空き家売却の流れとは?メリット、デメリット、注意点について

鈴木武

鈴木武

テーマ:不動産


自身が以前住んでいた持ち家、相続で実家を取得したものの別の家に住んでいる、将来実家を相続することになりそうだが自身の持ち家がある等、空き家問題で悩まれている方は多いのではないでしょうか。
空き家の取り扱いについて、どのような選択肢があるのかを確認しながら、この記事では、売却を中心に説明します。

また、空き家を売却をする際の流れやポイントを詳しく説明しつつ、税金控除や特例措置などについても簡単にお伝えします。

深刻な空き家問題(何故、空き家は問題なのか)

年々増え続ける空き家。総務省統計局が平成31年4月26日に発表した、「平成30年(2018年)住宅・土地統計調査」によると、平成30年の空き家は846万戸。総住宅数に占める空き家の割合は13.6%と過去最高を記録しています。
※参照:平成30年(2018年)住宅・土地統計調査|総務省統計局

空き家が増加を続ける社会的な要因としては、「人口の減少」「日本の総世帯数よりも住宅の数の方が多い状態にある」「新築住宅が建て続けられている」「中古住宅の流通量が少ない」などが世間的には言われています。また、筆者が関わった実務の場では、使う予定のない建物だが固定資産税の軽減のために壊さず残している、相続でトラブルが起きてしまい権利関係の問題で建物を売ることも解体もできない、などの事例を見てきました。いずれも簡単に解決できる問題ではなく、今後も空き家の増加はとどまりそうにありません。

現在、空き家は「社会問題」となっていますが、空き家の問題には2つの側面があります。一つは、空き家が周囲に与える悪影響であり、もう一つは、空き家の所有者にかかる負担の問題です。

空き家が周囲に与える悪影響

・衛生上の問題(臭い、虫、小動物)

管理されていない空き家は、建物の腐朽やゴミの不法投棄による悪臭、さらに虫の発生やネズミなど小動物が住みつくことによって衛生上の問題が生じます。

・物理的な安全面の問題

建物の老朽化によって外壁が崩れ落ちる、台風などにより屋根瓦が飛ぶなど通行人や近隣の住民がケガをするおそれがあり、安全面で大きな問題が生じます。

・治安の問題

周辺の不審者や非行者が不法に侵入し、その空き家に住み着いたり、たまり場となったりして、周辺の住民が犯罪や事故に巻き込まれるといった治安上の問題も懸念されます。

・景観の問題

空き家の建物自体の老朽化、樹木や雑草の繁茂などによって、周囲の景観が著しく悪化する問題が生じます。

・地域の価値の低下

上に挙げた諸問題は、空き家周辺の地域の価値を下げ、個別の不動産の価値も下落させることになります。

空き家の所有者にかかる負担

・維持・管理に手間がかかる

人が住んでいない家は傷みやすく、傷みを抑えるためには定期的に風を入れたり、掃除すつ必要があります。その手間や負担は大きく、空き家が遠方にある場合は、交通費も時間もかかり負担が増えます。

・維持・管理にお金がかかる

空き家が老朽化すると、上でお話ししたように、周囲に悪影響を与えるという問題が生じます。問題を解決するためには、建物の補修、庭木や雑草の処理などが必要になり、業者に依頼すればお金がかかります。掃除などのために電気や水道の契約を継続しているケースもあります。空き家の維持・管理にかかる金銭的なコストは小さくありません。

・税金の支払い

人が住んでいない空き家であっても固定資産税・都市計画税がかかります。空き家を所有している以上は毎年、固定資産税・都市計画税の支払い義務が生じます。

・精神的な負担

所有している空き家の状態や、周囲への影響などについて気を配らなければならず、空き家の所有は精神的な負担にもなります。老朽化が進んだ空き家では、台風等が来るたびに、どこかが壊れ、壊れた部位が近隣に飛んでいってしまっていることもあります。近隣にとっては、迷惑どころか、危険の原因にもなっています。

平成27年(2015)には「空家等対策の推進に関する特別措置法」が施行されました。この法律では、空き家の中でも問題になる空き家を「特定空き家」に指定し、自治体が危険だと判断した場合、最終的には行政代執行により取り壊しが行えます。

