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DX推進を成功させる秘訣とは? いったい、何から始めたらいいのか?(後編)

前田景志

前田景志

テーマ:DX推進とEXCEL

 前編の続きとして、DX推進について、「いったい、何から始めたらいいのか?」についてまとめてみました。

(1)経済産業省のレポートに記載されているガイドライン

 経済産業省から発表されている、~IT システム「2025 年の崖」の克服と DX の本格的な展開~
本文P29~32
に、DX推進システムガイドライン構成案が記載されています。
このガイドラインの大きな見出しを列挙すると、

■経営戦略におけるDXの位置づけ
《経営戦略における DX の位置づけ》
《経営戦略と DX の関係》
《DX により実現すべきもの: スピーディーな変化への対応力》

■DX実現に向けた新たのデジタル技術の活用やレガシーシステム刷新のための適切な体制・仕組み
《IT システムの基本構想の検討体制》
《経営トップのコミットメント》
《新たなデジタル技術活用におけるマインドセット》
《事業部門のオーナーシップ》
《ユーザ企業自らの選択・判断能力》
《ユーザ企業自らの要件定義能力》
《評価・ガバナンスの仕組み》

■DX 実現に向けた新たなデジタル技術の活用やレガシーシステム刷新のための実行プロセス
《情報資産の分析・評価》
《情報資産の仕分けと移行プランニング》
《レガシー刷新後のシステム: 変化への追従力》
《経営者自らによるプロジェクト管理》
《DX の取組の継続》

のように「DX推進の推奨的な手順」が記載されています。
 また、最近話題のChatGPTに同様の質問をすると、以下のように簡潔に分かりやすく回答してくれましたので、こちらの回答も記載しておきます。

①現状分析:
 まずは、現状を把握することが重要です。業務プロセスやシステムの状況を調査し、問題点や改善の余地がある箇所を洗い出しましょう。

②ビジョンの設定:
 次に、DXのビジョンを明確に設定しましょう。DXで実現したい変革や成果を具体的に明確にすることで、組織全体が目標に向かって取り組めます。

③チームの構築:
 DXを推進するためには、適切なチームを構築することが重要です。DXに必要な専門知識を持った人材を集め、プロジェクトに必要なリソースを確保しましょう。

④パイロットプロジェクトの実施:
 DXを実施する前に、パイロットプロジェクトを実施することが推奨されます。そのプロジェクトで問題点を洗い出し、改善点を把握することで、全体的なプロジェクトの成功率を高めることができます。

⑤投資計画の策定:
 DXを推進するには、適切な投資が必要です。予算の調整や必要な投資の優先順位を決定し、実行計画を策定しましょう。

⑥オープンなコミュニケーション:
 DXを推進するためには、オープンなコミュニケーションが必要です。すべての関係者が情報を共有し、意見を交換することで、より良い成果を生み出すことができます。

(2)DX推進のための事前の作業

 社内システムには、会計システムを中心とした基幹システム、情報系のCRM(顧客管理ツール)、SFA(営業支援ツール)、現場で利用している種々のパッケージソフト、Excel、Accessなどで作成したシステムが多数混在しているケースがあります。
 上記(1)の手順内容からもわかるように、DX推進を行うための前段階の作業として、これらのシステムの用途、重要性、生成されるデーターの分析とデーターの再利用の可能性(利便性、迅速性、システム間でデーターの同期が取れるか)などを分析し、システムの統合が可能かどうか、あるいは、破棄、再構築したほうが良いかなどの評価が必要になってきます。

(3)Excelをパイロットプロジェクトで利用するメリット

①Excelを利用できるユーザーが多い

 前回のコラムにも記載しましたが、プログラマーでなくても、Excelを利用できるユーザーは身近にかなり大勢います。したがって、内製化のための人材を全部門から横断的に確保しやすくなります。

②Excelとの連携が可能なシステムが多い

 ほとんどのシステムは、Excelブックの出力機能やCSV出力機能を有しているので、Excelへのデーターのインポート、エクスポートが可能です。
 また、Excelにデーターを取り込んだ後には、Excelで自由にデーターを加工することができ、目的とする資料を作成するための手順や内容を事前に検証することができます。

③Excelはデーターの加工が容易

 Excelには、豊富な関数やオートフィルターなどの機能が標準搭載されており、数値演算、文字列操作、日付演算、論理演算、データー分析 などが簡単にできるため、データーの加工や整合性のチェック、一括置換といったシステム間でのデーター移行などでよく行われるデーター変換作業なども、簡単に行うことができます。

④Excelで自動化が可能

 自動マクロ機能やVBAを利用することで、Excelで加工した手順を自動化することが可能です。
ただし、VBAを利用すると、プログラミングを理解していないと、メンテナンス性が悪くなり、ブラックボックス化してしまう可能性があります。
 したがって、なるべくローコード、ノーコードでExcelでのデーター処理作業が実現できれば、さらに、利用範囲が広がります。

⑤Excelは画面、帳票のイメージを明確に伝えやすい

 システム開発者も、Excelで画面設計や仕様書作成、QA表などを作成してシステムを開発するケースが多く、利用ユーザーがExcelで画面、帳票イメージを作成すると、システム担当者の理解もスムーズにでき、画面や帳票レイアウトの流用も可能になるため、要件定義や仕様書の作成の工数を削減したり、ユーザー部門とシステム部門との間の齟齬を減らすといったメリットがあります。
 しかも、要件定義の追加、仕様変更にも柔軟に対応することが可能です。
 そのため、DX推進の開発手法として推奨されている、アジャイル型開発手法に適しています。

