最後まで気を抜かないで。
先日、こんな方に会いました。
お風呂の磨き職人の小林さん。
小林さんは、もともと、半導体の設計製作に携わる技術者だったそう。
それがなぜお風呂磨きの職人さんになったのか、不思議に思うはずです。
私もそう思いました。
しかし小林さんは、サラリーマンで終わるのは嫌だと思い、
20代後半に半導体の会社を退職。
しかしそれから何をやったらいいのか、まったく検討がつかなかったときに、
近所で井戸端会議をしているおばさんから、こう言われたそうなのです。
「小林さん、そんなにやることがなかったら、うちの風呂でも掃除してよ」と。
そもそも半導体を製作するというのは、ガラス面とか精密な研磨の技術の仕事だったので、
それを応用して、お風呂を徹底的に磨いたそう。
すると、そのおばさんは・・・!
飛び跳ねて大喜びをしてくれて、その場で5000円くれて、
井戸端会議のおばさん連中をみんな紹介してくれたそうなのです。
それがきっかけで、小林さんはお風呂磨き職人に。
その後、噂が噂を呼び、近所中の奥様からの支持を受け、
そしてなんと、今では帝国ホテルをはじめ、
有名ホテルの客室のお風呂磨き専属業者になっているのです。
イギリスのサッチャー首相が来日される前日に、宿泊されるお風呂を磨いたとか、
東京ドームのガラスを全部磨いたとか。
今、リフォームより安く再生できる、お風呂磨きリフォームというのがひそかなブームなのですが、
そのきっかけを作ったのがこの小林さんだったのです。
「職人」というと、“時代遅れ”とか“怖い人”だなんて、とんでもありません。
『自分の仕事を通して、お客様を喜ばせたい!』その思いが強すぎるゆえに、
往々にして口下手なだけなのです。