その際には、まず、自治体から改善を求める「助言や指導」があり、次いで「勧告」、そして「命令」が出され、それでもなお改善されない場合に「行政代執行」による取り壊しとなります。取り壊しにかかる費用はすべて所有者が負担することになります。個人の財産権を強く保護する傾向にある日本の法律が、ここまで強制的な行為を認めると言うことは、状態の良くない空き家というのは、それほど危険であり、周囲への悪影響があるということです。

空き家の売却を決定する前に考えること

空き家を所有していると「何とかしなければ」「何かした方が良いのではないか」「売った方が良いのか、貸した方が良いのか」「台風がくるのかぁ、またお隣さんから飛来物があったと電話がくるかな」等、漠然とした不安がつきまといます。具体的に何か対応を決めようと思っても、何から考えれば良いのか、どう考えれば良いのかがわからない、相談する先も思い当たらず、決定はまた先送り・・・

今回は空き家の売却がテーマですが、売却を決定する前に、他の選択肢も検討する必要があります。ここでは、売却以外の代表的な選択肢を確認だけしておきます。比較検討の方法については、別の記事で説明する予定です。

空き家の取り扱いの選択肢

自己利用(自分で使う)

空き家と言うことは、すでにご自身の家がある前提ですが、この機会に、改めて、どちらの物件を自分が使うべきか、将来、自分や子どもが使う可能性はないかなどを、検討してみてください。

未利用のまま保有を続ける

周囲への影響への対策をした上での選択にはなりますが、値上がりが期待できる場合と、相続税対策になる場合に選び得る選択肢です。

値上がりの期待は、そのままの内容なので、説明することはありませんが、相続税と所得税の節税について、簡単に説明します。

相続税を計算する際に、「現金や預金」と「不動産」を比べた場合、一般的に「不動産」の方が有利になります。

例えば、3,000万円の現金と、時価3,000万円の不動産であれば、資産としての価値は同じです(不動産の売却時の諸費用や維持コストは無視します)。この2つの資産を相続税を計算するための評価額で比べると、一般的には、不動産の方が安くなり、結果、相続税も安くなります。この不動産の特徴のために、場合によっては、売却せずに保有を続けるという選択肢も考えられます。

なお、値上がりが期待できる場合の保有も、相続税対策になる場合の保有も、未利用であることが条件では無いため、他の選択肢を選んで(有効活用をしながら)、値上がりを待つことも、相続税対策をすることも可能です。

賃貸物件にする

自分たちは住めないが、家を手放したくない場合や、自分たちで使う可能性はあるが、時期はまだ先、という場合には、第三者に貸し出す方法があります。それほど老朽化が進んでいなければ、そのまま貸し出すこともできます。リフォームが必要な場合は、想定される賃貸収入とリフォーム費用を考えて判断します。

等価交換

等価交換とは、固定資産である土地や建物を同じ種類の資産と交換したときは、譲渡がなかったものとする所得税の特例を利用する手法です。

物々交換のイメージなので、自身と相手方の持っている不動産が同等の価値で、お互いが交換したいと思えるような利害の一致が必要です。交換の相手方が第三者となると、偶然の要素が大きいですが、相手方が親族や親族の関連会社等の場合は、計画的に進めることが多い出うs。資産の組み替え自体に、利便性の向上や資産価値の向上といったてメリットがある場合もあれば、等価交換後の売却で譲渡所得税を圧縮する効果を利用する方法もあります。

有効活用の話として出てくる等価交換は、所有する土地を不動産会社(開発業者・デベロッパー)に提供し、不動産会社(開発業者・デベロッパー)がマンション等を建設。その後、土地の提供者が、提供した土地の評価額相当分の区分所有権を取得するというものです。区分所有権を取得すれば、自分の住居とするのも、人に貸すのも、売却するのも自由です。

ただし、こちらの等価交換の手法については、提供する土地の立地や広さが不動産会社(開発事業者)にとって魅力的かどうかが重要なポイントになります。具体的には、ある程度の賑わいのある都市の駅近くなど環境や利便性が優れており、土地の面積もある程度の広さが確保できなければ、不動産会社(開発事業者)は見向きもしないはずです。空き家問題の対象となる物件で、この等価交換を行えるのは非常に稀なケースです。

