青森の製造・エネルギー業界の働き方改革を導くプロ保坂梨恵

青森の製造・エネルギー業界の働き方改革を導くプロ

保坂梨恵

製造・エネルギー業界の実情を熟知し、現場目線の働き方改革をサポート

　さまざまな業界で働き方改革が進められる中、「どこから手をつけていいか分からない」という声は少なくありません。「あおもり働き方研究所」所長の保坂梨恵さんは、県内の製造・エネルギー業界に向け、現場に即した働き方改革や女性活躍推進の支援を行っています。

　青森県は、国内有数のエネルギー業界の拠点が集積しています。保坂さん自身も、原子力関連企業の技術畑で10年以上経験を積み、現場を熟知していることが強みです。
　「現状の設備や工程をいきなり大幅に変えることは難しいので、まずは今すぐできることから取り組みます。現場の事情を汲み取りながら進められるので『話がスムーズ』とよく言われます」

　研究所と並行して経営する、食肉加工・養鶏業の「グローバルフィールド」でも、働き方改革を実践。それまで日曜のみの休日を週休2.5日制に導いた実績があります。
　「当時、従業員に子育て中の女性が多かったので、制度を変えることに。仕事のやり方の見直しや、紙ベースの業務をIT化するなど、効率化を図りました。県内でも珍しい休日制度のおかげで、求人には20代の応募が集まり、複数名の採用にも至りました。実践に基づいた根拠のあるアドバイスには自信があります」

　業務の見直しには、IT導入など設備投資が伴うイメージがあり、コスト面から気が引ける経営者も多いでしょう。
　「作業工程を少し見直すだけで、劇的な効果が出ることはよくあります。長年その業務を当たり前にやってきた現場の目線だけではなく、専門家による第三者の視点から、業務を整理することをおすすめします」

原子力関連企業での技術畑を経て、働きやすさや女性活躍に関心

　保坂さんは、製造業やエネルギー産業界でのダイバーシティにも目を向けます。これらの業界における職場環境の多くは、まだまだ男性中心で、女性が少なく定着しにくいと言います。
　「最近も前職の原子力関連企業から『若手の女性社員が入ってくるが、どんな対応が必要なのか』という相談があり、女性の部下に対する接し方から生理のことまで踏み込んだ内容を伝えて喜ばれました。そこから生理休暇を取りやすくするために、社内での名称を変える動きも生まれています」

　保坂さんが、「働きやすい環境づくり」に注目したのは、前職での経験にありました。工業高等専門学校を卒業し、原子力関連企業に技術職として入社。「コミュニケーション能力が高い」と、行政や協力会社などとの調整業務を任されました。
　「20代前半は残業や休日出勤もいとわない〝会社人間〟でした。30代を前に、『このまま定年まで働き続けられるのか』とふと疑問に思うように。女性の働きにくさは日々感じており、同僚や後輩が周囲から理解を得られず悩む姿も見てきました。職場環境のせいで、キャリアをあきらめてしまう状況は、会社にとっても大きな損失です。業界全体や職場をよい方向に変え、働く人と企業の橋渡し役を担いたいと思いました」

　2017年に「あおもり働き方研究所」を設立。原子力・放射線分野で働く女性のための国際NGOの日本支部「WiN-Japan（Women in Nuclear）」にも所属し、女性技術者が働きやすい環境整備を目指す活動に参加しています。

リモートワークで企業と働きたい人をつなぎ、地域の活性化に貢献したい

　「すべての働く人が笑顔で働くことを楽しめる青森県」をビジョンに掲げる保坂さんは、ワーク・ライフ・バランスをかなえるための「リモートワーク」の活用を提案します。〝まずは自分たちでやってみる〟をモットーに、研究所でもフルリモートの働き方を取り入れ、スタッフ1名とも在宅で業務に携わっています。
　「県内で在宅勤務を取り入れている企業は多くありません。製造業などでは難しいという声もありますが、書類作成をはじめ出社せずにできる業務は意外とあります。当方の社内体制をお見せしながら、リモートワークによって広がるビジネスの可能性をお伝えし、在宅で働ける環境を整えたいですね」

　今後は、働く人にリモートワークの機会を提供したいとも話します。
　「育児や介護などさまざまな事情から会社勤めは難しくても、働きたい人はいます。県内のみならず都市部の仕事も青森にいながら引き受けられると、地域の活性化につながります」

　誰もが働きやすい環境づくりは、どの業界にも共通する人手不足の課題解消につながると力を込めます。
　「これからの時代は、昭和、平成で積み上げた〝勝ちパターン〟は通用しないことも多いでしょう。従来のやり方や制度を変えるのは手間のかかることですが、従業員の働きがいは高まり、採用での魅力となるといった好循環が生まれます。次の時代を見据えた働き方改革に一緒に取り組み、企業が発展し続けられる仕組みに変革しましょう」と呼び掛けます。

（取材年月：2024年3月）

青森の働き方改革を後押しし、誰もが働きやすい環境をつくる

製造・エネルギー業界の実情を熟知し、現場目線の働き方改革をサポート

原子力関連企業での技術畑を経て、働きやすさや女性活躍に関心

リモートワークで企業と働きたい人をつなぎ、地域の活性化に貢献したい

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