても,この「企業」「出所者」「国」の三方よしのモデル事業を成功させることが,再犯防止を含めその他の多くの社会問題をも解決する糸口になると信じて止まない。

5、人は宇宙最大の資源
 最後に,私は「人は宇宙最大の資源」だと思っている。しかし,その資源もそのままでは活きない。「磨き」「形を変え」「進化させる」ことで,光り輝く資源となる。私は,一人でも多くの人が光輝く資源となれるようこれからもこの事業を続けていかねばならないと改めて心に誓う日々である。

九経連寄稿2  九経連寄稿

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副島勲
専門家

副島勲(人材教育支援)

一般社団法人ヒューマンハーバーそんとく塾

服役経験者への就労・教育・宿泊の三位一体の取り組みをユヌス・ソーシャル・ビジネスで実現。その中で人と組織が変われる「心のスポンジ作りプログラム」を開発。人財育成・社員教育・組織強化で成果を上げている。

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