他の利用方法

空き家にはこのほかにもさまざまな利用方法が考えられます。近年では空き家を「シェアハウス」や「民泊」として利用するケースも見られますし、空き家を解体し更地にしたうえで「トランクルームを設置する」、「駐車場にする」、「土地を貸与する」、「新たに戸建てを建てて賃貸経営をする」といったケースもあります。いずれも空き家の収益化を目的とした方法になります。

空き家売却のメリット・デメリット

空き家の取り扱いについて、一般の個人の所有者にとっての本命の選択肢が、売却になると思います。ここでは、売却を選んだ場合のメリットとデメリットを確認しておきます。

1)メリット

・負担からの解放

空き家を売却すれば、先にあげた「空き家が周囲に与える影響」に関する諸問題、また、「空き家の所有者にかかる負担」から解放されます。空き家の維持にかかる手間や金銭的、精神的な負担など、空き家の所有者を悩ますさまざまな問題から解放されるのは大きなメリットです。

2)デメリット

・空き家を活用する道が閉ざされる

土地も含め空き家はひとつの資産です。売却せずに手元に残しておけば、将来的に住むこともできますし、お子さんがいれば譲ることもできます。また、上でご紹介したように、空き家は賃貸に出すなど有効活用をすることも可能です。売却してしまえば、空き家を活用する道が閉ざされます。
ご自身が生まれ育った家、ご両親が暮らされていた家の場合には、その家に思い入れがあり、売却することで喪失感を抱かれる方もいます。

・売却時にトラブルが起きるリスクがある

不動産の売却時にはトラブルが起きるリスクが常にあります。特に空き家となって長期間経過している場合は、物件自体の問題、近隣への悪影響などから普通の中古住宅の売却時と比べ、トラブルが起きるリスクが高くなっています。

空き家の売却時に困ることとしては、(1)売主自身が空き家について知っていることが少なく、(2)老朽化や破損の状態を把握できておらず、(3)近隣と何らかのトラブルやトラブルの種を抱えていることなどが挙げられます。

(1)と(2)については、物件の調査や契約書の作りこみなどを丁寧に行うことで、リスクを減らす対応は可能です。そういった意味では、売却を依頼する不動産会社選びが重要になります。物件調査によりトラブルの可能性を予見し、それを契約書に反映させることで、未然にトラブルを防ぐことができます。表面的な会社の規模や担当者の感じの良さではなく、こうした実務能力のある不動産会社を選びたいところです。

(3)の近隣との問題は、根が深くデリケートであり、解決が困難なこともあります。実際には、長期間放置された空き家の売却で現地を訪れると、近隣の方は、環境が改善されると歓迎してくれることが多いです。ただ長期間の、樹木の越境や、臭気、虫の発生、強風時等の空き家からの飛来物による被害により、関係性が悪化していると、調整に時間がかかることや、売却ができないこともあります。

不動産の売却には境界確定の立会いや、広い土地で開発などが伴う場合はその手続きで、隣地や近隣の方の協力が必要になります。近隣の方としても、協力して売却が実現されれば環境が改善されるため、関係性の問題があっても、最終的には、協力していただけることが多いです。頻度としては稀ですが、どうしても協力していただけない場合は、売却ができなくなります。

空き家売却の方法

空き家を売却するメリットとデメリットも考慮した上で、いよいよ売却をすると決断した場合、まず検討すべきは売却方法です。主な方法として次の3つがあります。

1)空き家をそのまま売却する
2)空き家を解体して更地として売却する
3)不動産会社に買取ってもらう

1)空き家をそのまま売却する

空き家売却でもっとも手間と時間がかからない方法です。解体して更地にする必要がありませんし、一番オーソドックスな方法といえるでしょう。家具など残置物の撤去、室内の清掃などを行う必要はありますが、不動産会社に仲介を依頼すればそうした業者の紹介や手配もしてもらえます。

2)空き家を解体して更地として売却する

空き家の老朽化が進み、そのままでは人が住める状態ではない場合、空き家と土地を併せて売却するよりも、更地にしたほうが売れる可能性が高くなります。ただ売却の収支としては、更地の金額で売り出し、そこから解体費用を差し引くことになるので「1)空き家をそのまま売却する」方法にくらべ手取り金額は低くなります。

