連載第10回 社外での振る舞い方
経営者のためのビジネスマナー5回目後半は、正しい「叱り方」です。
前半の「褒め方」では、褒めることの重要性、褒め方のポイント、人前で褒めることが承認欲求を
満たすこと、さらに経営者の価値観を知らしめる重要な機会になることについて
お伝えしました。
後半では、褒めることの逆、叱ることについてお伝えします。
叱ることは上司の仕事
ビジネスシーンで、上司と部下の仕事は役割分担がなされています。
上司の仕事は、「命令(指示)をすること」「責任をとること」「教育をすること」の3つに
大別されます。このひとつ「教育をすること」は、上司が果たすべき役割のひとつなのです。
教育とは、仕事のやり方を教えるだけでなく、ミスや間違ったやり方を正しい方向に導くことも
含まれることはご理解いただけると思います。つまり時には叱ることも必要なのです。
しかしながら残念なことに、昨今では叱れない上司が増えているようです。
若い人に嫌われたくない、いい人と思われたいという気持ちから、
面と向かって、「これは間違っている。」と叱れないようです。
これは上司の職務怠慢です。
ミスや間違ったやり方は、放っておくと会社に致命的な損失を与えかねません。
あくまでも教育するという観点で、必要な時にはしっかりと叱ることが大事です。
ビジネスマナー研修基本
メンツをつぶさない叱り方
日本には、『一寸の虫にも五分の魂』という言葉があります。
“一寸の虫にもその体の半分にも相当するような魂があるように、
どんなに小さく力が弱い者にもそれなりの意地や思いというものがあり、
それらを軽視したり無視したりしてはならない、という戒め(日本辞典より)”という意味です。
新入社員であっても、幹部社員であっても、それぞれにメンツがあることを覚えておいてください。
社員から信頼される上司は、相手のメンツをつぶさない叱り方を心がけています。
メンツをつぶさない為には、叱る場所が重要です。
「褒める時は人前で」が原則ですが、叱る時は逆。
他の社員が大勢いる前で叱るのはタブーです。
例えば会議室や人気のないスペースにさりげなく誘うなどして、
相手が人の目を気にしないでいい場所を選ぶことが大切です。
ビジネスマナー研修基本
ベストタイムは金曜日5時
教育する為に、時には叱ることも必要と頭ではわかっていても、
叱ることも叱られることも決して気分の良いものではありません。
年齢差や経験差があったとしても、ひとりの人間対人間です。
正当な理由で叱られていても、叱られた方は、内心では面白くありません。
感情的になってしまう場合もあるでしょう。
反対に叱る側も、よほど変わった性格でなければ、楽しんで叱ることはありません。
ビジネスの場ですから、表面的には何事もなかったように振る舞えても、
やはりしこりが残ることがあるかもしれません。
ですから、なるべくならお互いの人間関係や周囲に及ぼす影響を最小に抑える努力も必要です。
叱るのは、金曜日の5時頃がベストです。
これは週末、会社を離れた時間を使いクールダウンできるからです。
もちろん、命にかかわるような場合、会社に大規模な損失を与えかねない場合、
犯罪に関わる場合はすぐに叱ることが原則です。
しかし一朝一夕に改善できないケースであれば、金曜日の5時頃、別室に呼び出した上で、
落ち着いた環境を作り、話をするようにします。
これはどんな展開になったとしても、土日の休日に、ひとりで冷静に考える時間を持つことができ、
自分の行動を振り返ることができるからです。社会人であれば、その間に叱られたことを振り返り
反省をして、月曜日には本来の業務を通常通りに開始できるはずです。
反対に、絶対に避けるべきタイミングは週の初めです。
その週はずっと、社内の空気が重苦しくなることが予想され、周囲にも良い影響を与えることはありません。
ビジネスマナー研修基本
経営者は腹黒でいい
ここまでお伝えしてきた「叱る時のマナー」ですが、経営者が叱るのではなく、
ナンバー2の役職者に任せることをお勧めします。
経営者は、その会社の最高権力者です。
その最高権力者が叱るのは、最後の手段と心得てください。
日常の業務遂行に伴う教育は、経営者が自ら手を出す仕事ではありません。
経営者が叱る時、それははるかに大きな意味を持ちます。
叱られるべき社員であっても、逃げ道を作ってあげることがマナーです。
先に述べたようなよほど重大な事件が起こった場合を除いて、
経営者は直接社員を叱らないほうがいいでしょう。
『経営者は褒める、叱るのは人に任せる』これが褒め方、叱り方のセオリーです。
ずるいように聞こえるかもしれませんが、これには立派な理由があります。
会社は船に例えられます。
経営者はその船を無事に航海させる責務を負った船長です。
ひとつの船で目的地を目指し共に航海するならば、経営者は絶対的な存在で君臨せねばなりません。
その為には、社員の尊敬と信頼を得ることが重要課題なのです。
乗組員である社員の心をつかみ、同じ目的に向かって進むのに効果的なテクニックを駆使するのは
当然のこと。何しろ船が沈む時、最後まで船と運命を共にするのは船長なのですから。
経営者たる者、お腹の中が少し黒いくらいでちょうどいいのです。
さて、次回の経営者のためのビジネスマナーでは、お金についてお伝えします。
経営者が知っておくべきお金の使い方のマナー。どうぞお楽しみに!
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