(4)Excelを効率よく学べる企業のご紹介

 前回のコラムで、Microsoft Office Specialist の紹介をさせていただきましたが、2023/2/28現在で、490万人以上の方が受験されています。
https://mos.odyssey-com.co.jp/about/data.html
また、合格された方の体験談も多数掲載されています。
https://mos.odyssey-com.co.jp/voice/

 このMOS受験のための講座を無料で提供している、学習院大学院のベンチャー企業として設立された
株式会社Rabbit様
についてご紹介します。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000081224.html
 上記のリンクから申し込むと、完全無料で、全340動画でMOSの受講対策講座を学習することができ、さらに、Lineで質問も可能になっています。
申し込みを行うと、ID、PWがすぐに送られてきて、専用サイトで動画の視聴、テキストのダウンロードができます。
 大学発のベンチャー企業ゆえに、無料で行っているとのことで、200人以上の講師を抱えており、大学での授業での講座も開いているとのことです。
 一企業内で、10人までは無料で受講用のIDを発行していただくことが可能です。
 是非、ご関心のある方は、サイトから申し込みしてみてください。

(5)Excelで蓄積されたデーターを他のシステムに置き換えるときの注意点

①Excelで管理されているデーターの特徴と限界

 生産管理現場などで運用されているExcelシステムを多数見てきましたが、横の列の項目数が50項目以上、中には、前後1年~3年間分のデーターを比較しながら、データー入力するケースも多く、そうなると列数は365列を超えるケースも多々あります。
 行数(レコード件数)については、1年間分のトランザクションデーター(発生データー)をオートフィルターの機能や、VLOOKUPなどの関数などで処理したい場合には、100件/日の場合には、年間で36500件、1000件/日のときには、36万件以上のデーターになりますが、それなりの性能のPCではExcel単独でも処理することは可能です。

 ただし、データー件数がそれ以上になると、処理できなかったり、仮に処理ができたとしても、非常に時間がかかったりします。
 今まで蓄積されたデーターの件数がどのくらいあり、毎年、どれくらい増えるのかを事前に把握して、Excel単独で今後も運用可能かどうかを判断しておくことが重要です。

②Excelのブック共有機能の利用とその限界

 Excelには、複数のユーザーがブックを共有して編集できる機能が備わっていますが、10人前後で利用をしたり、業務報告書などを自分で編集するブックは自分しか同時に編集しないことが保証されるケースの場合には、ブック共有機能でも十分にDX推進のプラットフォームとして利用することが可能です。

 Microsoft365では、SharePointサーバー内でブックを管理でき、ブックの共有編集作業も使いやすく安全になっており、Teams等のグループウェア機能を合わせて利用するだけでも、非常に強力なDX推進ツールとして進化しています。
 ただし、Excelのレイアウト変更が必要になった場合には、クラウド上ではフル機能は利用できないため、一旦ダウンロードして、オンプレのExcelで編集してから、再度アップロードする必要があるので注意が必要です。

 また、複数のブックをまたがっての集計処理を行いたい場合には、手動でデーターをマージしたり、VBAなどでプログラミング処理をする必要が出ます。
 あるいは、自分以外の誰かが編集しているときには、同時に編集できないときもあるため、待ち状態が発生することもあります。
 ある、お客様のケースでは、他の営業マンが編集中のため入力ができず、10人くらいの営業メンバーが、会社に戻ってきてから、全員が入力完了するまでに2時間くらいかかってしまい残業を余儀なくされていたという事例もありました。

③Excelシステムを他システムに移行する場合の留意点

 クラウド上で提供されているノーコード、ローコードの多くのアプリでも、Excelに蓄積されているデーターを簡単に取り込む機能は用意されています。
 ただし、独自のクローズドなデーターベースを利用しているケースが多いため、データーの再利用やシステム間でのデーターのやり取りを行いたい場合には、別途、専用のAPIが必要な場合もあり、このAPIは意外に高額で、使いこなすためには、かなりのプログラミング知識が要求されるケースがあるので事前のチェックが必要です。

 そのため、APIを利用しない簡易な方法として、必要なデーターをCSVで簡単にインポートしたりエクスポートする機能がアプリ側に用意されていますが、CSVを利用する方法では、複数のユーザーが同時実行しているときなどにはリアルタイムにデーターの同期を取ることが困難になるため、どうしても、バッチ処理的な作業になり、ここでも、別のプログラミング知識が要求されるケースがあります。

 また、リアルタイムのデーター更新や同期ができたとしても、レコード単位でしか処理できないケースが多く、Excelのように、複数のレコードを一括して編集したり、別シートや別ブック間にまたがって、計算処理を行うことは苦手なシステムが多いので注意が必要です。

 したがって、Excelを利用しないシステムでは、結局のところ、データーの加工や編集はExcelで行い、それをクローズドなクラウドアプリに、あとから手動で入力するといった二重入力の手間が余分にかかるようになったり、二重入力の際のオぺーレーションミスで、データーが壊れたり、整合性が取れなくなるような問題が発生しやすくなるので注意が必要です。

 今回のコラムでは、「DX推進を行う際に、何からどのよう始めたらよいのか?」という点について、経済産業省のガイドラインに沿って考察し、さらに、Excelをパイロットプロジェクトの作成に利用した場合の利点と注意点について述べてみました。


 次回は、Excelを最大限に利用することのできる、dbSheetClientでの開発スタイルについて説明する予定です。

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前田景志
専門家

前田景志(ITコンサルタント)

有限会社テクノユージェイ

Excel業務をWebシステム化するニューコム社製の「dbSheetClient」の開発に参画。集計作業の効率が上がり、セキュリティーも向上する。導入企業向けにセミナーや技術支援を行う。

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