また、更地にするには2つのタイミングがあります。
a)現状のまま販売活動をして契約後に解体して更地で引渡し
b)すぐに解体して、更地にして販売活動をする

a)現状のまま販売活動をして契約後に解体して更地で引渡し

筆者の経験上、個人の方が売主の場合は、こちらの方法で進めることが多いです。買主が見つかり、契約した後のタイミングで、引渡しまでに家を解体し更地にします。売却代金から解体費用を支払うことができるため、売却前に解体費用を用意する必要がありません。土地の固定資産税・都市計画税についても解体まで住宅用地の特例が受けられ、通常であれば、引渡しまで固定資産税・都市計画税が上がることはありません。(タイミングによっては、上がる場合もあります)。

ただこの場合、老朽化した空き家がある状態で販売活動をするため、商品として見た目がよくない点、また、空き家の管理が続く点がデメリットになります。

b)すぐに解体して、更地にして販売活動をする

この場合は、売却前に解体費用を用意する必要があります。この方法のメリットとして、更地になるため商品として見た目がよくなる、そして、空き家の管理から解放されることがあげられます。

デメリットとしては、建物が解体されているため、固定資産税・都市計画税について、住宅用地の特例が適用されず、高い税額を負担することになることです。買い手がなかなか現れず、販売活動が長期化すると負担が大きくなります。

稀に、仲介を依頼した不動産会社が、解体費用の立替えを提案することがあります。売却のための真面目な提案であれば問題はないのですが、販売活動の主導権を不動産会社に握られてしまい、最終的に高い解体費用も請求されるケースもあります。このような提案をされた場合は、解体費用が妥当か、その後の販売活動がどうなるか、事前によく検討し、合意事項について書面などを残すようにしてください。

3)不動産会社に買取ってもらう

不動産会社に買い手を見つけてもらって家や土地を売る方法を「仲介」というのに対し、不動産会社に家や土地を直接買い取ってもらう方法を「買取り」といいます。

不動産の売却にはある程度の時間がかかります。場合によっては買い手が見つかるまでに長期間かかることもあります。当然ですが、売れるまでは、お金は入ってきません。また、売れて引き渡しが完了するまでは、空き家の管理を続ける必要があります。これに対し買取りであれば売買契約の成立が早く、お金も早く手に入ることになります。不動産会社に直接売却するため、仲介手数料もかかりません。

反面、買取は、仲介にくらべ金額が安くなります。というのも家や土地を買い取った不動産会社は、買い取った家や土地を転売することになります。全面的な改装を施したり、解体し更地にしたうえで販売するため、その費用と不動産会社の利益、売れ残るリスクを勘案して買取価格を決めるからです。

以上、3つの売却方法をご紹介しました。選択にあたっては、所有する空き家の状況や今後の生活設計を十分に検討し、判断しましょう。

空き家売却の流れ

では空き家を売却する際の流れを見ていきましょう。
空き家の売却といっても、売却の流れ自体は普通の中古物件とほとんど変わりません。中古物件等の通常の売却の詳細な流れは、別の記事で紹介するので、そちらを参考にしてください。ここでは、売却の流れを簡単にかくにんしつつ、空き家ならではの注意点に力を入れてご説明します。

1)方向性の検討

空き家を売却するのか保有し続けるか、ここまで書いてきた内容なども踏まえて、方向性を検討します。不動産会社に相談に行けば、「売却」になりやすいです。中立的な立場で相談できる相手は少ないので、注意が必要です。

検討する際の重要なポイントは、自身もしくはお子さんやお孫さんが、その物件を活用する可能性があるかないかです。

次のステップの内容になるのですが、この時点で、とりあえず不動産会社に相談をしてみて、空き家の売却時の手取り額を把握してから決定するのも一つの方法です。ただし、前述の通り、不動産会社は「売却」の流れに持って行きがちなので、対応に注意をする必要があります。

ここでは、まだ決定ではないが、「売却する」と方向性だけでも決まれば、次のステップに進むことにします。

2)売却相談、査定依頼

現在所有する空き家にどれだけの価値があるのかを把握します。そのために不動産会社へ査定を依頼します。その際大切なことは、自身で、相場観を身に付けることです。

一般的には、1社だけではなく、複数の不動産会社に査定を依頼することが推奨されます。複数の不動産会社の査定を比較してみましょう。飛び抜けて査定額が高い、反対に飛び抜けて査定額が低い会社は注意する必要があります。

