DX推進を成功させる秘訣とは? いったい、何から始めたらいいのか?(後編)
前回の4/10のコラムでは「Excelのパワーユーザーにとって、脱Excelは本当に可能なのか?」という観点でまとめてみましたが、もう少し掘り下げてみたいと思います。
(1)DX(デジタル・トランスフォーメーション)とは
経済産業省から発表された~IT システム「2025 年の崖」の克服と DX の本格的な展開~
本文
の要旨を簡単にまとめてみると、
外部環境の急速な変化に対応するために、内部組織の変革を最新のプロットフォームを利用して、新しい製品やサービスなどを創出し、競争上の優位性を確立するために、DXを早急に推進する必要がある。
そして、現状の大きな課題点として、
①レガシーシステムのメンテナンスに80%以上の経費がかかっており、新しい製品やサービスなどの創出のために、リソースを十分にかけられない
②DX推進を進めないと、2025年から毎年12兆円の経済損失が発生してしまうが、2025年までにDXを推進できれば、GDPを130兆円押し上げることができる。
③ITエンジニア不足のため外部にすべて委託すると多額の費用が必要となり、外部の委託側も現状維持のままのほうが安定収入になっている
④内製化を推進したいが組織内に、ITリテラシー(ITに関するものを理解し、活用する力)を持った人材が足りない
といったことなどが発表されています。
(2)DX推進にExcelを活用するメリット
①データーの蓄積と再利用可能な機能が豊富
DX(デジタル・トランスフォーメンション)では、「組織内にデジタルとして蓄積されたデーターを有効利用し事業の改革(トランスフォーメンション)」することが願われています。
Excelの優れた特徴の一つは、1シートに横約10000列、行約100万行のデーターを管理できる機能が備わっていることです。
また、ブック内にシートはいくつでも追加することができます。
つまり、Excelは単なる表計算ソフトではなく、ブック一つで、様々なマスターデーターやトランザクションデーター(日々の業務で発生する様々なデーター)の管理が可能だということです。
さらに、Excelには、オートフィルター機能やグラフ作成機能、豊富な関数が標準装備されており、リアルタイムに集計処理、データーの抽出、分析ができ、直感的で簡単に利用することができます。それゆえに、安価なBI(Business Intelligence)ツールと言われることもあります。
また、自動マクロ機能が備わっており、比較的簡易なVBAを理解することで、RPAにも劣らない、プログラミングによる自動化も可能です。
すでに、現場で、社員マスター、商品マスタ―、取引先データーの管理や、案件情報の管理、予算実績の管理、原価管理、進捗・生産管理 をおこなったり、基幹システムで管理しているデーターから必要なデーターをCSVで抽出して、Excelで二次加工して、グラフ化したり近未来のシミュレーションなどに利用されている企業は多いと思います。
②内製化のための強力な武器となるExcel
Excelの授業を実施している高校や専門学校、大学も多く、新入社員でもExcelの操作のできる人材はかなりいます。
また学習用の書籍やYoutubeなどの動画も充実しており、安価に、短期間で習得でき、MOS(Microsoft Office Specialist)の資格を取得している人材も数多くいます。
マイクロソフト オフィス スペシャリスト(MOS)とは
一部記事抜粋:
MOSを取得した従業員の88%が、「仕事の成果が上がった」と回答。
管理職の85%が、「MOSを取得した従業員は、仕事の生産性が以前より高まった」と回答。
つまり、若い世代でも、Excelを利用できる即戦力の人材は結構多く、Excelを有効利用することで、蓄積されたデーターを業務分析や業務改善などに再利用ができる人材が身近にいるということです。
もともと、スマホやPCに使い慣れているITリテラシー持つ若い人材が、Excelの中に組み込まれている事業ノウハウを、社内にいる『達人級のExcel使い』の方々から、短期間で継承することができれば、低コストに、DX推進を進めることは可能です。
そして、もう一点ですが、外部委託するSE、PGの方にはExcelをドキュメント代わりに利用している方は多いのですが、関数やデーター処理、分析機能をフル活用できる人は意外に少なく、Excelの良さよりも、ついつい自分が得意とするプログラミングのほうに走ってしまう人が多く、社内での改良やメンテナンスが難しくなるいという課題点もあり、社内の人材で内製化したほうが操作性の良いExcelシステムができるという点もあげられます。
③Excelをフル活用できる人は数字に強い人が多い
1980年代ごろまでは、銀行をはじめ企業の経理部門では当たり前にそろばんが使われていましたが、電卓の登場により、そろばんを使う人はかなり減ってきました。
しかしながら、そろばんと電卓はどちらの方が計算スピードが速いかといった競争シーンがテレビでもよく放映され、そろばんの暗算力には非常に驚かされたものです。
もちろん、今でもそろばん塾は見かけますし、富山県は全国平均の約4倍近くあり、偏差値も約95と非常に高いそうです。また、そろばんを小さいころから習っていると、暗算力が上がるだけでなく、右脳の発達が良くなるとのことです。
“そろばん教室数”断トツ日本一は富山県
都道府県別統計とランキングで見る県民性
そろばんの効用:日本珠算連盟
PCの登場と、表計算ソフトや会計アプリの登場で、圧倒的な計算処理の違いにより、企業内でそろばんをパチパチする人はさすがに見かけなくなりました。
私の経験上の感覚ではありますが、人の作ったExcelシートを利用するだけの人と、自分でExcelを使いこなして表を作成したり、グラフ化している人では、やはり、後者の方が数字に敏感で、数字に強い人が多いように思います。
Excelの良さは、全体的な数字の動きを俯瞰的に眺めることができることです。
Excelを利用しているうちにデーター分析能力や、全体を俯瞰的に眺める力が自然と養われてきますので、DX推進のための内製化要員を育成する上でもプラスになるツールと思います。
(3)前編のまとめ
本コラムのタイトルに記載した「DX推進を成功させる秘訣とは?」についての回答としては
1.組織内にデジタルとして蓄積されたデーターを有効利用できるように加工する
2.組織内に内製化のできる人材を早急に育成する
ことがキーポイントであり、Excelが身近にある極めて有効なツールであることを述べてみました。
次回の後編では、残りの、「何から始めたらいいのか?」について、述べてみたいと思っています。