空き家になっている物件は通常、建物自体にはあまり価値がありません。例外的なケースで、いわゆる「古民家」として活用できる物件が存在し、家の古さが価値として評価されることがあります。通常の不動産会社では、そこまで対応できておらず、普通にただの老朽化した建物として査定されてしまいます。そうしたケースに該当するとお考えの場合は、古民家の扱いが可能な不動産会社や建築会社を探して、相談してみるようにしてください。

なお複数社に査定を依頼する場合は一括査定サイトが便利ですが、その後、営業の電話が頻繁にかかるなど煩わしさもあります。

3)売却を依頼する不動産会社の決定

空き家売却の仲介を依頼する会社を決めます。先にもお話ししましたが、空き家となって長い期間が経っている家は、売却後のトラブルも想定されます。売却後のトラブルを回避するためには、誠実で実務力のある不動産業者を選ぶことが大切です。単純に高値をつけた不動産会社を選ぶのではなく、「査定額について確認した際、きちんと納得できる説明をしてくれた会社」「こちらの要望をしっかりと聞き入れてくれた会社」「売却のデメリットやリスクを説明してくれた会社」等を選択することをおすすめします。

老朽化が著しい空き家の場合、家の解体が必要になります。土地の測量が行われていない物件なら、測量も必要になります。解体には解体業者、土地の測量には測量士の手配が必要になります。その際には不動産会社から提案された業者を使うことになるのが一般的です。しかし、実は不動産会社によって解体費や測量費にも差があります。それは売却後の手取り額の違いにつながります。

解体業者や測量士の違いによる純然たる解体費や測量費の差もあれば、解体業者や測量士から不動産会社への紹介料やキックバックが含まれていてることもありますし、本来必要のない報酬や手数料を計上している悪質なケースもあります。物件の査定額だけではなく、各不動産会社から、こうした費用についても事前に説明を受け、最終的な手取り額がいくらになるか、不動産会社による違いを把握しておきましょう。

売却後の手取り額、売却後のトラブルの予防、発生してしまったトラブルへの対応については、どの不動産会社を選ぶかで大きく変わってきます。

4)売却方法や売却価格を決定する

このステップで、先ほど説明した「①空き家をそのまま売却する」、「②解体して更地として売却する」、「③不動産会社に買取ってもらう」、この3つの方法のどれを選ぶかを決定します。まだまだ使えそうな物件であれば、中古住宅として売り出します。

老朽化が進んだ物件の場合、現状のまま売地として売り出し、「上物あり」、「解体更地渡し相談可」などの文言を入れたりします。老朽化が相当に進行しており、周囲への悪影響や安全上の懸念があるような物件の場合は、先行して解体することもあります。

売却価格については、不動産会社が提示する査定額を参考にしたうえで適切な価格を決めましょう。最終的な決定権は売主にありますが、査定額とかけ離れた売却価格を設定すると、なかなか買い手がつかず、空き家の老朽化が進むばかりということにもなりかねません。不動産会社としっかり相談し、近隣の相場などと照らし合わせたうえで適切な売却価格を決めましょう。

5)売買契約

購入希望者が現れたなら、売買価格、支払い条件、スケジュールなど、購入希望者と条件の調整を行います。この調整は不動産会社を通じて行います。そして、売主と買主の合意が成立したら、不動産会社に売買契約の準備をしてもらい、売買契約の手続きへ進みます。売買契約書には、売買価格やその不動産に関する情報、引渡し時期などが明記されます。契約時は通常、売主と売主側の仲介不動産会社、買主と買主側の仲介不動産業者が同席します。

6)決済・引き渡しの準備

締結した売買契約書に基づき、測量や、建物の修繕、解体を行います。空き家の売却の場合、空き家であった期間や管理の状況によって、測量や、建物の修繕、解体で問題が生じる可能性がありますので、売買契約から決済までの期間は、少なくとも2か月確保してください。筆者が担当する場合は、3か月は確保し、必要に応じて、契約書の中で、売主の責任にならならい要因で決済が遅れる場合の取り扱いについても取り決めをしています。

7)確定申告

不動産の売却によって得た所得を譲渡所得といいます。この譲渡所得には所得税、住民税、復興特別所得税がかかります。譲渡所得は「分離課税」となっていますので、確定申告によって納税します。

マイホーム(居住用財産)を売却した際、譲渡所得から最高3000万円まで控除ができる特例があることをご存じの方は多いと思います。相続した空き家の売却についても「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」があります。譲渡所得3000万円までは税金がかからない特例です。

1981年(昭和56年)5月31日以前に建築された区分所有建築物以外の建物であること、亡くなった人が一人で住んでいたこと、家屋付きの売却の場合は現行の耐震基準に適合するものであること、など適用条件は厳しいですが、適用できれば大きな節税になります。


空き家に使える制度等

補助金など

老朽化が進んだ空き家の解体やリフォームについて、自治体によっては補助金が出ます。解体やリフォームをする際は、建物がある場所の自治体に確認してみてください。

例えば筆者が在住する愛知県豊橋市では、この記事の執筆時点(2022/9/13)では「豊橋市空家解体促進費補助金(本年度分の受付は終了)」「空家利活用改修費補助金」があります。

また、空き家の多くは、築年数が古く、耐震性に問題があるため、耐震関係の制度の利用も検討する価値があります。愛知県豊橋市では、木造住宅については、無料耐震診断、耐震改修費補助金、解体工事費補助金、耐震シェルター整備費補助金があり、非木造住宅については。耐震診断費補助金、耐震改修費補助金があります。

自治体によって名称は異なりますが、さまざまな補助金制度があります。適用される条件も異なれば、補助金の支給率や上限の金額なども異なります。制度の形式的な要件だけではなく、制度の目的にも注意してください。例えば、愛知県豊橋市の木造住宅の解体工事費補助金は、前提として、耐震診断が必要ですが、無料耐震診断は、解体前提の建物では受けることができません。あくまでも、これからの利用を検討する建物に対して、無料で耐震診断を行う制度です。制度を正しく理解した上で、適正な利用をする必要があります。

具体的には、「空き家」と「耐震性に問題のある建物」のリフォームと解体には、補助金がある可能性があると考え、物件の所在する自治体のホームページで、「空き家 補助金」「耐震 補助金」などのキーワードで検索してみてください。Google等の検索エンジンで「○○市 空き家 補助金」「○○市 耐震 補助金」でも良いと思います。

なお、補助金は年間の予算が決められており、予算の上限に達すると、その年度は申請が出来なくなるのが一般的です。売却に伴う建物の解体で利用する場合は、時期によっては、補助金を利用することが難しくなります。

空き家バンク

自治体が空き家の物件情報を提供する「空き家バンク」という制度があります。空き家を売りたい方・貸したい方が物件の登録を申し込み、空き家バンクが情報の発信を行い、空き家を買いたい方・借りたい方とのマッチングを行います。通常は、空き家の情報がネットで公開されます。

自治体が関わっているという安心感が、空き家の所有者側にも、空き家の利用を検討されている側にもメリットになると思います。ただし、自治体では、当事者間の交渉や契約の間を取り持つことはしないため、実際に売買や賃貸となると、契約条件の交渉や調整、契約書の作成等を、当事者同士で直接行うか、改めて不動産会社に依頼することになります。

まとめ

空き家の売却について説明をしてきました。

売却をして後悔しないためには、売却以外の選択肢の検討、売却の方法や売却のメリット・デメリットの理解が必要です。

有効活用が難しく、将来的に、ご自身やお子さんも使う予定がない場合は、売却することが選択肢の本命になります。売却をするのであれば、一般的には、固定資産税等の負担や、維持・管理に必要となる時間や金銭的なコストを考えると、早めに売却活動することが、利益を最大化することにつながります。例外としては、値上がりが期待される物件と、相続税対策としてその物件を利用する場合は、保有を続けることになります。

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鈴木武(不動産アドバイザー)

リンクデザイン株式会社

相続対策や、相続不動産の有効活用・売却、問題不動産の対応の専門家です。売却やアパート建築などの結論ありきではなく、相談者の気持ちや考えを大切にして、中立的な提案とサポートを行っています。

鈴木武プロは朝日新聞が厳正なる審査をした登録専門家です

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